学びと教育
【第3回】日本人はカルシウム不足
カルシウムは骨の健康はもちろん、筋肉の収縮や神経の伝達、ホルモンや酵素などの分泌調節など私たちのからだの様々な機能を調節する働きを担っています。極論を言えば、カルシウムがなければ私たちは生きていくことことができません。私たちの遠い祖先は海の中で生活をしていました。海水にはカルシウムがたくさん溶け込んでいますから、海中で生活している場合にはカルシウム不足になることはありません。しかし、陸上で生活する私たちは毎日ある量のカルシウムを尿中に排泄するために、気を付けなければカルシウムが足りなくなってしまいます。その場合には骨の中に貯蔵されたカルシウムを利用することになります。この状態が続くと骨のカルシウムが減少し、骨粗鬆症となる場合もあります。骨は非常事態に備えたカルシウムの貯蔵庫としての働きがあるのです。
骨の中にどれくらいのカルシウムが貯蔵されているかを知るためには骨密度を測定する必要があります。40歳以上の女性では骨検診を受診することも大切です。がん検診やメタボ検診の受診率に比べると骨検診の受診率は約5%と低いのが現状です。健康日本21では、骨検診の受診率を15%に高めることが目標とされています。該当される方は是非積極的に受診していただきたいと思います。
骨の中にカルシウムを蓄積するためには成長期の食生活と運動が大切です。大学生の時期もカルシウムを蓄積する重要な時期なのですが、主要なカルシウム供給源である牛乳・乳製品の摂取量が少なく、身体活動量も少ない学生が多いのが実情です。栄養学を学ぶ学生ですら、カルシウム摂取の重要性についてはよく知っているにもかかわらず、実際の摂取量は決して多くはありません。これは多くの日本人にも当てはまります。骨粗鬆症の認知度は高く、カルシウム摂取の重要性もよく知られているにもかかわらず、国民健康・栄養調査の結果をみるとカルシウム摂取量の平均値はこの50年近く変わっていません。現状では国民の約半数がカルシウム不足とも考えられます。カルシウム不足の結果はすぐには現れてきません。人生100年時代、健康で長生きするためには今以上のカルシウム摂取が勧められます。牛乳・乳製品、骨まで食べることのできる小魚類、野菜、大豆・大豆製品などのカルシウム供給源となる食品の摂取をお勧めします。また、骨に適度な負荷をかけることも不可欠です。決して激しいスポーツを行う必要はありません。歩く、階段の上り下り、縄跳びや、かかと落としなど骨に衝撃のかかる身体活動を生活に取り入れてみてください。
この記事を読まれたすべての方が、健康な骨で元気で長生きできるように願っています。もちろん、日本栄養大学の学生は、食と健康のプロフェッショナルなので、きっと健康で長生きしてくれることも信じています。
上西一弘 教授
徳島大学大学院栄養学研究科 修士課程修了。食品企業の研究所を経て、女子栄養大学に勤務。専門は栄養生理学、とくにヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究、骨の健康と栄養、スポーツ栄養など