令和7年12月6日(土)14時より、令和7年度第3回「専門家講座」がオンラインにて開催されました。講師は福岡秀興先生(千葉大学予防医学研究センター客員教授/早稲田大学ナノライフ創新研究機構/福島医大特別研究員/日本DOHaD学会名誉理事長)です。講座の様子は後日オンデマンドでも配信されました。


福岡 秀興 先生
日本では生活習慣病が増加しており、医療費の増大は大きな社会問題となっています。今回のテーマであるDOHaD( Developmental Origins of Health and Disease /以下ドーハッド)説は生活習慣病発症リスクを下げる重要な考え方として注目されています。
ドーハッド説では生活習慣病発症のリスクは妊娠前・妊娠中・乳幼児期に決まるとしています。生活習慣病の素因は受精時、胎芽・胎児期に遺伝子と環境(栄養・ストレス・環境化学物質等)との相互関連で形成され、その素因に乳幼児期・小児期にマイナス生活習慣が負荷される事で発症すると考えます。疾病はこの二段階を経て発症し、素因はエピジェネティクス変化(遺伝子の働きを調節するメカニズムの変化)であり、エピジェネティクス変化は世代を超えて存続する事もわかっています。また現在ではエピジェネティクス変化が起こってもこれを元に戻す研究が世界中で広くおこなわれているということです。
講演では、低体重児として生まれた場合に将来的にどのような疾病リスクがあるかを疫学調査等のデータで明かし、日本での現状を見つつ、生活習慣病発症予防の考え方を解説していただきました。
出生体重が小さかった人の死亡率が高い(疾病を起こしやすい)という研究結果はイギリスで初めて発表されました。その後、ドーハッド説を裏付ける多くの研究が発表されています。日本でも国立成育医療センターのプレスリリースで、心血管疾患罹患率は出生体重3kg台と比べて低出生体重児(2.5㎏未満)は1.25 倍、極低出生体重児(1.5㎏未満)は1.76 倍多く、低出生体重で生まれる事は心血管疾患や生活習慣病リスクを増加させるという結果が発表されています。これらの研究は出生時体重がその人の将来の疾病リスクを左右する事を示しています。現在では出生体重低下児で生じやすい疾患もわかってきています(NCDs/non-communicable diseases)。
日本の現状をみると、低体重児の頻度は2006年から9.6%程度の高い数値が続いています。低体重児が生まれる要因はいろいろありますが、日本では「瘦せ願望」も大きな要因となっており、実際に20代女性の推定エネルギー必要量は1950㎉ (日本人の食事摂取基準2025) ですが、「国民健康・栄養調査」によるとはるかに低い1600㎉程度しか摂取していないというデータが紹介されました。現状を知った上で生活習慣病リスクを減らす方法を解説していただきました。
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1 妊娠前 プレコンセプションケア 2 妊娠中 適切な栄養とケア(含;精神的) |
ドーハッド説を通して生活習慣病予防を考える時、妊娠前からの「栄養」が深く関わっており、管理栄養士や栄養士の果たすべき役割はなおいっそう重いと改めて実感しました。
取材・報告/香友会広報部