本学教員の研究キーワードは実に多彩です。その中から、まだみんなに知られていない、興味深いキーワードをピックアップしました。学生図書委員による教員インタビューで、研究キーワードを探究していきます。

学びと教育
探究:研究キーワード③「フェムテック」

今回のキーワードは、「フェムテック」
「フェムテック」について、学生図書委員が、久保田美穂先生にお話を伺いました。
フェムテックとはどのようなものでしょうか? 名前の由来などについて教えてください。

フェムテックとは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた言葉です。月経、妊娠・出産、更年期など、女性の健康課題解決のために、テクノロジーを用いて支援する製品やサービス、解決策を総称してフェムテックと呼んでいます。
2016年に提唱されて、まだ10年ぐらいですので、聞き慣れない人も多いと思います。
おすすめのフェムテック製品にはどういうものがありますか?
中学校での男女共修で行った講習で、男子生徒が一番興味を示したのはデリケートゾーンケア製品でした。思春期は男子も女子もにおいが気になります。
使ってみたことがなければ、いまここで体験してもらえれば。においはどうですか。
―さっぱりしたにおいです。
「明日わたしは柿の木にのぼる」といったユニークな名前の製品で、柿の果皮から抽出した成分が配合されています。
私も実際に使っていますが、ナプキンですれて肌が赤くなるのを防止でき、生理特有のにおいも抑えられます。
この他に、気になる製品はありますか。


―月経カップは、いざ使うとなると勇気がでないかもしれません。
月経カップは、災害時のグッズとして一つ持っておくといいと思います。災害時に使おうと思っても初めてだと難しいので、お試しで使ってみることも大切です。
実際に触ってみると、柔らかさに違いがあることがわかります。最初は柔らかいものから使ってみるといいでしょう。スポーツをやっている人は硬めのものの方が適しています。
サイズも小、中、大とあります。個人差もありますし、練習が必要です。これ一つで1日中使えます。
メモリがついているものもありますから、自分の経血量を知るという意味でも役立ちます。



―吸収ショーツもいろいろありますね。
生理用の吸収ショーツも多い日から少ない日まで対応できる様々なタイプがあります。後ろまで吸収帯があるものは多い日でも安心です。養護教諭になったらジュニア用を子どもたちに紹介してくれたらと思います。
―部活の時とか、良さそうです。
いいと思います。生理がはじまりそうで気がかりな時に使っても安心です。肌にやさしいオーガニックコットン製のものもあります。
フェムテックの正しい情報はどのような場所で手に入れられるでしょうか。
経済産業省、内閣府、厚生労働省など公的機関から出ている情報だったり、信頼できる性教育に関する発信を行っているという点で産婦人科医の書いた本だったり、正しい知識をもとに発信されている情報を入手するようにするのがよいです。
本学では、オープンキャンパスなどで、養護専攻の学びの紹介として、実際の製品や使い方などについての説明を行っています。
どうしてフェムテックが始まったのでしょうか。

なぜ経済産業省がフェムテックを応援しているのかと、不思議に思うかもしれませんね。経済産業省の試算によれば、女性特有の健康課題による社会全体の経済的損失が3.4兆円と示されました。これだけ大きな経済的損失を解決しようと、経済産業省がフェムテックに力を入れ始めました。
フェムテックが普及するのに、障壁はありますか。

▲インタビューを行った教室には、オープンキャンパス用に、思春期から成熟期、更年期別に、様々なフェムテック製品を陳列。オープンキャンパスでは、実際にこうした製品を手に取り、確かめることができます。
なかなか社会に広まっていかない現状があります。その背景には、日本の社会がまだまだ男性社会であること、月経などについて恥ずかしい、話しにくいと感じる人が多いこと、性に関する話題をタブー視する社会的風潮があることなどがあると思います。
女性の健康課題は、女性だけの問題ではないので、性別という枠組みにとらわれずに、家族みんなで、学校のなかで、話し合える環境になればと考えています。
そのために、私たち保健養護学研究室と産婦人科医、現職養護教諭、民間企業との協働で、全国の保健室にフェムテック製品と情報を届ける保健室BOX事業にも取り組んでいます。実物を実際に見てもらうことで、それがコミュニケーションツールとなって、広がっていくことを期待しています。


女子栄養大学・女子栄養大学短期大学部は、2026年4月より共学化に伴い、日本栄養大学・日本栄養大学短期大学部に名称変更いたします。