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NEWS AND EVENTS

女子栄養大学のいま
学内座談会「栄養学でこれからの社会を切り拓く」(2)
学園

学内座談会「栄養学でこれからの社会を切り拓く」(2)

2023.12.21

らしさを大切に、つなぐ力で、食をデザインする

栄養学の魅力は、様々な学問領域が関わっているという点にあります。栄養学部の単科大学である本学は、そうした学問の魅力を最大限にいかして、栄養学でこれからの社会を切り拓いていくためになにができるかを考え、実行していきたいと考えます。
本学は、今年90周年を迎えました。建学の精神「食により健康の維持・改善を図る」のもと、大切にしているのは、女子栄養大学らしい学びです。
今回は、女子栄養大学栄養学部のなかでもっともユニークな教育を実践している食文化栄養学科の異なる専門領域の先生方にお集りいただき、食文化栄養学科の学びの特徴をテーマに、栄養学部長、食文化栄養学科長とともに話し合い、その内容を発信していくことにしました。

栄養学部のなかで既存の資格や概念にとらわれず、
食について自由な発想で学べるのが食文化栄養学科。
その学びの特徴について、様々な角度から話し合ってみました。

栄養学部長 石田裕美 教授
本学は栄養学に特化した大学で、そのなかでももっともユニークな教育を実践しているのが、食文化栄養学科です。
本日は、異なる専門領域の5名の先生方から話題提供いただき、食文化栄養学科長の山下史郎教授も交え、学びの特徴について、様々な角度から捉え直し、発信していきたいと考えています。
参加いただく先生は、食生活文化研究室 守屋亜記子准教授、食料・地域経済学研究室 平口嘉典准教授、国際食コミュニケーション研究室 衞藤久美准教授、ビジュアル・コミュニケーション研究室 平野覚堂准教授、食品化学研究室 宮澤紀子准教授です。
多彩な専門領域の先生方による、多彩な学びが、食文化栄養学科の学びの最大の特徴です。今回の座談会でそのすべてをお伝えすることはできないので、これから様々な方法で、学びの特徴をとらえ、その魅力を発信していくための企画に取り組んでいきたいと思います。


1

食文化の定義は研究者によって異なりますが、私が担当する食生活文化論の講義では、「民族・集団・地域・時代などにおいて共有され、それが一定の様式として習慣化され、伝承されるほどに定着した食物摂取に関する生活様式」と説明しています。また、食文化がカバーする範囲は広く、食料生産から、流通、調理・加工、配膳、摂取までとする研究者がいるなかで、文化人類学者として食文化研究の地平を切り拓いた石毛直道先生は、さらに生理にまで深く関わるとしています。
本学の創立者香川綾が追求し続けた栄養学は、人間学です。「栄養学は生活の中でいかされてこそ私たちの生命を支える」と実践にこだわり、誰もが健康にと願い、一人ひとりの人間、日々の食事を大切にしました。
人間は文化的な存在で、民族により集団により、また一人ひとりが異なるということが前提となります。本学には、他大学では学べない女子栄養大学ならではの栄養学があります。ダーバーシティを尊重するグローバルな社会においては、個別具体的な栄養学の文化的実践が社会から求められています。
「人間」と「社会」への深い理解に基づき、食の文化について学際的に学ぶ。そうした文理融合の学びで培った知識と実践により、食に関する現代的課題に対応できる人材に成長していきます。

【枠ブラック】守屋先生PPT
食生活文化研究室 守屋亜記子 准教授


3

日本の地域社会には、人口の減少や高齢化、産業の空洞化、耕作放棄地の増加など、さまざまな課題が存在しています。特に、農村では、過疎化や限界集落の問題、森林の荒廃や鳥獣害の発生など、地域住民だけでは解決できない深刻な課題を抱えています。
私が担当する地域振興論および地域振興論実習では、地域を取り巻く社会、経済、環境の状況を把握し、地域の課題について考えるなかで、地域資源の発掘と利活用の方法や、地域の様々な主体が取り組む地域振興の事例について学び、自分の力で地域振興策を構想し、実践できる力を養います。
本学では、栄養学や調理学、食品学、食文化論などの基礎を身に付け、地域振興について学び、ビジネスやマーケティング、デザインに関する知識も身に付けて、3~4年次には、実際にフィールドに出て、自分なりの「食を通した地域振興」にチャレンジします。
ポイントは、地域の人たちに寄り添って、ともに課題解決に取り組むこと。地域の強みはなにか、足りないところはどこか、地域の人たちがなにを望んでいるのか、確かめながら取り組んでいきます。そのプロセスを学生自らが体験していけるように、教員がサポートしていきます。
大切なことは、協働(コラボレーション)であり、みんなで協力しあうこと。教員がコーディネーターとして地域と学生をつなぎ、3者のコラボレーションで取組みを進めていきます。

