私たちの生活には、突然の変化や予期せぬ出来事が多くあります。不慮の事故や病気などで、身体的にも精神的にも障がいを負う可能性があります。どのような状況下であっても、生命を維持するには必要な栄養素を摂ることが必要です。個々の健康状態や栄養状態にあわせて、また摂取(補給)できる方法に合わせて最適な栄養・食事計画をたてることが重要です。一人ひとりの健康をサポートするために、管理栄養士は、専門的な知識とスキルを活かして、多様な課題に挑戦し、活躍することが求められます。そのために必要な学びの一つに人々の健康を支える「福祉栄養学」があります。
学びと教育
[実践栄養学科] 栄養学を学んで、「多様な課題に挑戦し活躍する管理栄養士」になる
誰ひとり取り残さない「福祉栄養学」
活躍の場は多種多様
福祉分野の管理栄養士の活躍の場は多種多様です。
高齢者、児童、障がい者などを対象に、施設利用者や地域住民である人々に適した栄養管理を行います。施設としては、特別養護老人ホーム、児童養護施設、障害児入所施設、障害者支援施設、乳児院等があります。また、地域住民に対しては、訪問栄養指導等や栄養相談などがあります。例えば、特別養護老人ホームでは、介護が必要な高齢者が毎日元気で過ごせるように、栄養のバランスの取れた食事を提供します。また、地域住民に対しては訪問栄養指導や栄養相談を行います。その活動は、老人福祉法、介護保険法、児童福祉法、障害者総合支援法などに基づくものです。
実践栄養学科のカリキュラム
実践栄養学科では、3年次までに、あらゆる人々の栄養管理が適切に行えることを目標としています。乳児から高齢者まで、ライフステージごとの健康をサポートするために、身体状況、栄養状態、食行動などを総合的に判断し、実践に必要な専門知識や技術を、身に着けるための体系的なカリキュラムが編成されています。特に高齢者や障がい者など特別な栄養管理が必要な人々に対して、生活の質を向上させることを学びます。
「プロフェッショナル科目群」の福祉栄養学で栄養管理を深く学ぶ
福祉栄養系では、以下のポイントを重視しています。
1.多職種連携:医師、看護師、介護スタッフなどと連携して、総合的な健康管理を行うことが強調されます。他の栄養学科目でも連携は重要ですが、特に福祉施設や地域社会での連携は、重要な課題となります。
2.対象者の多様性 :新生児から高齢者まで、病気や障がいを持つ人々の幅広い対象者に対応します。ライフステージごとの栄養管理や支援が求められます。
3.栄養と福祉の統合:栄養学と社会福祉学を統合した領域であり、栄養管理だけでなく、福祉サービスの提供や生活支援の視点も必要です。対象者の生活の質を総合的に向上させることを目指します。
4.コミュニケーション力の強化: 多職種や対象者・家族とのコミュニケーションが重要であるため、コミュニケーション力の強化を図ります。効果的な栄養指導や支援が可能となります。
5.課題解決能力の育成 :対象者の健康状態を多方面から評価し、課題に対して効果的な解決策を統合する能力を身につけます。
「プロフェッショナル科目群」の福祉栄養系では上記の内容を以下の科目で深く学びます
「看護・介護論」
高齢者や病気や障害を持った人達への対応方法を学びます。看護・介護論を学ぶことで、栄養管理だけでなく、総合的な健康管理が重要であることを理解します。
「福祉栄養活動論」
高齢者や児童養護、障がい者福祉、介護保険に基づく地域で活躍する管理栄養士の話を聞き、個々人の障害の程度や機能に合わせた現場での栄養ケア・マネジメントを学びます。
「福祉栄養実習」
「食べる」の原点を見つめる
私たちは毎日、何気なく食事をしています。食べ物を前にして、目で見て、香りを感じ、口に入れて、味や温度を感じます。食べた感想を言葉で表現して、一緒に食べる人とそれを共有し、どれだけ私たちの生活を豊かにするかを学びます。
日本人の死因の中で心疾患や脳卒中を含む循環器疾患が多くを占めています。例えば脳卒中などでは、一命をとりとめても麻痺が残ることが多いです。飲み込む機能が低下する、自分で食べ物を口に運べない方々もいます。
口の中で食べ物をかんだり(咀嚼)、飲み込む(嚥下)ことで、食べ物を体内に取り込んでいます。これを経口摂取といいます。加齢や病気、先天的な理由で、これらのことができない、あるいは十分でない場合には、消化管に直接入れる経腸栄養法、血管に栄養成分を入れる静脈栄養法といった方法で、必要な栄養素が補給できるようにします。福祉栄養系で「食べる」の原点をみつめ、多彩な管理栄養士へと成長してみませんか!
授業の様子
福祉実習では、「高齢者の疑似体験」を通じて、高齢者の直面する身体的変化や不便さを実感します。例えば、視力や聴力の低下、関節の硬直、筋力の低下等を体験し、高齢者の生活にどのような影響があるのかを理解します。また、「口腔ケア」として、お口の中を清潔にすることは、食事をしっかり食べるために欠かせません。これらの体験を通じて、理論だけでなく実践的なスキルの習得を目指します。例えば、高齢者の特に食事介助、栄養管理において、どのような工夫や配慮が必要かを発表します。体験を通じて得た経験や気づきを共有することで、高齢者への理解がより深まります。