栄養学部 令和7年度 新任教員講演会開催

2025.06.24

学園

栄養学部 令和7年度 新任教員講演会開催

令和7年6月11日(水)、今年度ご着任された栄養学部新任教員による講演会が開催されました。本学では、新任の先生方の研究や教育を共有し教職員同士の理解を深めるために、毎年、学内で講演会を行っています。

研究領域の異なる5名の先生方による講演は、実に多彩で、興味深い内容でした。それぞれの先生の講演内容、専門分野と研究テーマをご紹介します。

これまで関わった研究は小麦粉の膨化調理に関するもので、スポンジケーキやシフォンケーキの配合に関する研究に取り組んできました。ケーキ生地の種類は複数あり、材料や作り方の違いによって、仕上がりや食感に差が出てきます。こうした食べ物のおいしさを評価するため機器分析と官能評価に取り組み、最近は電子レンジを用いた研究を進めています。

「電子レンジを利用したスポンジケーキの品質特性と嗜好性」については、卵、水、油の配合比を変動させた組合せの実験をもとに、最適化分析を行い、電子レンジ加熱に適する材料配合比を導き出しました。また、ケーキの力学的物性、テクスチャーやにおいなど、多様な方法を用いて評価を行いました。

今後は、新規食材の調理法の提案やおいしさの評価を行うとともに、世界規模の食料や栄養の課題にも向き合いつつ、台所で起きる身近な疑問にも目を向けられる好奇心を持ち続けたいと思います。

[専門分野]調理科学
[研究テーマ]調理と加工、食嗜好と評価、マイクロ波加熱

※松浦先生は、本学で学士号、修士号、博士号を取得した卒業生です。

スマホが危ない!最近、スマホに関する特集記事が組まれ、スマホ依存による脳過労として、全身疼痛や不安障害などの体調不良が指摘されています。電磁波は、波長と波の大きさによって性質が異なり、目的に応じて様々な電子機器に使われています。

携帯電話の電磁波が脳にどのような影響を与えるのか。中枢系の免疫を担当するミクログリアの活性化への影響について、電磁波発生装置を使用した報告をもとに、市販の携帯電話を使ったらどうなるか、ラットへの電磁波照射実験を行いました。
通常はラミファイド(静止型)で、何らかの刺激が加わるとアメボイド(活性型)に変化します。実験の結果、通話回数が増すほど活性型ミクログリアへの変貌が強く明確に現れることがわかりました。

今や携帯はなくてはならないもので、寝る時も頭の近くに置きがちです。電磁波は距離に反比例して弱くなるので、学生の皆さんには寝る時には少し離して置くといった実際の工夫を伝えたいと思います。

[専門分野]人体病理学、実験病理学
[研究テーマ]脳梗塞の損傷治療、電磁波によるミクログリアの変化

治療から予防、そしてライフパフォーマンスの向上へ。医師としての経験から、どんな状態にあっても、その人らしいパフォーマンスが発揮できるように、アプローチしたいと思っています。

私の歩みは、糖尿病の患者さんなどへの個別医療から始まり、スポーツドクターとして運動療法の効果検証にも取り組みました。健康科学総合センターで膨大な健診データを解析するようになってからは、病気にならない、病気を重症化させないためのマニュアルやガイドラインづくり、地域と連携した滞在型のプログラム開発の研究や検証、健康なまちづくりと、予防の科学と普及に力を入れてきました。疾病予防だけではなく、介護予防にも取り組んできました。

現在は、スポーツ庁のライフパフォーマンスの向上を目指した取組に関わっています。スポーツ庁と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の連携による「スポーツ×宇宙」の動きもあり、新たな学びに挑戦していこうと考えています。

[専門分野]内科学一般、代謝、内分泌学、スポーツ科学、健康科学、公衆衛生学
[研究テーマ]糖尿病、肥満症等に対する生活習慣介入研究、健康科学政策研究

米の価格はなぜ高い?これまで米も含めフードシステムの研究に長年取り組み、農水省の審議会で米政策を審議する食糧部会長を10年ほど務めました。しかしこれまでにこのような異常な値上がりの経験はありません。原因も構図も、この半年間ナゾだらけです。

米は年に1回集中して生産し、それを1年かけて販売する商品で、いつもは収穫の秋にその一年間の価格が決まります。価格を左右するのは、前年産の在庫、今年産の供給、そして品質(等級や食味)です。今の米は当初から高く取引され始め、その後JAなど集荷業者と卸売業者の相対取引価格は例年と異なり上がり続け、卸売業者同士の取引でも驚くほどの高騰が続きました。通常、価格が上がると消費者は買わなくなるはずですが、今回は消費量が減少することなく、かえって増える面もあり、価格の高止まりを助長する感があります。

思い切った備蓄米の放出がどう影響するのか。消費者の動向は? それによる需要量は?8月末の在庫量は?そこに新米が出てきてどうなるのか。その時にナゾが解明されるかもしれません。

[専門分野]農業経済学、フードシステム学
[研究テーマ]フードシステムにおける食の信頼の役割、食の価値と食料消費行動、農福連携の意義

昨年から科研費で研究に取り組み始め、そのテーマは「包括的性教育の実践を担う教員の研修モデル開発に関する総合的研究」です。

日本では、教育制度や現場の状況に様々な課題があり、学習指導要領により教員の裁量権が抑制されている傾向がみられ、そのことが性教育の実践を難しくしている側面もあります。また、政府は2023年7月、国連人権理事会の改善勧告の一つ「包括的性教育」について「受け入れない」と回答しています。
ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」は、性を認知的・情緒的・身体的・社会的な側面から学ぶための、カリキュラムベースの教育指針であり、年齢に応じた学習目標に基づき、知識・態度・スキルの3つの領域を通じて、包括的な内容が体系的に示されています。また、諸外国で導入されている性教育者向けの「SARプログラム」は、教員自身が信念・態度・価値観・偏見と向き合い、再構築していく内容です。

今後は、SARの国際比較や日本への適応を検証し、現場での実践を見据えた教員の研修モデル開発を進めていきます。

[専門分野]性教育、学校保健、養護教諭
[研究テーマ]包括的性教育の実践を担う教員の研修モデル開発に関する総合的研究

お一人の講演時間は20分。限られた時間ですが、それぞれ異なる専門領域から、今、社会で起きている課題への問題意識、研究や取組みについて、コンパクトにわかりやすくお話いただきました。

女子栄養大学から日本栄養大学へ。令和8年度共学化により新たな一歩を踏み出します。栄養学部に特化した大学だから、ここにしかない深くて広い食の学びがあります。

今年度、5人の先生方が新たに着任され、EIDAI栄養学はさらに深化していきます。