令和8年9月12日(土)14時より、令和8年度第2回「専門家講座」がオンラインで開催され、後日オンデマンド配信されました。
講師の小佛先生は、JA愛知県厚生連海南病院 栄養科に約20年勤務されました。在職中は、病院増改築と厨房リニューアルを契機に最新の新調理システムや病棟サテライト方式を採用すると共に、職場環境の改善やスタッフの意識改革にも注力され、同院の給食を「給食」からホスピタリテイーあふれる「食事サービス」へと進化させました。同時に質の高い栄養サポートを実現するなどの成果を挙げ、海南病院の取り組みは、病院給食の成功モデルとして全国から注目を集め延べ500施設以上の見学者が訪れたとのことです。
現在は、医療・福祉施設へのセントラルキッチンや新調理システム導入と運営サポートを中心とした給食業務運営システム改善コンサルティングに従事するほか、各地でのセミナー講師等を務めていらっしゃいます。

小佛 和行先生
小佛先生には献立作成から考える給食経営改善と業務効率化について、先生の豊富な経験と成功事例を踏まえ、主に医療におけるフードサービスの視点からご講演をいただきました。はじめにメインテーマの給食経営における献立作成を理解するために、給食経営を取り巻く現状から講演が進められました
病院の給食経営を取り巻く環境としては、医療制度改革、診療報酬改定により給食部門の収支が悪化する中、臨床栄養管理の求められる水準が高くなると同時に、食材費、人件費、エネルギー費の低減が求められているという複雑な構造があります。病院の給食部門の赤字につながっている入院時食事療養費制度の変遷、コストの上昇、収支の現状についてはデータを提示くださいました。
病院の給食は、食事サービスが不安定、食中毒の危険性、深刻な人手不足、給食収支の大幅赤字の中に多重苦の課題が存在しています。課題克服のための給食業務改革の方向性のモデルを提示されましたが。給食経営改善のためには業務効率化が必要であり、そのための対策として給食システム革新を位置づけることができますが、献立はその柱となります。
献立作成は給食経営の柱であることから、経営指標をみていくことが重要であることです。病院給食では製造販売価格が1食730円と決まった中で原価を構成する費用を管理しなければなりません。その中で直接材料費、直接労務費、直接経費が献立作成の鍵となっています。
「FLコスト」とは食材料費(F:Food)と人件費(L:Labor)のことで、そこには目標設定が重要です。セントラルキッチンシステムの目標にはなりますが、構成比率はFが30~35%以内、Lが40~45%以内、両者を合わせたFL比率が70~80%以内が参考数値になること。さらにFL比率の目標管理だけでなく、収益計画、利益目標の設定なども経営の視点から重要であることが述べられました。
メインテーマとなる献立作成の考え方ですが、今回紹介する献立作成の考え方は、先生独自のもので参考に聞いていただきたいと始められました。
給食を運営及び経営管理するための基本条件として、献立構成&内容を表のように整理されています。
そのうえで献立作成の留意点を次のように挙げられました。
まず食事サービス理念・コンセプト、運用の基本条件に沿った献立作成を目指す。ここで理念・コンセプトを持たない施設があることが問題だと指摘されていました。
具体的なコンセプトとしてサイクル、品数、温冷菜の組み合わせ構成の定型化、麺,丼などのサイクル頻度、3食の栄養比率とボリューム、主菜・副菜ごとの質量、使用食器、1食&1日当たりの献立原価を挙げられました。
さらに献立作成における留意点、ポイントとなる事項として、食事箋・食品構成は医師等の理解と協力を得て最大限シンプル化を図る。献立内容や料理を見直すうえで、嗜好調査や喫食率調査などの結果を有効に活用する。調理工程数・作業量(時間・人手)のばらつきを少なくしオペレーションの平準化と安定化。サイクル日数やパターンで「献立類型パターン」を検討・整理し、再現性の高い献立を確立する。3食、曜日別などの食数動態を考慮して献立原価の抑制を図る。病院食はモデル食として、家庭で実践可能であり原価の設定に関しては十分な検討をすることを挙げられました。
「献立類型パターン」とは、朝昼夕の3食別に主食、主菜、副菜、汁物等の区分別の料理の食材の種類、調理法別のパターンで、具体的な料理の栄養価、原価を確認してサイクル化していきます。献立の原価管理をしていく上には、献立類型パターンの料理区分や食材の種類別のコストや構成比率を確認しますが、献立マスターの理論原価でなく、廃棄や食数変動等で生じるロスを含めた実際原価での管理も重要となります。
食材費の参考として、2024年の家計調査、国民生活基本調査による食費が1日食あたり約559円、1回食当たり役186円であるとの紹介がありました。これは、病院食を家庭で実践できるモデル食とするための重要な情報となります。
食材料費の改善課題としては、次のような8ポイントをあげられました。①食材費の把握と総合的分析。②食材費を増減させる要因となる業務のシステム化。③1食当たり原価の把握分析。④献立の食材費を給食経営ベースで確認。⑤食材費の削減ポイントの把握。⑥使用食材アイテムの標準化、共通化。⑦献立の位置づけを関係者へ周知。⑧食事基準(約束食事箋)の標準化、共通化。
次に人件費率の改善課題について解説をいただきました。給食事業は専門職集団の人的産業(マンパワー)であるにもかかわらず、人材不足が課題となっている。そのためには人材の育成が必須であり、職場環境、教育・研修制度の整備、評価方法と給与体系の改善など辞めない職場作りが重要であるとの提言がありました。離職者が少ないことが経営効果にもつながることになります。
献立作成における人件費の管理は今回の講義のテーマでもあります。そこで、献立類型パターンにおける調理工程別作業ボリュームの整理を提言いただきました。料理別に仕込み・調理・パッキング・盛り付けの作業量と機器使用状況を料理マスターとして整理し、1サイクルの献立類型パターンの中に情報として入れ込むことで、日別、献立区分別に作業ボリュームを整理することができます。それぞれの工程に人手をどれくらい要するか(人件費がいくらかかるか)が確認できるばかりでなく、人員配置の無理や無駄を確認することができます。人手を多く必要とする作業量の多い献立は、コストのかかる献立であることが理解できました。サイクルメニューの修正も献立類型パターンはそのままに、料理の入れ替えを行うことで、献立作成業務の効率化につながります。
給食の経営環境が厳しさを増す中、新調理システム導入などの改善策もあるが、献立作成業務との関連から、日常業務や経営意識向上が重要であることをご教示いただきました。また、給食の献立は一般の外食を目指してはいけない。家庭食のモデルとなるシンプルなものでなければならないという先生の提言は深く受け止めるべきと感じました。献立作成を給食経営改善と業務効率化にどのようにつなげたらよいか、具体的な数値や手法を提示いただき、示唆に富んだ刺激的な講演内容となりました。
取材・報告/香友会広報部