栄養イノベーション専攻
栄養生化学研究室
加藤 久典 教授
胎児の間に生活習慣病のタネができる?
生まれる前や乳幼児の時期の栄養状態が悪いと、成長後に生活習慣病になるリスクが高くなることがわかってきました1)。妊娠中のお母さんの食事の内容によって子供の細胞の中のDNAに特殊な目印2)が付いたり取れたりすることが明らかになってきています。このような目印(DNAに結合しているたんぱく質3)にも付きます)の付き方を、難しい言葉でエピジェネティクスと言います。それらの目印が大人になっても継続していて、特定の遺伝子の働きが増えたり減ったりし、そこに過食や運動不足などの悪い生活習慣が重なると生活習慣病になりやすくなるという考え方です。
私たちの研究室では高血圧のモデルのネズミを使っています。このネズミが妊娠中に食べる餌のたんぱく質を少し減らすと、その子ネズミの成長後に高血圧の病態がさらに悪化することを見出しています。そして、それがDNA中のどんな遺伝子の部分の目印の変化によって起こるかを解明しました。その遺伝子の働き方(発現といいます)が、母ネズミの餌の違いによって実際に変わるということもわかりました4)。
こうした考え方は、妊娠中の栄養が今まで考えられていた以上に重要であることを示しています。また、妊娠前の栄養や生まれて間もない頃の栄養も、同じように大事であることもわかっています。
1)この概念は、Developmental Origins of Health and Diseaseを略してDOHaD(ドーハッド)と呼ばれます。
2) この目印は、DNAのメチル化といいます。
3) ヒストンというたんぱく質です。
4) この研究には、2024年度の日本アミノ酸学会の学会賞が授与されることになりました。
先生からヒトコト
「最新のエビデンスを基にこれからの食生活を考え、そして正しく伝えていく」という姿勢を身につけて欲しいです。