香友会主催講座・講習会
平成30年度第1回「専門家講座」開催報告

〜食環境整備とスマートミール -マネジメントの実際- 〜

 平成30年10月7日(日)13時30分より、女子栄養大学駒込校舎小講堂において今年度第1回目の「専門家講座」が開催されました。
 外食・中食・事業所給食で、「健康な食事(スマートミール)」を継続的に健康的な環境で提供する店舗や事業所を認証する新しい制度がはじまりました。この制度は厚生労働省健康日本21(第2次)の目標の一つを応援するものです。その制度についての内容をはじめ第1回目の認証取得の具体的事例などを各分野の5名の先生方にお話しいただきました。参加者は55名。初めての認証申請におけるご苦労、認証受けて良かった点なども具体的にお話いただき、今後の認証制度のさらなる発展への熱い思いを伺うことができました。

 

「食環境整備とスマートミール」
女子栄養大学教授 石田裕美先生

1. 「健康日本21」(第2次)で示唆されていること
栄養・食生活分野における6本柱として具体的な食べ方を示唆するとともに、行政による枠組みの構築と民間主導による食環境整備、そして特定給食施設の資質向上と取り組み強化が言われている。環境を整備し、社会構造を変える必要がある。
2. 事業所給食における現状
給食施設設置者は適切な栄養管理をおこなわなければならない。管理栄養士・栄養士配置を平成34年までに80%に増やす目標もあるが、配置率があがっていないなど社会環境に関する目標には課題がある。
3. 10学協会からなる「健康な食事・食環境」コンソーシアムが審査・認証する新制度
栄養学を基盤とする学術団体の社会貢献活動としての取り組みである。目的は栄養バランスのとれた食事がとりやすい食環境整備を推進すること。ゴールは「健康寿命の延伸」の実現。「健康な食事・食環境」認証制度は「スマートミール(健康な食事)」を継続的に健康的な環境で提供する店舗や事業所を認証するもの。
4. Smart Meal スマートミール基準  おいしく、楽しく食べることが基本
健康に資する要素を含む栄養バランスのとれた食事の通称
低エネルギーの通称 ちゃんと(450~650kcal)食塩相当量3.0g未満
高エネルギーの通称 しっかり(650~850kcal)食塩相当量3.5g未満
料理の組み合わせ目安 ①「主食+主菜+副菜」②「主食+副食(主菜・副菜)」PFCバランスが日本人の食事摂取基準2015年版に示された18歳以上のエネルギー産生栄養素バランスの範囲に入ること。牛乳・乳製品、果物も適時取り入れることが望ましい。特定の保健の用途に資することを目的とした食品や素材を使用しない
5. 認証施設の現状
第1回認証施設 給食34件 外食25件 中食11件   第2回目募集中

 先生は日本栄養改善学会の健康な食事・食環境認証ワーキンググループとして、科学的根拠に基づき、現実の大手給食会社の実際に提供しているヘルシーメニューを分析・検討した上で作成基準を作られたことなど、スマートミール認証基準に関しても丁寧にお話しいただいた。

石田先生画像

石田裕美 先生

 

「給食部門 受託給食会社及び外食での展開」
株式会社 グリーン・フードマネジメントシステムズ
管理栄養士 健康経営アドバイザー 狩野恵美子先生

 第1回認証を受けた受託給食2施設および外食1店舗での事例をご紹介いただいた。

  1. 背景は、日本給食経営管理学会副理事長として検討を始め、取り組みが会社の理念と一致する。健康経営に取り組む企業は増えている。認証制度なので、企業の関心が高まるのではないか?という思いから。
  2. 苦労は社内トップからボトムまで周知すること、キーパーソンへの理解と協力、PFCバランスを整える献立作成、計量を徹底させる調理、そしてクライアント企業への説明の重要性。
  3. よかったことはクライアント企業からの信頼が高まったこと。社員にスマートミールの理解が深まった。企業と給食事業者が協力していることが評価。メディアに取り上げられ、社内の理解と協力が高まった。

 社員食堂ではスマートミール“しっかり”を基準にして、ぱっと見のおいしさやボリューム感など活かしつつバランスのとれた献立に仕上げた。そして外食では、中華料理でありながら、油脂・塩分を工夫して、野菜も甘酢のみで仕上げるなど、メディアでも取りあげられている。

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狩野恵美子 先生

 

「中食・外食部門での行政からのサポート」 市貝町における食環境整備の取り組み
市貝町健康福祉課 管理栄養士 三村愛先生

 第1回認証を町の取り組みとして実施していった事例をご紹介いただいた。

  1. 町ではバランス食、減塩、野菜摂取量増加に向けた普及啓発活動を実施。さらに町全域に点在する「飲食店」と連携し、中食(総菜、弁当等)に着目した取り組みを実施する→飲食店のスマートミール登録。
  2. 認証制度第1回では、道の駅内の「カフェ三四八」モーニングセット、その他町内店舗2店が認証。さらには温泉食堂にも展開を計画中。
  3. 大変だったことは、店舗実情に合わせたレシピ考案。禁煙。店のイメージのPOP作成。応募書類の作成。
  4. 良かったことは、認証店としてホームページに掲載し、店のPRになった。新しいメニューができた。ヘルシーメニュー提供店舗としてイメージアップになった。

 今後の課題は、飲食店店舗にスマートミールの提供を広げていくことを目標に、より多くの町民に利用してもらうためにPRなどを工夫していくことである。

三村先生画像

三村愛 先生

 

「ホテル・レストランの現場から」
一般社団法人日本栄養検定協会代表理事 松崎恵理先生
東京ドームホテル 料飲調理部 宴会調理課長
ダイニング「ドゥ ミル」シェフ 清水直徳先生

 松崎先生より、外食分野におけるスマートミール取り組みのサポートの事例をお話しいただいた。美味しい料理と健康的な料理の両立の難しさや、和食店では毎日変わる仕入れによるメニュー立案の難しさなどにより断念した店舗もあったということである。認証の実現に至った、レストランのサラダランチ、そして東京ドームホテルの事例をご紹介いただいた。

松崎先生画像

松崎恵理 先生

 清水先生からは東京ドームホテルでの具体的な売り上げ実績を含め、課題やさらなる思いを伺った。

  1. 東京ドームホテルの各店舗でメニューの認証を受けた。和食は普段から減塩調味料を使用しており、通常の和食メニューとして定着。中華の白粥セット、イタリア・スペイン料理とフランス料理は苦戦している状況。
  2. レシピ開発も今後のポイントになる。スマートミールに合う料理、合わない料理のみきわめも重要。プレゼンの仕方の工夫やキッチンでのオペレーションのしやすさ、食材のロスがでないなど今後のさらなる検討が必要である。
  3. 価値感、クオリティー、ときめき、おいしい、レストランにふさわしいメニューを提供し、さらにお客様に喜んでいただけるスマートミール開発に取り組んでいきたい。
清水先生画像

清水直徳 先生

 第2回認証に向けた申請が始まっている。さらなる食環境整備が進み、誰もが当たり前にバランスのよい食選択ができ、健康的な食生活の実現が図られるよう、スマートミールを推進していきたいと総括された。
 5名もの講師によるお話は多角的な内容で、受講者にとってたいへん充実した講座でした。

〔取材 香友会広報部〕