香友会主催講座・講習会
令和4年度第4回「専門家講座」開催報告

テーマ:在宅高齢者の栄養管理の実際~元気を保つためのチェック方法と支援の工夫~
講 師:川島 由起子 先生(横浜市医師会認定栄養ケア・ステーション 責任者 )

 2022年12月4日(日)14時より令和4年度第4回《専門家講座》がオンラインにて開催されました。また後日、当日の録画がオンデマンドで配信されました。

 講師の川島先生は女子栄養大学のご卒業で、栄養学博士を取得されています。聖マリアンナ医科大学病院栄養部部長 長野県立大学健康発達学部食健康学科教授等を経て、現職で活躍されておられます。

 健康長寿をめざすために低栄養にならないよう「在宅高齢者の栄養管理の実際」について、高齢者の栄養管理の仕方や支援の工夫などを講義していただきました。

 

 国連の世界保健機関(WHO)の定義では高齢者とは65歳以上の人のことをいい65~74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者という。わが国では総人口が減少する中で65歳以上の高齢者の人口は増えている。男女比は64歳までは男性の方が多く65歳以上になると女性の方が多くなる(女性の方が長生き)。75歳以上の人口が総人口に占める割合が15%を超えた。今後さらに高齢者の割合は多くなると思われる。

〇栄養食事指導では『お食事手帳』(株式会社クリニコ)が使われている。

『お食事手帳』の構成

①現在の状況(手帳の持ち主の情報)

②スクリーニング  ・現在の食生活習慣 ・オーラルフレイル問診表

・簡易栄養状態評価表(MNA®-SF)・簡易食欲調査票(SNAQ-JE)

・コラム~筋肉量のチェック~

③目標設定  ・目標体重の設定 ・食事習慣、健康習慣ポイント

④記録表   ・食生活記録表記入例 ・食生活記録表(6回分) ・変化記録表

 『お食事手帳』は、一人一人の生活スタイルを尊重し、普段の食事を変えずにその食事内容に必要な栄養素を補う事で低栄養状態の予防や改善を目指すために作られている。在宅患者の身長体重・食生活の習慣・食欲・栄養状態・口腔内の状態・嚥下機能等の情報等を1冊の手帳に記録し、患者さんの今の状態や経時的変化がわかるようになっている。スクリーニングは各項目について問診し合計点数で評価する。目標体重は目標のBMIを基に算出し、今の食事に必要な追加エネルギー量を決めてタンパク質、脂質、炭水化物の目標量を決める。管理栄養士と患者が一緒にコミュニケーションをとりながら『お食事手帳』を作っていくので栄養食事指導の際「食事内容」と共に「食欲」や「栄養状態」の変化もみることができる。

 食生活記録表に記載されている食品群を覚えるために東京都健康長寿医療センター研究所が開発した合言葉「さあにぎやかにいただく」を使うと覚えやすい。

〇栄養改善の対応

エネルギーを上げる工夫
・食べやすい形状にする・濃い味付けにする・普段食べ慣れているものを取り入れる・油の活用

タンパク質を上げる工夫

・混ぜご飯の活用・ちょい足し食材の活用・間食で補給

水分補給を増やす工夫 

・食事 間食で水分の多い食材食品を取り入れる・定期的に水分補給をする時間を決める 

・1回の量を少なめにする ・本人以外の人が飲んだ水分量がわかるツールを活用

栄養補助食品の紹介

・栄養補助食品は現在食品メーカーが作っているのでとても美味しい

・色々な味があるので好みによって選べる

 

*『お食事手帳』は担当の管理栄養士が交代しても患者情報(過去~現在)を正確に引き継ぐことができ、またどの患者さんに対しても同じ基準で評価できるので 栄養指導に必要な優れたツールだと思いました。
 高齢者が何歳になっても口から食物を食べて健康長寿でいられる幸せな日々を送ることができるように「在宅高齢者の栄養管理」の重要性を実感し、栄養相談や栄養指導をしてくれる管理栄養士が身近にいる 環境は改めて大切だと思った講義でした。

**後日『お食事手帳』が講座参加者全員に送付され、実際に実物を見ることができました。手帳を開くと大きな文字、易しい言葉、明るい色彩、豊富なイラストや写真で構成されていて高齢者が分かり易く使える手帳だと思いました。

 〔取材 香友会広報部〕