令和2年度 食文化栄養学実習

平野覚堂ゼミ■ビジュアル・コミュニケーション研究室


きらいなわがし


 私は祖父から約50年続く和菓子屋の娘。幼いころからお店番をしていて常連さんからは看板娘なんて呼ばれたりもする。しかし、私は和菓子が嫌い。もちもち、べたべた、パサパサ、とにかく食感が嫌い。また客観的に見て近年の和菓子離れは深刻であり、和菓子屋が次々に閉店している。子供や同世代の人の「和菓子が嫌い」「あんこが嫌い」という言葉も店頭でよく耳にする。そこで、もしかしたら和菓子にマイナスイメージのある私でも食べられる和菓子を作ったら、同じような苦手意識を持っている人にも「食べてみようかな」と思ってもらえるのでは、と思い、この実習を始めた。
 コロナウイルスの影響で職を無くした私は4月から見習いとして実家の和菓子屋で働き始めた。仕事内容は大きく分けて接客と製造。今までも接客はしたことあったが、長期間にわたって働くことはなかった。この約8か月で多くのことを学んだ。簡単そうにやっていたお団子のあんこ付けが全然つかなかったり、幼い子供はお団子よりもすあまが好きだったり。何回もやることで体が覚え、今ではお団子のあんこ付けもお手の物、お饅頭も包めるようになった。そして和菓子屋の日常を伝えるためにインスタグラムのアカウント(@kirainawagashi)を開設し、情報発信にも力を入れた。基礎を学びながら「わがしが嫌いな私だからこそ、作れるわがしを。わがしが嫌いな人でも食べてみたいと思えるようなわがしを」をテーマに作品を制作した。中間報告では、寒天の食感が苦手、羊羹の甘さが苦手の2つに着目し、五月・六月が旬の果物を使うことを条件とした「杏羹」「甘夏羹」を考えた。甘夏羹は販売するために改良を重ね、「そうらい」として実際に8月から約1 か月半店頭で販売した。本発表では「杏羹」「甘夏羹」に加え、2つ製作し、1つは実際に店頭で販売している。