塚田 芳江さん Tsukada Yoshie
「食」・「栄養」には、
治療を支える力と
患者さんの喜びや
楽しみになる力があります。
杏林大学医学部付属病院
栄養部 副部長
塚田 芳枝さん Tsukada Yoshie
1993年
女子栄養大学
栄養学部栄養学科栄養科学専攻卒業
卒業後、港区内の病院で患者給食の提供や栄養指導業務などに従事した後、2008年、杏林大学医学部付属病院に入職。本院は、許可病床数1,153床の大学病院。転職後は、病棟活動や栄養指導を中心とする業務に従事。チーム医療については、嚥下チームや糖尿病チームに参画。2010年以降は、緩和ケアチームに在籍し、現在に至る。2012年より科長、2017年より現職。日本糖尿病療養指導士、病態栄養認定管理栄養士、がん病態栄養専門管理栄養士、NSTコーディネーター、栄養サポートチーム専門療法士などを取得。
大学で学んだ知識や技術を社会に活かすために、
病院栄養士として働く
大学時代を振り返って、今でも鮮明に思い出すのは、入学式や卒業式での「本学で学んだ知識や技術を社会に活かさなくてはいけない。」いう香川綾学長のお言葉で、今も私の中に生きています。
現在の職場は、30を超える診療科に加え、高度救命救急センター、総合周産期母子医療センターなどが診療科の枠を超えた横断的な組織として確立しており、救急初期診療チームが24時間体制で、1~3次救急に対応しています。私が所属する栄養部門は、患者さんの栄養管理を実現するためにフードサービスとクリニカルサービスを担う部署で、様々なスキルが要求されます。まず、患者給食を安全かつ適切に提供することが最重要課題で、食品や料理の知識はもちろん、一つの献立を様々な栄養設定に合わせて献立展開する技術が求められます。30を超える診療科のニーズに応えるため、180種以上の食種を設定し、それらの精度を管理しています。また、立案した献立を実際に厨房で調理可能なものとするため、一つ一つのレシピの完成度を高めるとともに、労働力や作業時間、使用可能な調理機器や食材費など様々な要素を、総体的に調整・管理しています。
治療を支え、喜びや楽しみをもたらす「食」・「栄養」の力
入院患者さんの栄養ケアは栄養評価から始まります。栄養支援が必要な方には、管理栄養士が病棟訪問により状況を確認し、対策を検討・提案します。ここでは検査値や患者さんの身体的状況から評価を行うスキルや、医師・看護師・薬剤師ら他職種とのコミュニケーションが重要となります。検査値は、在学中は基準値を中心に学びますが、実際の臨床場面では驚くような異常値を目の当たりにすることも多くあります。また生活習慣病の患者さんが、1週間~10日程度、病院給食を食べることでデータが改善していく様をみることも珍しくありません。そんな時、改めて「食の力」・「栄養の力」を感じます。患者さんから「入院中は食事を楽しみにのりきった」といったお手紙をいただくと、栄養部門の全スタッフが喜びを感じますし、行動変容の定着を目指した栄養指導の結果として、食事療法を習得した外来患者さんの姿をみられるのは管理栄養士として嬉しい瞬間です。
「治療」と「楽しみ」の狭間で苦慮することで、
スキルは磨かれる
「食」・「栄養」には、治療を支える力とともに、患者さんにとっての喜び、楽しみになる力もあります。臨床場面では、患者さんの疾患がハードルとなり、「治療」と「楽しみ」の狭間で管理栄養士として苦慮することも多いですが、そうした経験を通してスキルは磨かれていきます。これまで、大学で学んだ知識・技術をベースに、実臨床での経験を積み上げ、日々、自身のスキルアップを目指してきましたし、これからも、さらにスキルアップして、患者さんへの貢献につなげていきたいと思います。