多様化・複雑化する社会課題に、管理栄養士としてどう向き合うか。実践栄養学科では4年次に、卒業後の自身の活動に活かせるよう、食と社会・自然環境とのかかわりを複合的な視点で探求し、管理栄養士の実践活動について考察する「総合講座」を開講し、毎月、様々なトピックスや社会的課題を取り上げています。
学びと教育
[実践栄養学科]総合講座「子どもの貧困の現状と課題」を学ぶ
「子どもの貧困の現状と課題」をテーマに総合講座を開催
10月、「子どもの貧困の現状と課題」と題し、東京都立大学教授の阿部彩先生にご登壇いただきました。
まず、相対的貧困とはどういうことなのか、そして貧困が社会的排除や不利の連鎖へとつながることを正しく理解できるよう説明がありました。「貧困は、その人の『属性』として考えるのではなく、『社会』がどのようにその人を扱っているのかを見るべき」と、重要なメッセージをいただきました。
子どもの貧困が起きている、今の「社会」がどういう社会なのかを学ぶ
年齢階級別、世帯構造別、父母の年齢別、父母の就労状況組合せ別など、複数の具体的なデータを紐解きながら、多様な視点から子どもの貧困の実態を知ることができました。
日本における子どもの貧困の実態を目の当たりにして、学生たちは、子どもの食を「家庭の問題」にとどめることなく、一人の成人として、女性として、また食の専門家となる管理栄養士として、何ができるのか、考え始めていました。
専門職として小さな変化を見逃さない、現状への理解を広げるために声をあげることの大切さを学ぶ
食と貧困についての気づきを、どんなに小さなことでも誰かと情報共有し、必要な場で声をあげ情報発信をすることで社会課題の解決の1歩を踏み出すことが大切であることを学ぶことができました。
受講後の学生さんの学びについて紹介します。
●学生Aさんの学び~日々の観察から小さな変化に気づき、寄り添う~
適切な栄養管理を行なっていくことはもちろん、食に関わる専門職として子どもたちへのケアも大切だと思った。毎日、安全安心で美味しい給食を提供することはもちろん、日々の子どもたちの観察から、身だしなみや表情の変化など小さな異変に気づき寄り添っていきたいと思った。
●学生Bさんの学び~現状を認識できるように管理栄養士として声を上げる必要がある~
学童保育でアルバイトをしている中で、次のことに気づいた。
◎金銭的余裕がない場合は、学童保育の利用料が高いため利用を控える傾向がある
◎学童保育の利用を控える家庭の子どもたちへのアプローチとして今行われているのがフードパントリー等の活動であるが、毎日でなく月に1度程度であることから、あまり充足しているようには思えない。
◎夏休み等の1日保育では、お弁当の持参が叶わす、昼食時に一度帰宅し、家にあるカップ麺などを食べて午後の学童保育に参加する子どもたちがいる。
このような子どもたちへ、夏休みも給食提供のような公的支援があればいいのに、と考えていた。
今回の講義に参加し、個人の活動として出来ることは限られているが、子ども達に直接接する現場で働く管理栄養士として、「こういう子どもたちが現在います。」と発信、会議の場で発言すること、現場にいるからこそわかる実態について声を上げていくことが必要であることが分かった。声を上げることで、時間はかかっても法律や障壁になっていることが変わる可能性があることも事例から学んだ。「日本に貧困で、食べ物が充分に食べられていない子どもはいない」と考えている大人が多いことも分かり、この現状を、まずは人々の考え方から変えていく足がかりとなりたい。