令和2年度 食文化栄養学実習

平野覚堂ゼミ■ビジュアル・コミュニケーション研究室


干菓子を日常に
─吹き寄せと一緒に四季を感じる─


 和菓子の和は「日本」の和であり「和む」の和。四季を感じ、日本人の心を表現し、人の心を和ませるものが和菓子だ。日本全国にさまざまな和菓子があり、その一つひとつの色や形、味、銘にその土地の風土も豊かな感性も詰まっている。茶菓子といえばチョコ?洋菓子?おせんべい?沢山のお菓子があるなか干菓子を選ぶ人はいるのだろうか、もう少し日常で干菓子を食べる機会が増えたらいいのに。四季と一緒に寄り添う干菓子を日常のお茶菓子として味わい、四季を感じつつ和菓子は生菓子だけではなく干菓子もあること、その干菓子と半生菓子の種類も知ってほしい。
 そして干菓子を知ってもらうために吹き寄せを作ることにした。吹き寄せとは干菓子を何種類も取り合わせたものである。関東は小さなせんべいや昆布などを、関西では、色づいた木の葉などをかたどった落雁・雲平・有平糖などを取り合わせたものをいうことが多く、さまざまな木の葉が風でひとところに吹き寄せられるさまに見立てたものだ。本来吹き寄せは秋のイメージが多いが秋だけではなく冬も作成する。
 それぞれ題は「秋は夕暮れ」「冬はつとめて」である。紫式部の枕草子の言葉を借りて。作品通りの秋は夕暮れが一番というわけではなく秋、冬の情景をまとめて表した言葉として使用した。既存の干菓子のレシピを元にアレンジを加え食感、色、甘さの組み合わせを考えた。また上記に記載した関西、関東と地域別々の干菓子ではなく混合した吹き寄せである。
 人はどんな時に季節を意識するのだろう。私は日常で四季の移ろいをしみじみ感じるときが少なくなってきているように思う。夏には柑橘味、冬にはいちご味とお茶菓子の味で季節を感じるのではなく、四季と一緒に寄り添う干菓子を日常のお茶菓子として味わいたい。