香友会主催講座・講習会
2019年度第1回「専門家講座」開催報告

テーマ:日本人の食事摂取基準2020年版(案)のポイントと解説
講 師:上西 一弘 先生〔女子栄養大学教授 栄養生理学研究室〕
    《日本人の食事摂取基準2005年版~2020年版 策定ワーキングメンバー》

 2019年(令和元年)7月7日(日)に、女子栄養大学駒込校舎において開催された第1回専門家講座は、午前10時から昼食をはさんで午後3時までという長丁場にもかかわらず、130名を超える参加者で会場は満席となりました。

講師画像

講師の上西一弘先生

 来年(2020年)に改定される日本人の食事摂取基準2020年版(案)※について、女子栄養大学教授で食事摂取基準の策定ワーキングメンバーでもある上西一弘先生を講師にお迎えし、午前中に総論、午後に各論についての講義をいただきました。
※本講座は「日本人の食事摂取基準2020年版」が正式発表される前に開催されたため、(案)が付してあります。 
2020年版の主な改定のポイント
・高齢者を65~74歳と75歳以上の2つに区分
・フレイル予防の観点から、高齢者のたんぱく質の目標量を見直し
・生活習慣病における発症予防の観点から、食塩の目標量引き下げ
 
 食事摂取基準は「健康で長生きするために、何をどれだけ食べればよいか」の指標となるもので、健康な人を中心としながら生活習慣病やフレイルの危険因子を有する者も対象には含まれます。今回の改定では2015年版を基本としつつ、「社会生活を営むために必要な機能の維持および向上」を策定方針に加え、これまでの生活習慣病の発症予防・重症化予防に加えて、新たに「高齢者の低栄養、フレイル予防」を視野に入れて検討されました。これまでも問題となっている生活習慣病だけでなく、高齢者の増加、サプリメントの普及といった現代の社会背景を踏まえたものになっています。
 
 2015年版と2020年版を比較による変更は以下の通りです。
①たんぱく質の目標量は2015年版で50歳以上がエネルギー費13〜30%に対して、2020年版では50〜64歳で14〜20%、65歳以上で15〜20%へ引き上げ。②ビタミンDの目安量を、2015年版18歳以上5.5㎍/日に対して、2020年版では8.5㎍へ引き上げ。③食塩相当量の目標量を2015年版18歳以上男性8.0g/日未満、女性7.0g/日未満のところ、2020年版では男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満へと引き下げ。④クロムの耐容上限量を新たに2020年版に18歳以上500㎍/日と設定。
実践の場では、栄養素を食品や食事としてわかりやすく伝えるために、食品成分表を大いに活用する必要があります。
 
 改定内容についての解説の深さはもちろん、途中でカルシウムの自己チェック表によるワークもあり、聞きごたえのある濃い講義時間でした。

会場画像

会場いっぱいの参加者


 〔取材 香友会広報部〕