令和2年度 食文化栄養学実習

高島美和ゼミ■英語圏文化研究室


文豪たちの食卓
~小説と食事、時々お酒~


 「文豪」―それは近代に新たな文学や思想を生み出し、世に大きな影響をもたらした非常に優れた文学者に与えられる称号のようなもの。夏目漱石や芥川龍之介、太宰治といった現代でも作品が残る作家は「文豪」と呼ばれる。
 後世に残る作品を生み出した文豪たちのその偉大さは、まるで遥か彼方の存在のように感じられるが、彼らも私たちと同じ人間であることに変わりない。食べていかなければ生きていくことはできないし、非常に優れた作家と言われても、良い生活を送っていたかというとそういうわけでもない。むしろ厳しい生活を送っていた文豪たちは多い。そういった生活の中で書かれた作品には彼らの食への考え方が表れているかもしれない。そう考えた私は小説から彼らの食への関心を考察することにした。
 このテーマのきっかけとなったのが、文豪たちを主役とした漫画やゲームが人気を集めていると感じたためだ。それらの作品の中では、本人の姿とは全く異なる姿や個性を持っていることがほとんどだが、その容姿の良さからキャラクターを好きになり、実際に本人の作品を読む人もいるという。しかし、そういった人たちの脳裏にあるのはキャラクターの姿の文豪だろう。私はそれがもったいないと感じる。キャラクターはあくまで漫画の世界に合わせたイメージであり、現実の文豪とは異なっている。例えば、『人間失格』で有名な太宰は現実でもお酒が好きでいつも持ち歩いていたという。『吾輩は猫である』で有名な夏目は胃腸が弱いにも関わらず甘い物やこってりしたものが好きだった。
 キャラクターだけに留めることなく、実際の文豪たちがどんな人物で、どんな生活を送っていたのか。それらを食の視点から掘り下げていくことで、より文豪たちを知っていくきっかけになればと思う。