2024.09.02
学園
9月は防災月間「いつもの食を 非常食に」
いつもの食を、非常食に。そのコツは、「いつもの食事で食べる」ことを基本に、少し工夫して「食品の買い置き」をするだけ。安心と栄養とおいしさをプラスする「食品の買い置き」を、自分や家族の暮らしにあった形で、実践してみませんか。
地震や大雨などの自然災害は、いつ身近で起きるか、わかりません。
この”もしも”に備えた食品の備蓄方法として、ふだん食べている食品を少し多めに買い置きして、食べたらその分を買い足していく方法(ローリングストック法)があります。「備える→食べる→買い足す」を繰り返しながら、食品をストックしていくので、特別なものを買わずに、簡単に備蓄できます。でも、慌ただしい日常では、スタートの“備える”がちょっと面倒に思えてしまうかもしれません。
そこで、安心と栄養とおいしさをプラスしながら「食品の買い置き→いつもの食事で食べる」を繰り返していく実践のポイントを整理してみました。
買い置きした食品は、自然災害の時だけではなく、急な体調不良や予定の変更で買い物に行けない時や行きそびれた時にも、役立ちます。
あると安心!「食品の買い置き」習慣
○ふだん食べているもの、一度試してみたいものを、食べる用に選びます。
ストック用に選ぶと、食べる機会のないままストックで終わってしまうかもしれません。ふだんから食べ慣れていると、味やおいしさ、食べ方がわかっているから、災害時にも安心して食べることができます。ふだん使わない食品も、一度試してみることで、便利さやおいしさがわかれば、ふだん使いにできます。
○主食とおかずの組合せをイメージして選びます。水は必須です。
エネルギーやたんぱく質源となる食品、保存のきく野菜類を選べば、それらを組み合せることで、栄養バランスがとりやすくなります。水分確保のため飲料水は必須です。また、お気に入りのお菓子も少しあれば、心をほっとさせたいときに役立ちます。
○忘れず、多すぎずの、ほどよいストック感を見つけていきます。
ストック期間が長くなると、なにをストックしているか忘れてしまうことも。また、ストック量が多いと、食べきれずに廃棄してしまうことも。食べるサイクルにマッチした、ほどよい量になるように、ストックしていきます。
○食べる(使う)タイミングで、ストック状況をチェックします。
ストックがどれだけあるかは、使うときに確認して、必要なものを買い足していきます。お試し用にストックしたものは、実際に食べてみてから、買い足すようにします。味やおいしさ、食べ方などを確かめて、自分や家族にあったものを、ストックしていきます。
いまを大切に食べるのが、一番の備え
栄養バランスのよい食事の日々の繰り返しが、毎日の体調を整えることになります。この先の“もしも”に備える上で、日頃から体調を整えておくことが、なにより大切なことです。
災害が発生すると、電気や水道、ガスといったライフラインが止まってしまいます。
また、飲食店やスーパーマーケット、コンビニエンスストアが閉まり、食材を購入できなくなります。
そんな時、ご家庭にある食品とカセットコンロ(熱源)を使って、おいしく温かい食事を可能にするパッククッキングをご紹介します。
パッククッキングとは?
耐熱用のポリ袋に、材料と調味料を入れて湯せんする調理法です。一人1袋で簡単に複数の料理が一度に調理できます。また、少ない調味料で調理してもしっかり味が染みているので、減塩料理にも最適です。調味時間も15~20分程度と時間短縮できる便利な調理法です。
災害時だけでなく、ふだんから試してほしい調理法
ご家庭に買い置きした食品を賞味期限前に上手に活用しましょう。缶詰やレトルト食品、乾物もいろいろなアレンジでおいしく食べることができます。主食とおかず(主菜・副菜)の組み合わせで栄養バランスも整います。おやつも簡単に作れます。
ふだんから買い置き食品を上手に調理して、お気に入りのものを買い足しておくと、災害時にも食べなれた料理をおいしく食べることができます。
おいしく簡単!買い置き食品を使ったパッククッキングレシピ
買い置き食品を使ったレシピと作り方を紹介しています。
女子栄養大学公衆栄養学研究室のYouTubeに、パッククッキングや買い置き食品をおいしく食べるレシピと作り方を公開しています。ぜひ、ご覧ください。
女子栄養大学は、2年前の2022年9月1日(防災の日)に、非常時や災害時の長期保存食等を製造・販売する尾西食品株式会社と産学連携包括協力に関する協定を締結しました。尾西食品株式会社がアルファ米を開発したのは1944年。それ以来、防災食備蓄のパイオニアとして研究・開発に取り組み続けている会社です。
今回は、尾西食品株式会社 商品開発部 伊藤秀朗氏に、商品開発の歩みや現状、想いについてお伺いするとともに、商品の例をご紹介いただきました。
―アルファ米はどのように生まれ、進化してきたのでしょうか。
当社の創業者は、むかし、潜水艦の水兵で、大戦時に艦内の食事事情を憂いて、水を注げばご飯になるアルファ米を開発しました。終戦後は平和的利用へ用途を非常食に変更し、多くの自治体で採用されるようになりました。現在は、個人備蓄を増やすため、災害時はもとより、日常のちょっとしたお困り事にも使えるように電子レンジ調理可能な製品まで進化させました。
―アレルギーをはじめ、多様なニーズに対応した商品開発について、お聞かせください。
災害はいつどこで発生するか分からないため、どなたでも安心して召し上がっていただけるように、フード・ダイバーシティを考えた商品づくりを行っています。
例えば、アレルギーがあっても安心・安全に召し上がっていただけるアレルギー対応商品や、日本のグローバル化に対応するためのハラール認証取得商品などがございます。
―非常食を開発し、提供し続ける上で、大切にしている想いについて、お聞かせください。
当社では「誰でも食べられる美味しいごはん。どこにいても、どんな時でも。」という考えを大切にしながら、商品開発を行っております。不安な状況が続く非常時だからこそ、美味しい食事をとり、体も心も満たすことが重要です。今後も、あらゆる場面を想像しながら、様々な方が安心して召し上がれる商品を開発してまいります。
【商品の例】
尾西食品株式会社のHPはこちら>>>
この掲載記事は、本学公衆栄養学研究室の久保彰子准教授とゼミ生の協力を得て作成しました。公衆栄養学研究室では、災害時でも簡単に作れる「パッククッキング」の普及などの地域活動にも取り組んでいます。また、「非常食はいま」の紹介記事は、本学と産学連携協定を締結している尾西食品株式会社にご協力いただきました。
【記事のお問合せ】
学校法人 香川栄養学園 (女子栄養大学)
広報部 学園広報課
TEL 03-3915-3668 E-mail gkoho@eiyo.ac.jp