香友会主催講座・講習会
令和4年度第3回「専門家講座」開催報告

テーマ:食事における噛むことの大切さ-フレイル予防の観点から-
講 師:柳澤 幸江 先生(和洋女子大学教授・大学院研究科長  日本咀嚼学会副理事長 )

 

 令和4年度第3回専門家講座が2022年11月12日(土)14時より、オンラインライブ配信開催されました。またその内容は、後日オンデマンドでも配信されました。
 テーマは「食事における噛むことの大切さ」。フレイル予防の観点から、高齢者を中心とした内容でした。

オンライン講座画像

 「健康寿命の延伸を目指すためには、老衰していく状況にいち早く気づき、それを進行させない、回復させる個人的・社会的しくみを作る必要がある」ことから日本老年医学会が「フレイル」を提唱しました。2020年の食事摂取基準から「フレイル」が用いられるようになりました。

*食事における噛むことの意義
 噛む力を維持することが、栄養状態の健全さや健康維持に繋がっています。毎日の食事を、良く噛んで良く味わって食べることは、食事のおいしさを高めて、食事を楽しむために大切で、これが食事における噛むことの意義です。噛むことは味わいとも関係が深く、歯根膜という部分では、食べ物のテクスチャーを認知しています。歯をなくすと歯根膜もなくなってしまいます。

*嚙むために必要な器官と運動
 歯の本数と噛める状況には関連が見られ、60歳以上で20本以上自分の歯のある人の割合が増えていて、何でも噛んで食べられる人の割合も増えています。ただし、噛むためには歯、口唇、頬、舌運動、唾液分泌、下顎運動が必要で、歯があるから咀嚼できるとは限りません。噛んで呑み込むためには歯よりも舌の動きが大切で、咀嚼における舌の役割は食べ物を歯の上に送り、とどめて唾液と混和させて、嚥下できる食塊を形成することです。「ぱ」・「た」・「か」・「ら」による舌、口唇の運動で筋肉を維持することができます。
 柔らかい物ばかり食べていると、咀嚼筋が衰えます。また、噛む力が強いほど唾液の分泌量は多くなります。唾液にはでんぷん分解酵素や細菌抑制効果、嚥下補助、虫歯予防などの働きがあります。

*食事での食品選択・調理の工夫
 毎日の食事では、栄養バランスをとるため食品摂取の多様性を確保しましょう。また、噛むことを増やす食品の選択も大切です。例えば、噛みごたえのある食材(肉・野菜・きのこ・海草・乾物など)の利用や、切り方を大きめにするなどの調理の工夫、乾物をうまく使うなどしましょう。
 噛むことが少し不自由になってきても、柔らかい食べ物でも形を大きくすることで毎日の食事で口、舌を動かし食べる機能の低下を防ぎます。

 

 食事の基本となる「ゆっくりよく噛んで食べる」ことは、 フレイル予防にも繋がります。質の高い食事の実現のためにも「噛む力の維持」を大切にしましょう。日常生活が維持できている元気な100歳老人は、家族と同じ普通の食事を食べ、運動習慣があり、視力も保たれているそうです。

 2時間しっかり講義を聞かせていただきました。講義の内容を周りの人に広め、世の中の健康寿命が延びるよう、役立てたいと思います。

〔取材 香友会広報部〕