令和2年度 食文化栄養学実習

平野覚堂ゼミ■ビジュアル・コミュニケーション研究室


食べる物語
─感情に対する味のイメージを表現する─


 例えば、白米は人と人とのつながりや温もりを感じさせたり、甘くて爽やかなクリームソーダはどこか懐かしい青春の気分を思い出させたりする。そんな経験はないだろうか。定義があるわけではないのに、何故だか味や料理に対する感情のイメージが出来上がってしまっている。私は、そのような料理×感情のイメージはどこからやってくるのか探ってみたいと思い、映画や小説の食のシーンにフォーカスを当てた。「お米を一緒に研ぎながらだんだんと大人に心を許すようになる子供」「沈没した町を眺めながら食べたインスタント麺」など、物語の中での食事シーンは、その人の心の内を表現したり大切な役割を担っていることが多い。何気なく現れる食や料理の中に、様々な意図や感情が演出されている。食事シーンを、繊細な人間の心情や関係性を印象的に残すための表現として使う監督や執筆者も少なくないだろう。そして、私たちが普段抱く食に対する感情のイメージは、生きてきた中で目にしてきた、このような食事シーンから植えつけられたものも多くあるだろうと考察した。今回の発表では、調査して得た気づきを元に、感情を連想させるような食について料理と言葉で表現する。「恋人と帰路につくために別れた瞬間の寂しさ」「両親に対する感謝の気持ち」「何もかもが上手くいかない時の自暴自棄」「明日が楽しみで仕方ない時のワクワク感」の4 つの感情をピックアップした。これを聞いて、まずどんな味や食が頭に浮かぶだろうか。実際にそれぞれの感情を思い浮かべられるような、ふとどこかでその味を思い出せるような、そんな料理を作成し、それを食すシーンを想定した文章を書いた。それらを合わせて、" 食べる感情" とは何なのか、その答えを追求する。