たんぱく質やオメガ3脂肪酸などの重要な栄養源となる「魚」。本学の食品生産科学研究室では、卒研生や大学院生によって、こうした魚を加工する際に大量に廃棄されてしまう部分を有効に活用するための研究を進めています。
学びと教育
[食品生産科学研究室]卒研生や大学院生の活躍で進む食品開発の基礎研究
日本人の魚の消費量は減っている。世界の消費量は増加傾向
日本の食用魚介類の消費量(1人1年当たり:純食料ベース)については、2001年度の40.2kgをピークに減少傾向にあり、2022年度には22.0kgまで減少しています[図1]。
一方、世界では、その消費量(1人1年当たり:粗食料ベース)が増加傾向にあり、特に魚食習慣のあるアジア地域では、顕著に増加しています[図2]。
[ 図1 ]
資料:農林水産省「食料需給表」をもとに作成
[ 図2 ]
資料:日本を除く主要国・地域データはFAO「FAOSTAT(Food Balance Sheets)」、日本データは農林水産省「食料需給表」をもとに作成
※粗食料とは、廃棄される部分も含んだ食用魚介類の数量
重要な栄養源となる魚だから、その廃棄部分も有効に活用
魚はたんぱく質やEPA、DHAといったオメガ3脂肪酸の重要な栄養源ですが、皮などの部分は廃棄され、十分に利用されていません。食品生産科学研究室では、そうした廃棄部分の有効利用を目的に、健康やおいしさに関連するたんぱく質資源としてコラーゲンやペプチドに着目し、食品機能をはじめとした科学分析に丁寧に取り組んでいます。
▲アカマンボウやブリなどの加工残渣から得られる食品素材(コラーゲン、ペプチド)
海外から日本へ。大学院で食品開発の研究に取り組む留学生たち
日本への関心、そして人々の健康に役立つ食品開発への関心から、本学の大学院を選択し、食品生産科学研究室で研究に取り組む留学生たち。エルウィナ(Erwina)さんとオリビア(Olivia)さんは、西塔教授の指導のもと、大量に廃棄されるミナミマグロの皮からコラーゲンを抽出し、血糖値の上昇を抑制するDPP-IV阻害成分の効果に関する研究を進めています。
エルウィナさんは、母国インドネシアが抱える健康問題の解決に貢献するために、食品開発と食品機能学を学びたいと思い、本学の大学院に入学し、研究に取り組み、今年3月に修士課程を修了しました。そして、現在、修士課程1年に在籍するオリビアさんは、アメリカ出身で、病気を治すよりも栄養で病気を予防することに関心があって、本学の大学院を選び、研究に取り組んでいます。
エルウィナさん(写真中央)とオリビアさん(写真右)。そして仲の良い大学院生の仁科さん(写真左)
卒研生や大学院生の活躍によって、健康や環境に配慮した食品開発の基礎研究が進んでいます。