女子栄養大学・女子栄養大学短期大学部
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第 8 回香川芳子学術奨励賞授賞式、受賞講演会

2021 年 10 月 16 日(土)、第 8 回香川芳子学術奨励賞授賞式と受賞講演会が坂戸校舎にて開催されました。

2020 年は新型コロナ禍のため 1 回見送りましたが、収束の兆しが伺えたことから神戸在住の受賞者をお迎えすることができました。当日は対面とオンラインのハイブリッド型開催で教職員と卒業生とし、栄養科学専攻臨床検査学コースの学生たち約 200 名には編集したビデオを後日配信しました。

第 8 回受賞者である小野裕美さんは 1979 年度に栄養学科栄養科学専攻卒業、本課程第 3 回生で、受賞タイトルは「地域の在宅医療において『医と食とこころ』を繋ぐ食からの健康発信の実践」です。授賞式では、香川明夫学長から記念の表彰楯と賞金が授与され、次いで、香川芳子学園長から臨床検査技師コースを本学に導入された経緯と熱い思いをビデオメッセージで拝聴致しました。
小野さんは、卒後、臨床検査技師として就職するもまもなくご結婚を機に退職されました。1995 年阪神・淡路大震災を被られ、何かしなければと言う思いに駆られ、勤務医のご主人様はかかりつけ医になるため開業を、専業主婦のご自身は『株式会社ドクターミール』を神戸三宮に設立され、現在に至ります。今も代表取締役社長を始め、公益社団法人の栄養医学協会の代表ほか様々なお立場でご活躍です。

記念講演は、医師である御父上のお薦めでご入学された経緯から始まり、学部時代や寮生活のエピソード、そして現在のお仕事と両立しながら挑戦された大学院のご様子などをご紹介くださいました。会社の名前の由来は「Dr. が診る」と「食事の meal」で、医と食を繋げた食からの健康発信のポリシーが盛り込まれ、まさに香川綾先生、芳子先生から学ばれた実践栄養学のそのものです。店は栄養クリニックとしての位置づけにあり、強みは医療の一環として病者用食品を用いた食・栄養指導がなされ、エビデンスのある食事にプラス α の補いとしてのサプリメントなど保健機能食品などの正しい取り方も含め、可能な限り医療と実生活を一体化したいと言う思いが詰まっています。驚くことに、病者用食品のインターネット通販を日本で最初に手掛けられ、楽天市場店舗も 25 年経ったそうです。また、香川靖雄先生提唱の葉酸推奨プロジェクトも取り組まれ、未病対策の主役は「食」であり、医師の指示も介入もないからこそ、心まで笑顔や健康になるようにお手伝いができるのは管理栄養士であると強調されました。起業目的のもう一つの思いは、ホスピタリティのあるマルチタスクな栄養士を育て、予防医学の要としての職域の地位を向上させることで、ある意味、究極の接客業を目指しておられます。
時代の流れを汲み、在宅医療の分野にこそ、食の担い手がコアになると考え、7 年前に在宅医療のチーム構築を立ち上げ、ご主人の訪問診療と協同されています。

Nutrition と Nursing を文字って付けた Nu 倶楽部では通所リハビリ利用者中心に独居や食事を作れない方などに向け、ライフスタイルに合わせて現状生活の継続維持のアプローチを食事提供やイベントなども開催される他職種連携融合のサロンもあるそうです。さらに心のサポートも担おうと上智大学グリーフケア研究所でスピリチュアルケアを学ぶに、2 年間通い、臨床傾聴士を取得されました。

小野さんは続けます。「医療機関の NST 栄養サポートチームはあくまで治療で、栄養=食事ではないとし、限りある命をどう生きるかは本人の心の問題、スピリチュアリティである。また人には意思があり、医療の質、内容を選択する自由がある、だからこそ生きている限り命を繋ぐ食の問題は大きい。しかし、在宅医療の診療報酬で算定上困難な面があり依頼件数が少ないのが現状。超高齢社会を迎え、尊厳を持って生きる、命の質を考えること多くなった今、終末期医療の在り方、食べられなくなった時はどうするか、最後の迎え方を考えるに食は重要な判断材料である。だからこそ、知識の発信や治療だけでなく、相手に寄り添う気持ちで食を通じて医と心をコーディネートすることが栄養サポートの基本である。」次なる目標はグリーフケアのある在宅医療 NST、Nutrition & Nursing Spiritual care team の構築、資格認定も考えておられ、在宅医療は先端医療でもあり、最善医療でもあるために新たな役割として、食の分野から実践発信するサポートが重要と訴えます。そして栄養学を学んだ臨床検査技師も多いに活躍することができると道筋を示してくださいました。

医と食に拘れた 26 年間、本校の建学の精神に基づいた強い信念を貫かれ、脈々と湧き出るパワーと常にリカレントされるお姿がとても眩しく映りました。学生たちには、本校で栄養学を学ぶ意義を改めて考え、生と命を尊ぶ機会になったようです。

奨励賞1

奨励賞2