令和2年度 食文化栄養学実習

高橋勝美ゼミ■地域食産業学研究室


伝統野菜「糠塚きゅうり」
~伝統野菜で地域活性化~


 私の地元である青森県八戸市(はちのへし)には、糠塚(ぬかづか)地区を中心に育てられている伝統野菜の「糠塚きゅうり」がある。昭和30 年代頃まで、八戸市できゅうりと言えば糠塚きゅうりを指すほど身近な野菜であったが、料理に使いやすい一般的なきゅうりの登場や収穫翌日には変色し見栄えが悪くなるといった理由から販売業者が敬遠し、生産者が減少した。また、近くに植えた他品種のきゅうりと自然交配してしまうという扱いの難しさから、種子そのものがなくなりかけていた。このような背景があることを初めて知り、糠塚きゅうりを通じて地元の活性化につながる活動をしていきたいと考えた。
 地元での流通状況を知るため、地元密着型のスーパーや直売所などで陳列状況の調査を行った。その際、売り場担当者のお話から、地元野菜を応援しているが生産者が少ないことに加え高齢化・後継者不足による収穫量・流通量が得られないという課題が挙げられた。
 生産場所による出来栄えの差の比較のため、八戸市農林水産部農業振興センターと女子栄養大学農園の管理者の協力のもと本学農園にて糠塚きゅうりの栽培を行った。8月にゼミ生中心に農園と八戸の実家の庭で栽培したものの試食会を行った。その結果、八戸の実家栽培のものよりも農園栽培の方が苦味が極めて強いことがわかった。また、八戸で販売されているものと農園栽培のものを比較しても同様の結果だった。そこで、八戸で栽培されたものを用いて糠塚きゅうりの独特の風味を活かしたレシピを考案した。
 今回の活動を通して新たな八戸の特産物を知ることができた。糠塚きゅうりを市民に広く普及し生産を守っていくためには、多くの市民の目に触れる場所にリーフレットなどの媒体を置くなどすることでおいしさと生産・流通の現状を伝えていくことが重要である。また、生産・流通に携わる人の連携も重要である。