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女子栄養大学のいま
【学園フォーカス】栄養学は、人間が生きるために必要な学問です
学園

【学園フォーカス】栄養学は、人間が生きるために必要な学問です

2022.09.26
女子栄養大学 
栄養学部長 石田 裕美(いしだ ひろみ) 
教授 給食・栄養管理研究室 
[学園フォーカス06 Sep 2022] 

■日本初の「栄養学部」誕生からずっと、生活にいかす「実践」を追求
女子栄養大学は今年で開設61周年を迎えました。開設時は家政学部の食物栄養学科でしたが4年後の1965年に念願の「栄養学部栄養学科」となり、日本初の「栄養学部」が私立大学に誕生しました。現在は実践栄養学科、保健栄養学科、食文化栄養学科と3学科となっていますが、栄養学部のみの単科大学として、教育研究に取り組み続けています。栄養学は健康科学部、家政学部や生活科学部、農学部など様々な領域で学ぶことができますが、栄養学は「栄養学部」で学ぶ、この意義を高校生にはもっと知ってもらいたいと思っています。

本学が「栄養学部」として存在するのは、食べ物を摂取することで、生命を維持し、健康に日常生活を送る源である「栄養」という科学と、食べ物を合理的においしく食べる「料理」という実践を教育と研究の柱にしているからです。創立者の香川綾は、多くの命を奪い不治の病とされていた脚気(かっけ)の治癒と予防のために、胚芽米の研究と普及に尽力し、人々が病気にならない社会をつくるために、栄養学の大学をつくりあげ、専門職人材の養成に取り組んできました。

専門職としては、管理栄養士及び栄養士の養成に最も歴史がありますが、食に強い家庭科教諭、子どもの成長の中での食の役割への理解に深みのある養護教諭、バイオマーカー等の検査を通じて栄養状態を評価できる臨床検査技師など、栄養学を強みとする専門職を社会に送り出すことで、「栄養学の実践」の普及につなげています。

■栄養学のパイオニアとしての実績と多様さを学生も教員も認め合う学び
本学の教育の特徴は、栄養学のパイオニアとしての実績を伝統として受け継ぎ、多様さを学生相互に認めあえる学びの環境を作っているところです。

管理栄養士を目指す実践栄養学科は1学年200名(3年次編入20名)と、日本で最も定員数の多い管理栄養士養成校です。国家試験の合格者数全国第1位であり続けていること、管理栄養士として活躍する卒業生が全国に多数いるといった実績は、学生数の多さを強みとした教育が支えています。人数が多いゆえ、実験・実習室をはじめとした施設整備が充実し、実践の場を想定した機能的な実習を行うことができます。また、一人の学生が経験できることは限られますが、友人の経験を通じて学び合えるよう、カリキュラムを工夫しています。学生数が多いからこそ、友人とともに困難なことも乗り越えられる、お互いの個性を受け入れ、学び合い、助け合える学びの環境を作り出しています。

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▲給食経営管理実習室―200食の提供機能と複雑な工程の管理・調整機能を試す実習室
(栄養バランスのとれた食事を、決められた時間に、安全においしく提供する全工程を総合的にマネジメントする実践力を磨く)

保健栄養学科には、栄養士資格をコアとし、家庭科教諭、臨床検査技師などの資格取得ができる栄養科学専攻と、食に強い養護教諭を目指す保健養護専攻があります。保健養護専攻は、採用試験合格率が全国トップクラスで、埼玉県内の養護教諭の5人に1人が本学の卒業生です。卒業後も相互に課題を共有、学びあい、相談できる仕組みが作られ、学び続ける環境が整えられています。

食文化栄養学科は1993年に設置されました。資格取得にこだわらない、新たな食の世界を創造する自由な学びがあります。おいしさや楽しみ、地域性といった食の魅力を追求あるいは伝承するための学生の学習テーマは多様で、4年間の学びの集大成である食文化栄養学実習発表会では、栄養学の広がり、奥行きの深さ、新たな可能性が発信されます。卒業後の活躍の場は、企業でのメニュー開発、料理研究家やメディア関係、百貨店のバイヤーなど、実に多様です。

こうした栄養学の多様な学びを支えているのが、多彩な教授陣の専門性です。1つの専門領域に複数の教員がいることで、教員の研究力や指導力が多様に組み合わさって、専門領域をより広くより深く理解することができ、一つの事象を多面的にみる視野を獲得することができます。

