令和2年度 食文化栄養学実習

高橋勝美ゼミ■地域食産業学研究室


深海魚を食べよう


 深海魚はグロテスクで、とても食べられないと思っていた。しかし、漁獲量の減少により、元来未利用魚として処分されていた深海魚が今、大変注目される食材になっているということを知り、深海魚の食材としての可能性について興味をもった。
 実際に食べてみると深海魚は美味であった。それは体の仕組みによるものである。深海魚は、体のなかに気体が入りにくい構造となっている。(気体が水圧に負けると潰れてしまう。)従って海中を上下動する際、通常の魚は浮き袋(空気)を使うが、深海魚は体内の脂を使うため、浮き袋の代わりに脂を蓄えている。そのため、食べると「脂が乗っていておいしい。」となるのである。
 日本有数の深海魚の漁獲高を誇る沼津港を訪れた。沼津港は日本で最も深い駿河湾に面しているため、深海の海流が上に向かって流れてくる。その海流に乗って深海魚が巻き上げられ、沼津港では深海魚が多く獲れるのである。
 沼津での一般家庭における深海魚の食べ方や調理方法を沼津の魚市場の方に伺い、自分で調理し、試食してみた。その日沼津港にあがって市場に並んでいたのは、ヒゲダラ(ヨロイイタチウオ)とアカカサゴであった。大変低価格であり驚いた。両方とも小さな魚で水分が多く身が柔らかく裁くのは大変であった。深海魚のイメージとは違い、油はのっていなかったが、臭みも、癖もなく美味であった。
 これらの魚のように高級魚とされているもの以外で、一般家庭で食べられるようにならなければ深海魚の消費、市場価値はなかなか上がってこない。まだまだ一般には知られていない深海魚の色々な価値を見いだし、どのような方法で広く多くの人が気軽に深海魚を食べられるようになるのかを考えたい。