おいしく食べることを当たり前に。
そのためにできることをやる
栄養士になりたいと思ったのは、小学6年生の時。卒業アルバムにもそう書いてあります。念願がかなって女子栄養大学に入った時は、青年海外協力隊に参加したいと考えていました。卒業後3年間、高齢者施設で働いた後、夢だった協力隊に応募しました。派遣されたパラオ共和国では、2年間、国の保健セクションで栄養指導に従事しました。帰国してから1年後、現在のケアセンター南大井に就職しました。施設は開所2年目で、マズい食事の立て直しを任されました。給食は委託でしたが、おいしく食べていただくためにどうしたらいいか、ひたすら考え、食器の見直し、献立の改善、調理や盛り付けの指導、次々に取り組んでいきました。幸い、おいしい食事を提供したいと考える調理師さんがいて、食事は一気においしくなりました。私自身、子どもの頃、祖母が寝たきりになっても口からおいしそうに食べている様子、その食事を食材や調理方法を工夫して家族が作っている様子を見ていたので、おいしく食べることは当たり前という思いがありました。高齢者だから、噛めないから、なんでもきざみ食、見た目が悪くても我慢という状況を、なんとしても変えたかったのです。軟菜食やムース食がまだ普及していない頃でしたが、そういう食事の提供にも先駆けて取り組んできました。
管理栄養士としての仕事があるから、副所長の仕事もやれる
3年前、副所長になりました。所長を補佐するために、新しくできたポストです。もともと栄養管理室の中だけにいては栄養マネジメントは行えないと考え、就職当初から、管理栄養士として常にフロアを歩き回り、自分の目で利用者を見て、ケアワーカ やナースからも様々な情報を得るために、コミュニ―ケーションをとっていました。そうやって所内全体が見えていたからこそ、副所長の仕事を任されたのだと考えています。今は、現場の栄養業務と所内のマネジメント業務が、私にとっての日々の仕事の両輪になっています。
失敗は、次の改善のチャンス。
なぜそうなったのかを考えることが重要
この仕事でやりがいを感じるのは、高齢者の栄養状態の改善を目の前で見届けることができた時、ご家族への指導で“なるほど、こういう方法があるのね”と合点が得られた時です。失敗したら、次にどうしたらよいかを考える。おいしかったら、見た目なのか、隠し味なのか、なぜおいしいのかを考える。“なぜ”“どうして”という疑問を持ち追求していけば、物事のつながりがわかり、気づきも生まれ、仕事がおもしろくなります。教科書どおりにやる真面目さだけでは食事を楽しめませんし、栄養マネジメントも味気ないものになってしまいます。感性を大切にしながら発想力や柔軟性を高め、自分が管理栄養士の仕事を楽しむことが、おいしい食事を生み出すことになると思っています。