保健栄養学科栄養イノベーション専攻には、専門的な科目を束ねる3つの領域があります。その一つである栄養データサイエンス領域では、栄養学を軸とするデータサイエンスとテクノロジーについて学びます。新しい技術を使って人々の食生活改善と健康に大きく貢献できる新しい分野で、未来の価値創造やビジネスの起業にもつながります。

栄養イノベーション専攻
栄養×データサイエンスで、未来を創る人へ
「食と栄養のデータサイエンス」とは?
「データサイエンス」を学べる大学はたくさんありますが、本学では、栄養学部で「食と栄養」を軸にしたデータサイエンスを学びます。
では、データサイエンスの知識と技能に栄養学の知識を合わせると、具体的に何ができるのでしょうか。
例えば、本学の食事管理法である四群点数法を使った食事法を実践する場合、一人一人が1日3食の食事記録を1週間とか1か月とかつけます。それをたくさんの人が行うと、それだけで膨大なデータ(ビッグデータ)になります。
結果に「たんぱく質の1日当たりの平均摂取量は80グラム」と出た場合、この数字の意味は、スポーツ選手と一般の人、あるいは病気の人と健康な人で違ってきます。栄養学をしっかり学んだ基礎があるから、栄養のビッグデータを扱えるのです。
栄養学で扱うデータには、栄養素もあれば、食品、朝・昼・夕の食事、食事時間や回数、場所や一緒に食べた人の情報など、いろいろなデータが含まれます。栄養学を学んでいるとそうした生活背景や、対象者の健康状態の特性も理解できるようになり、データ分析の視点が明確になります。ここが大きな特徴です。
こうしたデータを元に栄養教育のアプリやゲームを開発したり、健康に役立つ商品企画を考えたり、地域住民などたくさんの人々の健康を考えた栄養の施策を提案できる栄養士を育成するのが、この栄養データサイエンス領域です。
栄養データサイエンス領域のカリキュラム
1年次と2年次は栄養士資格取得のための科目を中心に学びますが、栄養データサイエンス領域では、情報処理、プログラミングなどの基礎の学修も始まります。
本格的な学修は3年次からです。ビッグデータ活用、社会調査法、栄養疫学データ活用や、機械学習、深層学習の実習などいろいろありますが、これらのカリキュラムは文部科学省が2020年から推奨している「数理・データサイエンス・AIのモデルカリキュラム」に基づいて、栄養学と組み合わせた内容になっています。
在学中に、栄養士資格の他に、国家資格の「ITパスポート」取得をめざした対策講座の科目もあります。「ITパスポート」は、ITに関する基礎的な知識を証明できる国家資格です。
「栄養のデータサイエンティスト」として働く
もともと栄養士の科目には保健や医療の知識もありますので、それらとデータサイエンスの技能を合わせると、卒業後の選択肢は広くなります。
既に社会では、保険証のマイナンバーカードへの移行が始まっています。赤ちゃんの時の乳児健診から成人後、さらには高齢期の健康診断や歯科検診まで、さまざまなデータが集まるようになります。自治体などの行政では、これらのデータと栄養・食生活の調査データを組み合わせて、「地域全体の栄養課題を見つけ、生活習慣病の対策を提案する」というようなこともできます。食品関連企業なら、ターゲット集団の食生活の特徴を明確にしたマーケティングにも活用できます。組織や社会全体を動かす「栄養データサイエンティスト」として、総合職も目指せるでしょう。
栄養の学びを武器に、進化する時代を先取りするなら今!
栄養データサイエンスの領域をさらに深めるため、大学院に進学する道もあります。プログラミングやAIを活用した高度なスキルの修得と、論理的思考と問題解決能力を高めるには、学部4年+修士課程2年間の6年間の学修が理想。就職でも有利ですし、年齢が上がる分、初任給が高くなるので、生涯年収も大きくなります。
ITテクノロジーの進化が著しく、データサイエンスもどんどん進んでいくこれからの時代。世の中に何を価値として提供していくかを問われた時に、栄養学を軸とする本学でしか学べない「栄養データサイエンス」は、大きな強みになると思います。
文系の方にも理系の方にもどちらにも可能性がある分野ですので、是非トライしてください。
お話しを聞いた先生

▲武見 ゆかり 先生
【キーワード】
食環境整備,超加工食品,持続可能な食事,減塩