香友会主催講座・講習会
平成29年度第3回「専門家講座」開催報告

食と健康の情報をもっと魅力的に、もっとわかりやすく!
雑誌編集の手法から学ぶ「見せ方」のワザ
~『栄養と料理』の制作過程から~

平成29年11月23日(木・祝)、平成29年度第3回専門家講座が、女子栄養大学駒込校舎にある香川綾記念生涯学習センター で開催されました。テーマは“食と健康の情報をもっと魅力的に、もっとわかりやすく! 雑誌編集の手法から学ぶ「見せ方」のワザ ~『栄養と料理』の制作過程から~”です。講師は月刊『栄養と料理』(女子栄養大学出版部)編集長の浜岡さおりさんです(浜岡さんは本学栄養学部栄養科学専攻を卒業し出版部に入職)。

講師の浜岡さおり先生

第1部では、1冊の雑誌ができるまでの過程について『栄養と料理』の実際の編集過程をたどりながら理解し、さらに、わかりやすく魅力的な誌面にまとめるための方法を考えていきました。
雑誌作りは「企画会議」→「プランニング」→「取材・撮影」→「原稿作成」→「入稿・校了」の流れで進んでいきます。
企画会議は、その号に掲載する記事の内容をスタッフ全員がほぼ1日をかけて決めていく作業です。雑誌が目指す大きな方向性は年間計画として編集長が決定し、その方向に沿ってテーマを考えますが、限られた誌面の中で伝えられる情報は限られているため、そのテーマの何を取り上げ、何を捨てるかが大切なポイントになります。
次にプランニング。テーマごとに取材から撮影、原稿をまとめるまでのスケジュールと予算を決めること、“ラフ”と呼ばれるページのプランを作ること、そして筆者やカメラマンを決めることまでを行います。浜岡さんは、中でもラフを明確に作ることが仕事の流れをスムーズにするために大切だと強調します。そのテーマで強調したいことを最も目立たせるために、タイトルの位置や文字の書体・サイズ、写真やイラストをどのように配するかなど、雑誌が出来上がったときのページのイメージを大まかに絵にしたものがラフです。ラフがあることで、筆者やカメラマンに、そのページをまとめるために必要十分な原稿や写真のボリュームを伝えることができるからです。取材が終わった後で、この写真が必要だったなどと後悔しないためにも大事であるとよくわかりました。
取材や撮影が終わるといよいよ原稿作成となります。原稿作成というと文章を書くことばかりが思い浮かびますが、ここで大切なのは情報のチェックだといいます。①その原稿がオリジナルであることの確認、②あいまいな点があれば調べ直したり識者に確認したりして明確にする、③引用した文章や写真の著作権・版権の許諾をとること、が主なチェックポイントとなります。書きあがった原稿は、意味が正しく伝わっているか、“テニオハ”に誤りがないかなど、文章としての体裁を整えます。その後、ラフに基づいてレイアウトしたものを印刷所に渡し、校正をした後、印刷・製本されて1冊の雑誌として完成します。『栄養と料理』では印刷に入る前の最後の校正作業(校了)は約160ページを2日間かけて読むそうです。

第2部は、魅力的でわかりやすいチラシやパンフレットを作るヒントを、実習を交えて実践的に教えていただきました。
まずわかりやすさを実現するには、見せたいものをきちんと見せるデザイン力、意味が正しく伝わる伝達力、ページの中に流れを作る構成力が大切です。ラフがあればそのイメージが確認できるので、明確なラフを描くことが必要なわけです。そして魅力的な紙面を作るためのヒントは、美しいレイアウトに敏感になることです。文字は大きさや書体はもちろんですが、行間の広い狭いでもずいぶん印象が変わります。普段からきれいな雑誌やポスターを見ることを心がけ、気に入ったレイアウトに出会ったらジャンルにこだわらず書体や文字を真似てみると魅力的なデザインに近づけます。
また普段使用しているパソコンやカメラは、その機能を十分に理解し使いこなせるまで繰り返し練習すると媒体作りの強い味方になってくれるそうです。

最後に、“ダイエット”と“クリスマス料理”をテーマに受講者一人ひとりが実際に見開き2ページのラフを考える実習を行いました。受講者何人かのラフを映像で共有し、編集意図を確認することで、テーマの切り取り方の違いを実感することができました。
今回参加された受講生の職場では、日々、さまざまな媒体がつくられていることでしょう。この講座でプロの編集者の仕事の一端に触れ、よりわかりやすく的確な情報が発信されることを期待したいと思います。

〔取材 香友会広報部〕