■自分を実例として実感する学びが、学生の自信と工夫を生み出す
実験や実習は、科学の理解を深めるために、なにを学生自らの眼で確かめるべきか、現場で必要とされる技術がどうしたら学生に身に付くかを考え、計画しています。

実践栄養学科の栄養アセスメント基礎実習では、自らの身体計測とともに血液検査や24時間蓄尿を行い、食事調査の結果と照らしあわせながら、栄養状態の評価を行います。自分の身体の中で栄養不足が起きているのか、料理や食材など食事のどこに問題があるのかを探っていきます。この授業の内容は、本年7月のNHKの健康情報番組で放映されました。番組内では、鉄不足と判定された学生たちが鉄補給のために実践した食事内容やレシピ、食べ方の工夫についても紹介されました。

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▲NHK番組(あしたが変わるトリセツショー「鉄」)で、学内で血液検査を行い、鉄不足を判定する授業の様子が放映(写真左:石田学部長)

学生たちによる実践の工夫は、コロナ禍でも活かされています。実習で、学生食堂における昼食時の感染予防対策を考え、実際に学生食堂に掲示しました。目に入りやすいように、椅子の背面にポスターを貼るというのも学生のアイデアです。自分ごととしてとらえて考える機会を得ることで、実践につなげる新たな発想や発見につながっています。

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▲コロナ禍の学生食堂の様子(学生たちによる感染予防のためのポスターの作成、掲示)
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また、実験や実習では「グループワーク」が多く取り入れています。人の意見を聞き、多様な考えがあることを知る、その中で自分の意見を明確にしていく力、主張する力を効果的に身に付けることもできます。

卒業研究を中心に、社会連携活動の機会もたくさんあります。本学の社会連携活動は、それぞれの連携先が大切にしている“ものづくり”、“健康づくり”への思いや技術力を尊重し、共に考え、共に実践していくことを基本に進めています。学生は社会とつながりながら、自分の強みや弱みを知り、また栄養学の可能性を考える機会となっています。

埼玉県三郷市の依頼による離乳食づくりの紹介では、コロナ禍、簡単にできる離乳食の作り方をご家庭に届けたいという学生の思いを込めてレシピを考案し、離乳食づくりの動画を作成しました。

図2
▲離乳食づくりの撮影は、学生自らが撮影。埼玉県三郷市HPで公開

JAいるま野と共同で、地元で栽培された埼玉県産小麦「ハナマンテン」の特性にあったパンの作り方や栽培しても使いきれずにある白菜を活用したサンドイッチレシピを紹介する動画を作成・公開もしました。埼玉県秩父地域の特産品を使ったチーズケーキのレシピを考案し商品化を進めたり、香川県産農産物応援プロジェクトとしてJA香川県と共同で県産食材を使ったレシピや商品開発を行ったりと、地域振興に学生が参画する連携活動が数多くあります。学生たちは、主体的に関わることで、創造力や表現力を磨き、大きく成長していきます。

図3
▲(写真左上)JAいるま野YouTubeチャンネルで埼玉県産「ハナマンテン」を使ったレシピ動画が公開
(写真左下)秩父地域の特産品を使って考案したチーズケーキの商品化の発表会
(写真右)JA香川県との共同による香川県産農産物を使った15のレシピが公開
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■人の一生と関われる栄養学の魅力を多くの人に伝えたい
本学の教育の大きな成果は、社会で働き続ける卒業生たちの姿です。社会に出てからも自ら魅力的に成長しているからこそ、魅力ある他職種との協働につながっていると思われます。

人口減少により社会や経済が縮小し、様々な格差が広がっていくこれからの時代では、解決の難しい課題に向き合っていくことになります。貧困や虐待という問題を含め、未来ある子どもの食についてもっと考えていきたい、健やかな育ちの中で、老いていく人生の中で食がどうあるべきかなど、人の一生を通して栄養学とその実践が活かされていくことに終わりはありません。このことを一緒に考え取り組んでくれる仲間を増やしていきたいと考えています。

本学で栄養学を学び社会で生き生きと働く仲間が増えることで、誰もが日々の食事を楽しみ食べることで心身の健康を保つことができれば、その先にある社会はきっとみんなが心地良く暮らせる社会になると信じています。



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