香友会会長 磯田 厚子〔女子栄養大学 学部昭和47年卒・大学院修士昭和49年修了〕
今年も無事にホームカミングデーと全国支部長会をおこなうことが出来ました。詳しい内容は、学園HPとリンクしている「WEB版香窓」(10月末配信)の香友会のページに掲載しますので、ご覧いただけたらと存じます。
全国支部長会は、オンラインと対面の併用で開催し、支部から全部で49人の参加がありました。学園の卒業生が西日本で大きく減少していることから、同地域での支部活動の担い手の減少が課題として挙げられました。都道府県ごとの支部ではなく近隣支部と共に地域ブロックとして活動する仕組みもあります。交通ルートによっては現行の区分けでは不便であるブロックの指摘もあり、より有意義な交流や活動ができるための改善をしたいと思います。
さて、6月以来、暑い日が続く毎日です。気象庁の統計によると、35℃を超える猛暑日が東京では、1880年から1940年前頃までは年間ほぼ1日程度でしたが、今年は8月末時点で25日にも及んでいます。名古屋や京都はさらに多く、今後さらに記録更新されるでしょう。
この半年、コメ不足やコメ価格高騰が深刻化しました。原因は、当初、流通の目詰まりと言われましたが、生産量自体が把握されていたより少量だったのが主原因と言われるようになりました。収穫量が生産調整で需要ぎりぎりだったという問題に加えて、高温障害によるコメの品質や歩留まり低下などにより主食用コメ流通量が不足したという問題が指摘されています。同様に、野菜栽培や畜産、また漁業への影響も大きく、食料生産全般への温暖化の脅威が年々激化しています。
食料不足や物価高により、子どもや高齢者、社会的弱者の間での栄養不足や栄養失調が懸念されます。気温が、人間の体温に近いほど高くなっていることだけでも、健康への影響が大きいと言えます。国連のグテーレス事務総長は、2023年7月の記者会見で「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と述べ、全ての当事者が化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を加速させねばならないと提言しています。
日本は、従来、四季のある豊かな自然を享受してきました。これが四季折々の食材を生かし、また地域性豊かな食文化を育んできたとも言えます。世界に誇れる良い栄養状態や長寿を実現できたのも、医療や教育の成果ももちろんですが、温暖で豊かな自然も大きな役割を果たしてきたのではないかと思います。
個人的な体験で恐縮ですが、私は30歳代後半から40歳代初めにかけて国際協力の仕事で途上国に駐在していました。半砂漠気候のソマリアは、ほぼ1年中雨の降らない灼熱の遊牧民の国でした。いわゆる野菜はほぼ食べず、というか栽培も困難で、ミルクと畜肉と雑穀が主な食材でした。次に着任した東南アジアのラオスは、もち米が主食の貧困国でしたが、豊かな森林や河川からの野草山菜、昆虫や魚などが主食に彩を添えていました。それぞれ過酷な自然や経済状況の国でしたが、自然環境の恵みを何とか生かした食料確保をしていたと思います。伝統食に豊かさと合理性があると実感したものです。しかし、こんな気候変動の中で彼らの食事も困難になっているものと思います。
香友会の活動でも、市民講座の支部とのコラボ企画で郷土料理の紹介をしてきていますが、今再び、地域食材や伝統料理に光を当てる必要があると思いました。加えて変わりゆく新たな環境を視野に入れた工夫を創り出していく必要があるのかも知れません。
2025年8月記