香友会主催講座・講習会
令和5年度第4回「専門家講座」開催報告

テーマ:
栄養施策の動向 -健康日本21(第三次)を中心に-

講 師:齋藤 陽子先生(厚生労働省健康・生活衛生局健康課栄養指導室 室長補佐)

  令和5年度第4回専門家講座は、令和6年3月9日(土)にオンラインライブ配信で開催され、後日オンデマンドでも配信されました。

 講師の齋藤先生は、女子栄養大学大学院栄養学研究科栄養学専攻修士課程修了、女子栄養大学大学院栄養学研究科栄養学専攻後期博士課程入学と、学生時代のみならず現在までも女子栄養大学関係の様々な方にたくさん支えられて仕事が出来ていると自己紹介されました。

 令和6年4月より第5次国民の健康づくり「健康日本21(第三次)」が始まります。健康日本 21では我が国の将来推計を見据えて、第二次の最終評価をし、その課題等を踏まえ、時期プランのビジョンが作られてきました。第三次の栄養施策の動向や食環境整備の重要性、また第三次を進めていくにあたり多様な主体や他部署との連携をしていく必要性があること等、ご講義いただきました。

≪内容≫

我が国の高齢化の推移と将来推計
 総人口は減少傾向。高齢化率は、2065年には2.6人に1人が65歳以上(4人に1人が75歳以上)。死亡率の疾病の推移では生活習慣病が右上がり。生活習慣病の死亡数割合は全体の約5割を占め、生活習慣病にかかる医療費10兆円は一般診療医療費の約3割に相当。要支援、要介護が必要となった主原因は生活習慣病が2~3割を占める等スライドのグラフを見て解説されました。

 第二次の施策としては健康寿命の延伸、健康格差の縮小、生活習慣に加え社会環境の改善を両輪で目指してきました。この期間は平均寿命が延びる一方で、高齢化や生活習慣の変化により、疾患構造が変化してきました。
 第二次の評価は、一次予防に関する指標が悪化していること、健康増進に関するデータの見える化・活用が不十分なこと、調査方法などの変更により評価困難となった項目があることなどが課題として浮かび上がりました。
 平成25年から令和5年の10年を目途に最終評価。目標設定数は53項目、評価は5段階。健康づくり運動を累次的に行っていくことの重要性が増してきているという結果でした。
 東京栄養サミットでは、我が国の低栄養と過栄養の「栄養の二重負荷」について2021年12月に始めて取り上げています。「健康で持続可能な食環境戦略イニシアチブ」を展開していくことを世界に発信し、人生100年時代を迎え、社会が多様化する中で各人の健康課題も多様化してきていますが「誰一人取り残さない健康づくり」や「より実効性を持つ取り組みの推進」に重点を置くことを第三次の全体像としています。
 第三次についてはこの点をふまえ、「すべての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」をビジョンとして掲げ、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」「個人の行動と健康状態の改善」「社会環境の質の向上」「ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり(子供、女性、高齢者)」の4つの基本的な方向が示されました。
 運動期間スケジュールは令和6年から17年の12年間。6年後に中間評価、10年を目途に最終評価し、時期プランの作成準備を行う。健康(特に健康寿命の延伸や生活習慣病の予防)に関する科学的なエビデンスに基づくこと、継続性や事後的な 実態把握などを加味し、データソースは公的統計を利用することを原則とする。目標値は、直近のトレンドや科学的なエビデンス等も加味しつつ、原則として、「健康日本21(第二次)」で未達のものは同じ目標値、目標を達成したものはさらに高い目標値を設定。(全部で51項目)

  • 「個人の行動と健康状態の改善」では、適切な栄養・食生活やそのための食事を支える食環境の改善を進めていくことが重要であり、生活習慣の改善、生活機能の維持・向上の目標をちりばめています。
  • 「社会環境の質の向上」では、新たな視点として・女性の健康を明記・産学官等の連携・協働による誰もが自然に健康になれる食環境づくり、他計画や施策との連携も含む目標設定(健康経営、産業保健、食環境イニシアチブに関する目標を追加)、アクションプランの提示、個人の健康情報の見える化・再活用についてなどが具体的に盛り込まれました。

多様な主体、他分野連携の必要について

 行政だけでなく地域関係者や民間部門の様々な分野との 連携が必要である。健康増進の取組には、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、管理栄養士等の様々な専門職が携わっており、国及び地方公共団体は、これらの人材の確保及び資質の向上に努めるものとすると解説いただきました。

 質疑応答では、3件について先生がご回答下さり、講義終了となりました。
 本講座では、日本における今後の公衆衛生面での課題について学ぶことが出来ました。「健康日本21(第三次)」でいろいろ変わった点、背景、議論になった事を踏まえ、自分の仕事の重要性を改めて考えました。施行されるにあたり専門職として管理栄養士、栄養士に関係すること、出来ることを考え、多職種と連携し取り組んでいくこと、現場と連携してエビデンスを作り、より高い食生活の取り組みが進めていかれること、力を終結して「健康日本21」を推進していくなど政策の後押しに少しでもなれる様に自分の仕事を進めていきたいと強く感じる講演でした。


 〔取材 香友会広報部〕