土井 悦子さん Doi Etsuko
管理栄養士として
なにをすべきか、
患者さんとの関わりの中から
見出していきます。
(国共連)虎の門病院
栄養部 部長
土井 悦子さん Doi Etsuko
1998年
女子栄養大学
栄養学部栄養学科実践栄養学専攻卒業
1998年より、国家公務員共済組合連合会虎の門病院(本院15年、分院8年)に勤務。厨房での大量調理、献立作成、集団・個人栄養指導、NST立ち上げ、血液内科における造血幹細胞移植患者や、回復期リハビリテーション病棟における長期入院患者の栄養管理、肝臓科・腎センターのカンファレンス参加、人間ドッグ利用後の栄養相談や特定保健指導等を経験。2008年より科長。2017年より現職。日本糖尿病療養指導士、病態栄養専門管理栄養士、腎臓病病態栄養専門管理栄養士を取得。
治療に専念する患者さんに安心していただける栄養相談を
生涯の仕事として、学生時代から医療現場で働く管理栄養士を目指し、総合病院を希望して虎の門病院に就職しました。1年目は給食管理(直営による実施)に関わる基本的な事務業務全般と厨房での調理業務を覚え、2年目は本格的に大量調理を経験、3年目に患者の病態別の特殊な献立作成を任され、4年目から栄養相談も担当するようになりました。それ以降、移植医療を行う血液内科での栄養管理、NST (Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)の立ち上げ、特定保健指導に対応する体制づくりなど、医療保険制度の動向や病院内の医療体制の充実に応じて、栄養管理業務の企画・立案やそれを支える仕組みづくりに取り組んできました。
仕事を通して喜びを感じるのは、患者さんとの関わりを通してです。栄養相談後に“具体的な話を聞けて安心した”“少し気持ちが楽になった”という言葉をいただくと、その一瞬一瞬が喜びになります。治療で必ずしも快方に向かうとは限りません。数値の改善ばかりにとらわれるのではなく、患者さんがその時々の状況を受け入れ、安心して食事療法に臨めるようなサポートを心がけています。
働きやすい職場づくりから始まる
管理栄養士の育成は患者さんのために
部長職に就いてからは業務の大半を会議や調整業務が占めるようになり、栄養相談室の稼働状況や栄養管理業務の実施状況などに加えて、食事サービスの工夫や患者さんからの評価など、診療報酬の数字だけでは表現できない栄養部の業務の見える化にも取り組んでいます。人事・労務管理では、日々の業務に穴をあけないシフト管理はもちろん、中長期的な視点で必要な人員確保に努め、栄養部に関わる全てのスタッフがやりがいを持って働ける環境づくりにも気を配っています。人材育成に関してはまだまだやるべきことがありますが、栄養ケアを必要とする患者さんに十分なサービスを提供できる体制とするために、管理栄養士、栄養士、調理師、あらゆる専門職が職種を超えて同じ方向に向かって進んでいける道標にならなければならないと思っています。
入院前から退院後も、切れ目ない栄養ケアを実現できる社会へ
NSTの導入や活動の広がりを通して、栄養ケアの重要性への認識も深まりました。ですが、栄養ケアがNSTの活動に特化されている間は、誰もがどこでも当たり前に栄養ケアを受けられる体制には至っていないと捉えています。将来NSTという言葉自体が不要となり、どこにでも管理栄養士がいて、外来通院時から入院時、そして退院後まで、必要な情報が共有され、適切な栄養ケアが切れ目なく行われる社会を実現できたら良いと思います。研究会や学会をきっかけに全国規模のネットワークが広がり、WEBを利用して他施設の状況を知る機会にも恵まれています。院外とのつながりも大切に、私たちが実現できる当院の栄養ケアの体制づくりに取り組んでいきたいと思います。