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女子栄養大学のいま
【学園フォーカス】栄養学の研究成果をやさしく家庭に届ける、雑誌づくりの現場から
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【学園フォーカス】栄養学の研究成果をやさしく家庭に届ける、雑誌づくりの現場から

2022.12.20
月刊誌『栄養と料理』 
編集長 浜岡 さおり(はまおか さおり) 
女子栄養大学出版部 編集課 雑誌担当 
[学園フォーカス08 Dec 2022] 

■2023年で創刊88周年を迎える月刊誌『栄養と料理』
『栄養と料理』は、本学の創立翌々年、昭和10(1935)年に創刊された月刊誌です。戦中・戦後の物資調達などがきびしかった時期も含め、今日に至るまで88年にわたって発刊を継続。栄養学を中心とした知識や季節の料理レシピなど、食生活を豊かにし、家族の健康管理に役立つ情報を「雑誌」という形で家庭にお届けしています。創刊時、学園の講義録だった『栄養と料理』は、時代の変遷とともにテーマやデザインを変え、現在に至ります。これまでの歴史をざっとご紹介しましょう。

■「脚気を防ぐ」戦前・戦中の『栄養と料理』
脚気が国民病といわれた時代。その原因となるビタミンB1欠乏は、医者にかからなくても日常食で防げることを広めるために、掲載記事では胚芽精米の研究成果や食事への応用などが多く語られています。本誌が家庭食養研究会(香川栄養学園の前身)の講義録から始まったこともあり、当時の栄養学や料理の記事は専門的ながら、類書のない中で熱心な読者に支えられ、雑誌が年々育っていくことを「栄養と料理デジタルアーカイブス」から読みとることができます。特に戦時色が表われている昭和20年前後の記事は、戦争の話題が身近な昨今、興味深いものです。国の政情や食糧事情がみるみる変化し、食料が自由に手に入らないときにどう栄養バランスをとるかなど、「不足」を凌ぐための記事が多く、巻頭言や編集後記からも時代の空気が感じとれます。

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▲創刊号(昭和10年6月号)の表紙。「贈呈」と書いてあり非売品。2号目から1冊20銭で販売された。

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▲創立者・香川綾による記事「創刊にあたって」。当時の誌面はスミ1色の活版印刷。

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▲昭和14(1939)年2月号の表紙(画・古澤敏子)。当時、表紙には植物が描かれることが多かったが、この号だけが異色。前年5月に国家総動員法が施行され、昭和14年6月号から昭和19年12月号まで5年半の間、本誌奥付に国内価格とあわせて満州・朝鮮価格が記載されている。

■「家族の栄養を改善し、豊かな食を楽しむ」昭和・戦後の『栄養と料理』
本誌アーカイブスを順に見ていくと、年12回刊行に戻った昭和23(1948)年以降、高度経済成長時代に突入していく様子がよくわかります。昭和26(1951)年からは表紙をはじめとしたデザインがガラリと変わり、誌面もぐっとにぎやかになりますが、「若い人の」「老人の」「子どもの」といったフレーズがよく出てくることから、読者はその間にいる姑的立場の人が多かったのかもしれません。かかわる家族の健康情報やおいしく食べてもらうための調理法に加え、インテリアや家電、着物の着こなし方など、生活を豊かにする情報も。その後、昭和30年代、40年代と海外の食の話題も増えていきますが、昭和49(1974)年1月号の香川綾による巻頭言で、石油ショックの影響が生活に及んでいること、そして地球資源の限界を視野に入れた対策の重要性が説かれているのが印象的です。

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▲昭和26(1951)年1月号の表紙(デザイン:伊藤憲治)。昭和37(1962)年までの11年間、本誌表紙は毎月担当デザイナーが異なり、自由に遊んだ表現がおもしろい。文字に語らせないデザインは時代の流行だったのか、それともロゴと意匠だけで読者が集められる媒体だったのか。背景を知る方がいたらお話を伺ってみたい。

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▲昭和35(1960)年5月号「若い人むきのおもてなし」(料理:江上トミ 撮影:増田松樹または佐伯義勝[記事ごとにクレジットがなく目次にまとめて記載されているため不明)。

■「現代を健康に生きる」平成の『栄養と料理』
平成が始まった1990年代、この時代については私自身も記憶にありますが、本誌も生活習慣病予防を前面に打ち出した内容へと変化していきます。「成人病」が「生活習慣病」と呼び変えられるようになったのが‘96年ごろといわれますが、私はその年に女子栄養大学を卒業し、この職場に入りました。食品安全、健康日本21、ヒトゲノム計画の完了、メタボリックシンドロームや特定保健指導など新しい言葉やしくみが現われ、栄養成分も多岐にわたって分析されるようになってきた時代。個人情報の取り扱いがきびしくなり、科学的根拠が問われるようになる中で、記事の制作過程や表現も変遷してきたように思います。平成は約30年ありますが、デジタルアーカイブスで読める記事は現在、平成7年までです。本学の図書館が管理し、毎年1年分ずつ更新されていますが、平成の記事のほとんどは、まだ紙媒体による保存です。閲覧したい場合は、本学図書館にお問い合わせいただければ幸いです。

■「だれもがおいしく健康に」令和の『栄養と料理』
2000年代以降、共働き世帯が増加の一途をたどり、令和元(2019)年に66.2%※となりました。また高齢化が進み、老老介護やヤングケアラーなどの課題もある中で、手作りレシピだけでなく市販加工食品や外食サービスのじょうずな活用法についても求められるようになりました。家庭では「時短」「簡単」の料理が人気ですが、コロナ禍で「おうちごはん」が流行し、料理に凝る人が増えている一面もあります。雑誌でとり上げる内容はもちろんですが、発信方法も多様化してきました。今や携帯やスマホの保有率が9割を超え、デジタルメディアが台頭する中で、本誌もスマホやタブレット、パソコンで読める「デジタル版」を2015年5月号から開始し、2020年末にホームページをスマホ対応にリニューアル。Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSも活用しながら情報発信を続けています。今後のさらなる発展に向けて、こんな記事が読みたい、こんなサービスがあれば、といったご要望などがあれば、ホームページの「お問い合わせ」や読者アンケートからぜひともお聞かせください。

※厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書」


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▲『栄養と料理』最新号(2023年1月号)。

■『栄養と料理』と学生とのコラボ活動
編集者の仕事は、さまざまなメディアに存在する食や健康の情報を選んだり、目の前にある情報をとらえたりして、それを他者に伝わるように加工することです。本学食文化栄養学科の選択履修項目に「インターンシップ研修」があり、毎年学生がその仕事の体験を希望してやって来ます。2022年は2年生と3年生を1名ずつ引き受け、編集業務に参加してもらいました。新たな試みとして共に立ち上げたのが「栄養と料理プレイバック」と称した「栄養と料理デジタルアーカイブス」を紹介するInstagramのアカウントです。11月から週1回ペースで学生目線の「昭和レトロ」「エモい」記事をピックアップしていますので、こちらもぜひごらんください。

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▲インスタ「栄養と料理プレイバック」より。

▶女子栄養大学出版部HPはこちらから



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