香友会主催講座・講習会
令和6年度第3回「専門家講座」開催報告

テーマ:日本人の食事摂取基準2025年版 改訂、活用のポイント

講 師:上西 一弘先生(女子栄養大学 栄養生理学研究室教授)

 

 令和7年1月13日(日)13時30分、令和6年度第3回専門家講座がオンラインにて開催されました。ライブ配信の参加者は96名で、後日オンデマンドでも配信されました。
 テーマは「日本人の食事摂取基準2025年版 改訂、活用のポイント」。2024年10月11日に厚生労働省より公表された日本人の食事摂取基準2025年版。ワーキンググループメンバーでもある上西教授より改訂のポイントそしてその活用に関して、丁寧に講義いただきました。資料にはページが記載されていて、重要な部分を後日見直すにも大変利用しやすくなっていました。
 はじめに、「食事摂取基準とは何か」=「何(栄養素)をどれだけ食べれば良いかを国が示した重要なガイドライン」であることの説明がありました。食事摂取基準の利用には、その栄養素を食品に展開することが大切であること。目的は「健康寿命の延伸のため」であること。食事摂取基準は、健康・栄養政策の動向を踏まえた内容となっていることなど、歴史を説明いただきながらお話されました。
 2025年版について説明のあった、具体的な事項や変更点を箇条書きにて記述しました。厚生労働省ホームページより、確認してください。(P=報告書のページです)

  • 総論をしっかり読むことが大切。
  • 総論の策定方針には、骨粗鬆症の記述が追加された。生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病)及び生活機能の維持・向上に係る疾患(骨粗鬆症)等とエネルギー・栄養素との関連として、骨粗鬆症が加えられたことが大きな変更点。
  • 総論の対象とする個人及び集団の範囲に、フレイルに関する内容が記載、読んでおくこと。
  • アルコールに関しては、エネルギー産生栄養素バランスの章で触れている。
  • 食事摂取基準の各指標を理解するための概念図は最も大切なイラスト(おふろカーブ)。横軸の習慣的な摂取量という言葉が最も大事な言葉。しっかり確認しておくこと。
  • 栄養素の指標の説明。P14の基準を策定した栄養素と指標で、a.b.cに変更点が記載されている。
  • 改訂のポイント
    1. 「骨粗鬆症」の記述はP403。P464のイラストを確認すること。
    2. 「炭水化物の記載内容」は129ページ。炭水化物の分類。
      食物繊維はP134、136。食物繊維の測定方法が変更(プロスキー法食品成分表7訂→AOAC.2011.25法食品成分表8訂)。食品成分表7訂と8訂で大きく異なる。男性30歳から74歳および女性65歳から74歳で食物繊維の摂取目標量は、1g増加している。
      糖類についてはP130,131に記載されている。アルコールはP146。
    3. ビタミンの策定方法の再検討 P186からP220。脂溶性ビタミン、水溶性ビタミンB1,B12、Cに関して、少し低めな数値となっている。ビタミンB12に関してはエビデンスが弱いため、目安量に変更となっている。
    4. その他  
      ナトリウム(食塩):目標量は変更無しだが、P249に重要なメッセージが記載されている。
      鉄:P286、吸収率を考慮して推定平均必要量を算定している。P298に重要メッセージ。耐容上限量が削除された(P295-P296)。
      エネルギー:BMIの範囲P57-58、P62。
      身体活動レベル:I・Ⅱ・Ⅲから低い・普通・高いに変更。P67―68。P79概要を読む。
      たんぱく質:必要量P89-92、P89。課題として必要量は1.2g/kgの方が良いのではないか。フレイル・サルコペニアとの関係P94-95。P97の概要を読んでおく。
      脂質:策定方法は変更無し。P104飽和脂肪酸の目標量を算定。エネルギー比P127。どういう食品に含まれているのか、具体的に紹介していくことが大切。P121の概要をしっかり読むこと。

     最後に食事摂取基準の活用についてのお話でした。P23食事摂取基準とPDCAサイクルの図、P25の食事評価の概要より、PDCAサイクルを回していくこと。また、P53食品成分表の利用として、7訂と8訂はエネルギー量の測定方法による違いである。エネルギー摂取量が変化しているのではない。7訂と8訂のエネルギー違いを普段の献立で、一度確認しておくのが良い。P33-34調理損耗に関して、実際に口に入るものを想定する。調理中に生じる栄養素の変化も考慮すること。
     今後の食事摂取基準は、5年ごとの改訂だったが、今後は社会背景の変化や最新の科学的知見、諸外国の動向など踏まえて、必要な時機を逃さず見直し作業を行っていくことも検討された。5年ごとの見直しも変わっていくかもしれない。
     食事摂取基準の冊子版は今まで通り第一出版から発売される予定だが、3月女子栄養大学出版部からも新たに出版される予定となっている。手元において上手に利用してほしい。
     最後に先生からのメッセージ
    「報告書、特に総論は必ず読んで欲しい。変更点は重要、変わらなかった点も重要」
    3時間をかけて、じっくり食事摂取基準2025年版の変更点そして上手な活用の仕方を講義いただきました。講義をうけただけで、なんとなく分かった気持ちになりましたが、先生がいわれるように、総論そして重要な図表など、冊子を手元において確認し、今後の業務に役立てたいと思いました。


     〔取材 香友会広報部〕