香友会主催講座・講習会
令和4年度第2回「専門家講座」開催報告

テーマ:健康食品の正しい利用法〜安全性確保のためにできること〜
講 師:西島 千陽  先生(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
            老年学・社会科学研究 センター 予防老年学研究部 )

 2022年9月9日(土)14時より第2回専門家講座がオンラインにて開催されました。講師の西島先生は、女子栄養大学大学院博士後期課程を修了後、国立健康・栄養研究所を経て本年4月より現職にて研究活動に携わっておられます。
 
 本講座では、健康食品の健康被害と経済被害という視点から健康食品の安全性について考えます。健康被害には製品側と利用者側の要因があるとされます。まずは正しい利用のために製品の安全性の確保が重要で、国が制度として整えるだけでなく、利用者と健康に関わる専門家が協力して注意を払っていく必要があります。被害実態や正しい利用法、消費者側から相談を受けた際の対応について、西島先生に実践的な提案をいただきました。
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◆多様な有効性が期待される健康食品の全体像
 食品の健康効果や機能性に着目した健康食品が数多く流通しています。健康食品というと一般的に健康増進やダイエット・美容などのイメージがもたれています。ひと口に健康食品といっても範囲が広く、納豆や豆乳のように健康によい一般食品から、保健機能食品、そして「いわゆる健康食品」(サプリメント)とさまざまです。保健機能食品は、特定保健用食品(通称トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品の3つに分類され、機能表示が法的に許可されている食品です。一方、機能表示が認められていない、いわゆる健康食品に分類されるものには機能性食品、サプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、自然食品などがあり、この中には悪質な製品が潜んでいることも。効能・効果などの表示方法の行き過ぎは、消費者庁が取り締まり違反文言をチェックして改善を求めています。
 
◆製品側の要因による健康被害
 原材料の濃縮物を添加したサプリメントによる下痢や便秘・嘔吐などの消化管症状の報告があります。また、表示されていない医薬品が違法に添加されている無承認無許可医薬品がダイエットや性機能改善薬としてSNSやインターネットのルートで流通されています。さらに効果を高めるために違法に成分量を調整したものもあり倦怠感や悪心などの健康被害が発生。厚生労働省ウェブサイトにはこれらの最新情報が公表されています。その他、鉛やヒ素、カドミウムなどの有害物質が混入していた事例も、製造工程での問題によるものです。
 
◆利用者側の要因による健康被害
 健康食品は健常者の健康増進に用いられるもので、医薬品は患者が対象です。治療は医薬品を使い健康食品を利用すべきではありません。過剰摂取、サプリメントや薬との併用、複数薬摂取などの不適切な利用により気付かないうちに過剰摂取になることがあります。有害事象を受けやすい体調・体質や高齢者・子どもなど個々に対する注意喚起も必要です。
医薬品と健康食品の違いは、品質、有効性・安全性の科学的根拠、医師や薬剤師などの専門職の管理の有無です。健康食品は製造管理も医薬品ほど徹底されていないことが実情です。医薬品と併用した場合、相互作用により薬の作用が増強したり減少したりする可能性があります。
 
◆利用者側の要因として注意したい問題点
 製品パッケージの記載事項(成分名と原材料名)をしっかり把握することです。まずは安全性・有効性の正しい情報を理解するための重要な4点「誰が」「何を」「どれだけの量・期間に摂取したか」「どうなったか」を明確にさせます。利用者が情報提供できるようにパッケージの成分・原材料表示の写真などを残しておくと貴重な資料となります。
以下は、抽出物による作用が増強された有害事象の事例です。天然・自然が必ずしも安全ではなく食品原材料であるから安心という認識は危険です。
*成分名DHAと表記された製品例:原材料名に魚油などさまざまな抽出物が記載されている。目的とする成分以外にも抽出・濃縮されている可能性がある。
*成分名アマメシバと表記された製品例:ダイエット効果があるとされる現地で食用にされる野菜が抽出物になると重篤な副作用があるという(現在は国内流通なし)。食経験があるハーブ製品の大量摂取のトラブルの報告もある。
 
◆健康食品の経済被害の相談件数は増加傾向
 全国消費生活情報ネットワークシステム2020年度調査では、健康食品の相談件数が3位とのことでした。被害内容は高額料金の請求、定期購入や解約時の被害が9割を超えています。経済被害の多くは通信販売(SNSやインターネット)によるトラブルです。被害防止のために、広告の記載事項チェックを怠らないよう消費者への注意喚起が必要です。
 
◆被害関連情報を確認媒体で明確にチェック
 消費者から健康食品利用や被害の相談を受けたときには、さまざまなツールで事例検索を試みます。利用者の摂取状況メモの作成依頼も必要です。指定成分4つを含んだ商品による有害事象の被害は厚生労働省に相談します。被害関連情報の確認は、国立研究開発法人医薬基礎・健康・栄養研究所の検索システム「健康食品」の安全性・有効性情報「HFNet」  を活用します。このウェブサイトは今年度大きくリニューアルされ、操作性もさらによくなるとのことです。
 本講演では、HFNetのウェブページを画面上で共有し、使い方のレクチャーを含めた具体的な解説を通して、情報の見極め方を学ぶ貴重な時間となりました。

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 最後に、視聴者からの健康食品のテレビCMの表記についての質問に西島先生からアドバイスをいただきました。健康食品の広告には消費者に不確かさを与えてしまう表現が少なくありません。消費者として、また専門家として曖昧な文言に惑わされない情報収集の大切さを痛感しました。


 〔取材 香友会広報部〕