本学教員の研究キーワードは実に多彩です。その中から、まだみんなに知られていない、興味深いキーワードをピックアップしました。学生図書委員による教員インタビューで、研究キーワードを探求していきます。

学びと教育
探求:研究キーワード①「バイオフィルム」

今回のキーワードは、「バイオフィルム」
「バイオフィルム」について、学生図書委員が、中屋祐子先生にお話を伺いました。
バイオフィルムとは、どのようなものでしょうか?

バイオフォルムとは、微生物が、個体の表面にくっついて増殖し、菌体外多糖を産生して膜をはる、この膜状のもののことをいいます。菌体外多糖は、糖の種類や数、結合の仕方によって構造もさまざまです。
抗菌剤や抗生剤に対して耐性を示すのは、なぜでしょうか。
個体の表面で増殖した細菌は、バイオフィルムによって保護されてしまうため、抗菌剤や抗生剤が入り込みにくくなり、耐性を示すことになります。
細菌がバイオフィルムを作り出すのに最適な環境や条件がありますか。
水分は必須ですが、その他は、細菌の種類によってさまざまです。例えば、pHや温度、またプラスチックにくっつきやすい微生物もいれば、ステンレスにくっつきやすい微生物もいます。
一度、形成したバイオフィルムは、自然に壊れないのでしょうか。
なかなか壊れることはありません。いったん形成されると、物理的に除去することが難しく、薬剤に対する抵抗性も高くなってしまいます。

バイオフィルムについて、医療ではどういう問題が起きているのでしょうか。
医療現場では、カテーテルという細い管を体内に入れたままにする(留置する)ことによる感染がみられます。例えば、排尿が困難な患者さんに対して尿道カテーテルを挿入します。この時、腸管常在菌や皮膚常在菌でカテーテルの外側や内側が汚染されてしまう場合があり、カテーテルにバイオフィルムが形成され、感染症を引き起こします。
バイオフィルムの形成は抑制できるのでしょうか。バイオフィルムの弱点があったら、教えてください。
バイオフィルムは私たちの生活環境に広く存在しています。例えば、キッチンのシンク、浴室の床やコーナーのぬるぬるしたぬめりはバイオフィルムです。また、食品工場では肉や魚をカットするスライサーなどの隙間にもバイオフィルムが形成されます。洗浄、消毒を行って清潔にし、十分に乾燥させることで抑制は可能です。一方、体内に挿入された医療器具に形成されるバイオフィルムを除去することは困難です。患者さんの身体を清潔にすることや医療器具を扱う医療従事者の手指を衛生的にし、形成を防ぐことが重要です。
インタビュー ぷらす
微生物学と出会ったきっかけは?
実験が好きで、学生生活課に実験に携われるアルバイト先の紹介をお願いしました。紹介先は感染症関係研究所の細菌部で、アルバイトという立場ながら貴重な経験をさせていただきました。大学で一番興味のあった科目も微生物学で、卒業研究も微生物学研究室を選びました。
微生物学のおもしろさは?
分子生物学が飛躍的に進歩する中で、実際に生物として活動する微生物そのものの姿を自分の眼で見て確かめて、実験できることにおもしろさを感じています。
また、微生物には、感染症のように人間の健康に悪影響を及ぼすものと、醤油やみそなどの発酵のように人間の暮らしに役立つものとがあります。私は、健康に悪影響を及ぼすものをどう予防していくかに関心があり、研究に取り組んでいます。


女子栄養大学・女子栄養大学短期大学部は、2026年4月より共学化に伴い、日本栄養大学・日本栄養大学短期大学部に名称変更いたします。