令和2年度 食文化栄養学実習

平野覚堂ゼミ■ビジュアル・コミュニケーション研究室


虚構菓子
─シナリオ×お菓子=トキメキ─


 「表現の世界で遊びたい。」
 突然だが、私は本が好きだ。本の魅力とは、自分の全く知らない世界や人生を体験できることにある。本の中の世界では、私は王様にもなれるし、殺人者にも大泥棒にもなれる。動物と意思の疎通ができたり、魔法が使えたり、違う時空に飛び越えることも可能だ。そんな虚構の物語の数々は、私を強く惹きつけてやまなかった。その一方で、本を始めとして、私の大好きな表現の世界は独特の空気があり他者からの理解を得にくい。アート、小説、漫画、音楽。芸術と日常の距離が時に遠く感じてしまうのは、それらが娯楽・非日常的だからかもしれない。
 “表現の世界を少しでも近づけることができたら。” “自分の中の世界観を他者にもうまく伝えることができたら。”そこで結びついたのが「虚構×食」である。表現が「食」に寄った途端、日常とぐっと距離が近くなる。きっとそれは、「食」が私たちの日常の中でも欠かすことのできない、必要不可欠なものだからだ。食の前ではみんな平等に、「おもしろい」とか「美味しい」とかシンプルに素直な感覚で楽しむことができる。そんな食の持つ、人と人をつなぐ力を使って、物語と食が織りなす作品を手掛けていこうと考えた。今実習で「食」の中でも「お菓子」に焦点を置いたのは、お菓子の持つ柔軟性の高さはもちろんだが、何より「今までのお菓子の世界になかったものを作りたい」という思いがあったためである。物語とお菓子が揃って初めて一つの作品となるような、新しい試みに挑戦するつもりだ。本発表では、新たに考えた虚構の物語とそのお菓子たちを紹介、堪能していただく。さあ、貴方も一緒に溺れてみませんか?トキメキがいっぱいの虚構菓子の世界にようこそ。