JOURNAL KAGAWA ヨクシル
食行動改善の支援の力をつける栄養教育論

学びと教育

[実践栄養学科]行動科学やカウンセリングを学んで、人々の食行動改善をサポートする管理栄養士になる

食行動改善の支援の力をつける栄養教育論

 食事は適量に、野菜をしっかり食べよう、食塩は控えめに・・・とわかっていても、なかなか変えられないのが日々の習慣である食行動。そうした食行動の改善を支援する力をみがくのが「栄養教育」です。
 「栄養教育」では、行動科学やカウンセリング技法などをふまえ、人々の食行動改善を支援する力を実践的に学びます。

教育的アプローチと環境的アプローチの両輪で人々の心身の健康を支援するために必要な学問

 栄養教育は、すべてのライフステージ(胎児期・乳幼児期から高齢期まで)やライフスタイル、そして疾病・障害の有無等に関わらず、すべての人に関わる学問です。食・栄養にまつわる情報がある場、食べ物のやり取りがある場には、全て栄養教育が関わっています。実はSNSも、栄養教育の場の一つとして今、注目されています。

 人々は、健康のためだけに食事をしているのではありません。食事は、生活の楽しみであり、人とのコミュニケーションの手段でもあります。そこで、「栄養教育」では、人々の健康増進およびウェルビーイング(総合的に望ましい状態)の向上に寄与することを目指して、対象者の知識やライフスタイルに合わせて食行動の改善を支援します。例えば、主体的な食物選択(食材料、料理、食事)の実践につながる知識およびスキルの習得をサポートします。また、その実践を可能にする食環境の整備も、広い意味で栄養教育と位置づけられます

栄養教育では行動科学の理論的基礎をベースに他分野の学問を統合しながら学ぶ

 栄養教育では、ただ栄養や食生活についての知識を教えるだけでなく、対象者(学習者)が自分自身の食生活や健康の問題に気づき、それを改善しようとする意識や態度を育てることが大切です。また、自分自身で健康的な食べ物を選び、実際の行動に移せるようにサポートすることも求められます。そして、人々の行動や、気持ち、意思決定に影響を及ぼす「食環境」についても考慮する必要があります。食環境とは、たとえば、食べ物の入手可能性、周りの人の食に対する関わり方、そして食に関する情報があります。こうした食環境が、人々の食選択や食行動にどんな影響を与えるかを理解することが土台となります。

 

 そのため、管理栄養士は、さまざまな行動科学理論の特徴を理解し、活用できる力が求められます。さらに、カウンセリングの知識やスキル、プレゼンテーションスキル、栄養教育プログラムの計画、実施、評価、改善を行うためのマネジメントスキルも必要です。

実践栄養学科のカリキュラムの特徴

 実践栄養学科における栄養教育論の学修プログラムでは、このような栄養教育の理論とスキルを基礎から実践までステップアップしながら学べるように、「栄養教育基礎論」「栄養教育技術論」「栄養教育実践論」の講義科目と、「栄養教育論実習」を設けています。実習では、栄養教育の企画を作成し、ロールプレイで必要な知識やスキルを統合し身に付けていけるように、全員がひとりで、対象を設定した栄養教育の実演を行います。


 さらに、本学独自の科目としてプロフェッショナル科目群の「公衆栄養・国際栄養系」のなかの選択科目「地域栄養教育論」があります。地域住民を対象とした栄養教育について、具体の事例をもとに、現場の管理栄養士と一緒に支援方法を学ぶ科目です。ロールプレイや小グループでのディスカッションを取り入れて、個別支援やディスカッションのスキル、批判的思考などの修得を目指しています。

 このように実践栄養学科では、専門職として栄養教育に必要な知識やスキルを、実際の対象や場面に応じて使いこなしていけるよう、体系的実践的に学べる本学独自のカリキュラム編成を行っています。

栄養教育の理論と実践を広く学ぶためのカリキュラム

栄養教育基礎論

栄養教育のための理論的基礎と栄養教育マネジメントについて具体的な事例を通して学ぶ

栄養教育技術論

栄養カウンセリングの基礎と応用を学び、対象者の準備性やライフスタイルに応じた栄養カウンセリング技術を、演習しながら学習する
(クラスのパートナーと外部のクライアントに対し、約2カ月間の支援を実施)

栄養教育実践論

ライフステージ、ライフスタイルに合わせた栄養教育の進め方を複数事例を通して具体的に理解する

栄養教育論実習

課題の明確化に必要な情報の収集、目標の設定、全体計画の立案、学習指導案・教材の作成、ロールプレイングによる実施、評価までを実習する

地域栄養教育論

地域住民を対象とした具体の個別支援について、事例を教材に学ぶ。事例を深く読み解く学習法を取り入れ、グループディスカッションを行う

個別支援のカウンセリングスキルを高める本番を体験!栄養教育技術論

 2年生の「栄養教育技術論」では、図の通り、クラス外のクライアントを対象に、およそ2か月間の個別支援の“本番”を実施します。対象者と円滑にコミュニケーションを図る上で、栄養カウンセリングの技法を適切に活用できるだけでなく、多様な価値観や社会的背景を理解し、対象者の課題を診断し、有効な解決策を提案する力の修得を目指します。

 初めてのカウンセリングで、最初は不安で戸惑う学生も多いですが、対象者との関係性を築くなかで、行動変容を支援する難しさと、支援の喜びを実践的に味わえる貴重な学修となっているようです。

小集団に向けたプレゼンテーション力を伸ばす栄養教育論実習

 3年生の「栄養教育論実習」では、5分間のプレゼンテーションを全員が一人で実施します。2年後期までに学んだ、栄養学全般の知識を活用しながら、知識とスキルの統合を図ります。

 具体的には、設定した学習者(小集団)について優先課題を設定し、栄養教育、ヘルスプロモーション等の理論をふまえて、実現可能な栄養教育プログラムの全体計画を考えます。5分間の学習指導案の立案、ロールプレイによる実施、評価までを実習し、一連のPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回します。ロールプレイでは、他の学生は学習者の役になりきって参加するため、学習者として栄養教育の企画や実施について批判的に評価し、建設的な改善点を提案する中で、自身の課題に気づくこともできます。

栄養教育論実習の授業風景(5分間の栄養教育ロールプレイ)

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