JOURNAL KAGAWA ヨクシル
人間集団のデータから病気の原因を探る~データは語る~

栄養イノベーション専攻

疫学・生物統計学研究室
緒方裕光 教授

人間集団のデータから病気の原因を探る~データは語る~

生活習慣病の原因を探る

 私たちの中には、特定の病気に罹る人もいれば罹らない人もいます。そのような違いはどこから生まれるのでしょうか。とくに「生活習慣病」といわれる病気には食生活や栄養の問題を含めて多くの原因が関係しています。たった一つの原因が1つの生活習慣病をもたらすという状況はほとんどありません。つまり、複数の要因が複雑に関係しあって生活習慣病の原因になっていることを意味しています。そのような複数の原因のことを「危険因子」といいます。生活習慣病の予防のためにはこのような危険因子のことをよく知っておく必要があります。危険因子を探るためにはいくつかの方法がありますが、人間集団に関する直接的な証拠を得るための方法が「疫学」と呼ばれる学問です。疫学では、人間集団のデータについて、統計学的な方法を使って危険因子を探ります。

疫学と統計学で生活習慣病に挑む

 人間は一人一人異なる特徴を持っています。例えば、年齢、性別、体格、健康状態、生活習慣、環境、遺伝、性格などまちまちで、これらの要因が絡み合っていて、生活習慣病に至る過程は非常に複雑です。しかし、一人一人を見ていても見つからないような危険因子も、集団のデータを統計的に解析することで、集団の中に存在する何らかの規則性を見つけることできます。疫学と統計学は人間集団における規則性を発見するための方法として大きな武器の1つとなるものです。

先生からヒトコト

データを適切な方法で分析することで、データが伝えようとする「何か」が見えてきます。統計学を駆使したデータ解析を通じて複雑な人間集団の現象の解明に迫ってみましょう。