香友会主催講座・講習会
平成30年度第4回「専門家講座」開催報告

 平成30年12月16日(日)13時より、女子栄養大学駒込校舎小講堂において第4回「専門家講座」が開催されました。
 学校給食摂取基準が、平成30年7月に改正されました。策定のメンバーでもあり、女子栄養大学教授 栄養生理学研究室 上西一弘先生を講師にお迎えし、「学校給食実施基準の一部改正について」をテーマに、改正の考え方及びそのポイントを丁寧にわかりやすくお話いただきました。パワーポイントの資料のほかに、3月にだされた「学校給食摂取基準の策定について(報告)」、そして過去2年間分が記載された「学校給食摂取基準についての基本的な考え方」も配布いただきました。具体的な説明でより理解が深まるとともに課題に関しても触れられ、また、本来の学校給食の意義を考えるよいきっかけにもなりました。

上西一弘 先生

以下、改正のポイントをまとめました。

1)学校給食摂取基準の基本的な考え方

  • 平成26年3月に発表された食事摂取基準2015年版で定められた目標量又は推奨量の3分の1とすることを基本としつつ、食事状況調査の調査結果を踏まえ、児童生徒の健康の増進及び推進を図るために望ましい栄養量を算出する。
  • 食事状況調査「食事摂取基準を用いた食生活改善に資するエビデンスの構築に関する研究」(代表者:佐々木敏)」の結果データを比較し、習慣的栄養摂取量が食事摂取基準の目標量の不適合率など勘案し、学校給食において摂取が期待される栄養量を算出している。

 

2)学校給食において摂取すべき栄養素の基準値等

①エネルギー:

文部科学省が実施する学校保健統計調査の平均身長から求めた標準体重と食事摂取基準で用いている身体活動レベルⅡ(ふつう)により算出した1日の必要量の3分の1を基準値とした。

②たんぱく質:

「食事摂取基準」の目標量を用いることとし、学校給食による摂取エネルギー全体の13%~20%を基準値とした。

③脂質:

「食事摂取基準」の目標量を用いることとし、学校給食による摂取エネルギー全体の20%~30%を基準値とした。

④ナトリウム(食塩相当量):「食事摂取基準」の目標量の3分の1未満を基準値とした。

⑤カルシウム:「食事摂取基準」の推奨量の50%を基準値とした。

⑥マグネシウム:

児童については「食事摂取基準」の推奨量の3分の1程度生徒については40%を基準値とした。表中の基準値とした収載された。

⑦鉄:児童については「食事摂取基準」の推奨量の40%程度とし、生徒は3分の1程度を基準値とした。

⑧ビタミンA:「食事摂取基準」の推奨量の40%を基準値とした。

⑨ビタミンB1:「食事摂取基準」の推奨量の40%を基準値とした。

⑩ビタミンB2:「食事摂取基準」の推奨量の40%を基準値とした。

⑪ビタミンC:「食事摂取基準」の推奨量の3分の1を基準値とした。

⑫食物繊維:「食事摂取基準」の目標量の40%以上を基準値とした。

⑬亜鉛:「食事摂取基準」の推奨量の3分の1を学校給食においては配慮すべき値とした。

 

3)学校給食における食品構成について

多様な食品を適切に組み合わせて、児童生徒が各栄養素をバランスよく摂取しつつ、様々な食に触れることができるようにする。これらを活用した食に関する指導や食事内容の充実を図ること。多様な食品とは、食品群であれば、例えば、穀類、野菜類、豆類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類及び乳類など。

日本型食生活の実践、我が国の伝統的な食文化の継承について十分配慮すること

 また、学校給食のない日はカルシウム不足が顕著であり、カルシウム摂取に効果的である牛乳等についての使用に配慮すること。また家庭の食事においてカルシウムの摂取が不足している地域にあっては、積極的に牛乳、調理用牛乳、乳製品、小魚等についての使用に配慮すること。
 今後の課題として、①男女差もある中、平均の提供でよいのか ②年間の発育状態の違い(3月生まれと4月生まれ)③提供量だけをみていないか?本当に食べているのか?残食は?④発育にあった食事提供を行っているか?など、食事を提供することだけでなく、子供たちの発育に合わせての給食の提供が大切であることを熱く語られました。
 学校給食摂取基準は弾力的に柔軟に運用していくこと。また地域の実情に合わせてポリシーをもって運用することも大切であり、自らデータをとり、エビデンスを積みあげることの重要性も話された。

〔取材 香友会広報部〕