【枠ブラック】平口先生PPT
食料・地域経済学研究室 平口嘉典 准教授


5

グルーバル社会の一員として、異文化の生活様式、食生活、価値観などの実際を知り、多様性を尊重し、受け入れるようになれることは大切です。
私が担当する国際理解論では、グローバルな視点で食に関する様々な問題とその背景で起きていることを取り上げ、自分ごととして捉えられるように学んでいきます。「世界の食卓」の写真を通して、食の多様性に気づく。気がついたこと、調べた結果をもとに、食にまつわる様々な問題について考え、議論する。コーヒーを例に世界の流通の仕組みを知る。食品ロスについて考える。世界の水事情や海の豊かさについて学ぶ。プラスチックごみについて考える。世界の貧困や児童労働の実態を知り、生きる権利について考える。こうした学びを持続可能な開発目標(SDGs)とのつながりで整理し、地球社会の未来を創る一員として、消費者や生活者の一人として、自分たちができることを考えていきます。
このほかの授業やゼミでも社会とつながった学びが多くあり、学生一人ひとりの興味・関心にあわせて学ぶことができます。様々な経験や学びを積み重ねることで、既存の枠組みにとらわれず、自分なりの発想を生かした情報発信力や表現力を身につけます。実際の活動の場面では、どうすれば相手に伝わるかを自ら考え改善を重ねていく姿、いろいろな人に意見を聞いてよりよいものに仕上げていく姿など、大きく成長した姿に出会えます。

【枠ブラック】衞藤先生PPT
国際食コミュニケーション研究室 衞藤久美 准教授


7

食文化栄養学科の教育の特徴は、様々な学びがネットワークを形成しながら広がっていくイメージです。
複雑化が増している時代だからこそ、多彩な領域の教員、多彩な科目による、学際性のある学びが求められています。自分の専門性が他の専門性とどのように結びついて広がっていくのかを確かめることになりますし、自分の専門性を周りにしみ出していくことで新たな専門性に拡張していくことにもなります。
1年次のフードクリエーション実習では、なんらかの条件(テーマ)のもと、そこからどんな料理が発想できるかを考え、その発想を具現化していくことで、既存のレシピにはない料理を創り出していきます。デザインを専門とする私と調理学を専門とする教員とのコラボによって実現する実習です。食のパーソナライゼーションは、食材の調理特性や調理の技術力、既存の料理についての知識をベースに、リーサーチ力、企画力、デザイン力などが加わることによって、ようやく形として表現することができるのです。
なにかの頂点に立つのではなく、ハブとして機能することで、さまざまなネットワークとつながり、これまで気づかなかったものや見過ごされてきた価値を再考したり、見直したりすることができます。権威主義的な価値観にとらわれていては、出会えないものです。

【枠ブラック】平野先生PPT
ビジュアル・コミュニケーション研究室 平野覚堂 准教授


9

私の専門は食品学で、人が生きるために食べる「食物」側に着目した学問領域です。食品の成分、構造や成り立ちについて学び、食品に含まれる成分が生体にどのように働くのか、食品の種類によって成分がどう異なるのか、加工や調理の方法によって成分がどう変化するのかを理解していきます。食文化的側面が加わると、おいしさや楽しさ、人々や地域との交流など、食の世界は飛躍的に広がります。様々な要素に配慮して、新たな食の世界を創造していくために、食品に関する基本的知識をしっかり学ぶことは重要です。
ゼミの活動では、食を通して自然との共生につながる取組みに参加しています。大学が所在する坂戸市のミツバチプロジェクトで、特産品のハチミツを活用したオリジナルレシピの開発を通して、ミツバチと共生できる自然環境の保全のための活動に取り組みました。養蜂によりとれるハチミツは自然の恵みそのもので、季節ごとの花の種類などにより味や色、香りなどの風味の違いを楽しませてくれます。また、きのこの機能性に関する研究にも取り組んでいて、生産から消費に至るまでを捉えることでその食品ならではの付加価値を探索していきます。森林資源の恩恵を将来の世代に届けることにもつながります。さらに規格外や余剰農作物のアップサイクルに取り組む企業と産学官連携で、かくれフードロスの削減に向けて食の循環型モデルを構築する食のサーキュラーエコノミープロジェクトに取り組んでいます。
私たち人間が、自然のなかで生育する食べ物を利用して、これからの暮らしを豊かで健康的なものにしていくとしたら、自然との共生や環境の保全のためにできることを考え行動していくことも必要です。

【枠ブラック】宮澤先生PPT
食品化学研究室 宮澤紀子 准教授


5名の先生方の話題提供を踏まえて、食文化栄養学科の学びの特徴を伝えるために、メッセージとして表現してみることにしました。

11

自分らしさ、その人らしさ、そのまちらしさ、その土地らしさ、その店らしさ‥‥‥。
食で、「らしさ」を表現していく。
私たちは「らしさ」を認め合う社会を大切にしたい。

その「らしさ」が、自分や誰かの食を豊かにしたり、
また、自然や環境を守ったりできるものであってほしい。
そのために、私たちは栄養学を学ぶ。

栄養学は、人と食べ物、社会との関わりを科学的に探究し、実践に結びつけることで、すべての人々の健康と幸せを実現していくために必要な学問です。

食文化栄養学科では、人々や社会にとっての「食」がどうあったらよいかを考えるために自分らしく「食」のことを広く深く学び、多様な価値を知り、自ら発見した課題を自らの力で切り拓く実践力を育てます。
自分らしさを大切にしながら、食を通して人・地域・社会、そして時をつなげ、未来をつくっていく。

私たちは、多様な「らしさ」に出会い、つなぐことで
食をデザインする。
そして、未来のために新たな食を創造する担い手になる。
栄養学部長 石田裕美 教授
食文化栄養学科長 山下史郎 教授



学内座談会「栄養学でこれからの社会を切り拓く」(1)
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