香友会主催講座・講習会
平成29年度第2回「専門家講座」開催報告

東京オリンピックに向けてフードサービスに係る専門職として取り組むべき課題

平成29年10月15日(日)13時30分より、女子栄養大学駒込校舎において、第2回「専門家講座」が開催されました。テーマは「東京オリンピックに向けてフードサービスに係る専門職として取り組むべき課題」で、多くの卒業生や在学生合わせて100名近くが受講しました。今回は本学教授の石田裕美先生がコーディネーターで、本学の卒業生である亀井明子氏と東京都市場衛生検査所の北畠安理佐先生を講師として講義をしていただいた後、シダックス(株)の高戸良之氏を交えて全体ディスカッションを行いました。

1.選手のピーキングにあわせた食事管理・栄養管理の課題

-多職種連携の中でマネジメントの課題―
亀井明子先生(国立スポーツ科学センタースポーツ科学部 先任研究員)

東京オリンピック2020大会に向けて、大会期間中の食事やホストタウンの登録等について話をして下さり、フードサービスに関する活動は広範囲にわたることを知ることが出来ました。期間中の食事は選手村内だけでなく、競技会場内外、各国のサポート拠点、報道関係者の食事やボランティアの食事等があり、その食環境の整備は重要になってきます。また大会開催に向け、参加国・地域との相互交流を図る「ホストタウン」についての話をお聞きました。詳細は内閣府ホームページをご覧くださいとのことでした。
またスポーツ栄養分野における国際競技大会、最終調整の場としての食環境の整備について、リオデジャネイロオリンピック2016を例にしてお話いただきました。ハイパフォーマンスサポートセンターが本格的に設置され、コンディションニングミールやリカバリーミール(持ち出し用補食)などの提供が行われたとのことでした。リカバリーミールボックスにはおにぎりやバナナ、オレンジジュースなどをクーラーボックスに入れ、品質管理をしたそうです。また選手村のメインダイニングではいろいろな国や宗教に対応した食事を提供しており、ハラル(イスラム教徒向けの食事)・コーシャ(ユダヤ教徒向けの食事)コーナーやアジア料理コーナー、グルテンフリーパンコーナーなども設置されたそうです。
 東京オリンピックでは、スポーツ以外も含めた様々な分野でポジティブなレガシー(遺産)を残す大会として成功させるために、これからいろいろな準備が具体的に進み、安心して食事のとれる環境を整えていくそうです。

2.安全・安心なフードサービスに向けての課題

-生産・流通・保管・調理・提供のプロセスにおける食品衛生の課題―
北畠安理佐先生(東京都市場衛生検査所検査課 衛生指導担当)

北畠先生の勤務先である築地市場の紹介の後、東京都の食品監視体制について説明がありました。食品関係施設に対する監視指導や食中毒情報の受付などがありますが、食中毒に関しては365日24時間体制で情報を受け付けているそうです。月別食中毒の状況をみると、5月中旬、8-9月、12-1月とピークがあるものの、年間を通して発生しています。今年の2月に発生したキザミのりを原因としたノロウイルス食中毒を例にして、食中毒調査のプロセスについて解説してくださいました。事業者による食品の安全の自主管理として、日本ではHACCP、FSSC、ISO、GAPなどがありますが、諸外国ではPASSという基準を使っているそうです。
食の安全・安心をめざし、東京オリンピックにむけて、今後の課題は食中毒と食品テロの防止であるということでした。

シダックスの高良先生からは、食材由来のドーピングの問題に関する解説と、ハラル認証の食材調達の課題についてお話がありました。価格が高く使用量が少ないものでも常備していく必要があるとのことでした。
最後の全体ディスカッションでは、東京オリンピックでメダルをとるためには、情報の共有化がポイントで、それぞれがやれることを双方向で確認していくことが重要であるという話がでました。また方針を請け負った側は、クライアントの要望にあわせて安心・安全な食事を提供していく必要があるというまとめで終了しました。

〔取材 香友会広報部〕