
遠藤徳夫 先生
令和8年2月15日(日)に第5回「専門家講座」が駒込校舎にて開催されました。香川調理製菓専門学校の遠藤徳夫先生を講師にお迎えし、穏やかな陽気の中、製パンの食文化・歴史等、試食を交えながらご講演いただきました。
最初にクイズで日本の幸福度の低さと家族そろって食事をする割合の低さについて、次に食で健康を支える4つのキーワード(①絆②食物繊維③運動④生きがい)が紹介されてから本題にはいりました。
パンとは、小麦粉(またはライ麦粉とその他の穀物)を主原料として、パン酵母、塩、水に必要に応じて砂糖、乳製品、油脂、食品添加物を加えて、捏ねて発酵させて焼成する、水分が10%以上のもの。主食、白いご飯に相当するものでヴィエノワズリと区別します。日本での菓子パン(あんぱん、メロンパンなど)はお菓子の分類になります。
≪パンの歴史≫
紀元前8000~7000年頃、古代メソポタミアで野生小麦の栽培が始まりました。世界最古のパンは西アジアで、石で荒くつぶした小麦に水を加えた煎餅状の無発酵パンです。古代エジプトで野生酵母が付着したことから発酵パンが誕生したと言われています。「パンは神からの贈り物」すなわち神様がふくらませてくれた「命の食物」なのです。また、古代エジプトのビールは麦芽パンと水、自然酵母の発酵飲料で、ビールは飲むパンでした。古代エジプトにおいて、足で捏ねて生地を作るエジプト製パン製法が確立し、焼き窯が誕生しました。
エジプト人から古代ギリシャ・ローマ人に製パン技術が伝わると、発酵技術・はちみつ・スパイスなどで風味をつける嗜好品的色彩を持つパンが生まれ、パンの形状も多様化しました。パン屋・パン職人が誕生し、紀元前1世紀には約300軒のパン屋があったようです。その頃、ワイン作りで出た絞りカスやブドウの酵母を使ったパンもでき、ワインとパンはキリスト教との結びつきが強まりました。
パンはヨーロッパ全土に広がり、それぞれの風土・生活にあったパンが発達。イギリスの製パン技法が新大陸アメリカに伝えられました。パンの歴史は、神への信仰と宗教に深く根ざしながら、経済と産業、政治の影響を受けて発達しました。ヨーロッパ大陸とイギリス・アメリカ大陸は異なるパン文化を持ちます。今の日本は二つのパン文化が両立し、世界中の小麦粉・パンが入手できます。
≪日本のパンの歴史≫
弥生時代に大陸から穀物栽培が伝わりました。鎌倉時代に中国の饅頭(マントウ)が伝わり、室町時代 にポルトガルからパンが伝来しました。日本で初めてパンを食べたのは織田信長と言われています。
国産第1号のパンは1842年4月12日、伊豆韮山の江川太郎左衛門英龍が備蓄用の兵糧パンを初めて焼いたものです。4月12日はパンの日になっています。
日本式菓子パンは、木村安兵衛が1984年に木村屋で「あんぱん」を考案して販売したことが始まりです。翌年天皇陛下に「桜あんぱん」を献上した4月4日が「あんぱんの日」の由来となっています。
日本の製パン史は150年と短いのですが飛躍的な技術の進歩と発展をとげ、バラエティー豊かで世界中のパンが手に入ります。パンが全国で食されるようになったきっかけは代用食としての普及運動と、学校給食へのパン導入であり、日本のパン消費の51%が食パンです。

フランスの食文化、ドイツパン イタリアンベーカリー、最近流行のブーランジェリー、ドーナツブームの紹介もあり、試食を交えながらの充実した1時間半。デモンストレーションは時間を延長して最後、編みパンを三つ編み、5本編みと実演してくださいました。
講義の途中で試食として以下のパンが配られました。

試食のパン(一部)
①古代西アジアのパン バルバリ(イラン)②ヘルシーブレッド(フルーツ入り、イースト・砂糖不使用全粒粉)③ミッシュブロート(ドイツの食パン:白い小麦粉(バイツェン)とライ麦半々)④食パン(北海道産小麦粉)⑤あんパン⑥日本最古のパン(硬い)⑦プレッツェル⑧クロワッサン⑨クッキー⑩きな粉のパン⑪フランスパン
健康に良いものを食べてほしいという遠藤先生の思いを拝聴しながら少しずつ試食しました。お土産に持ち帰らせていただいたパンは帰宅後も美味しくいただくことができました。
遠藤先生のパンのすべてを伝えたいという愛と情熱を受け取り、学んで、食べて、感じることのできる喜びと幸福感につつまれた楽しい講演でした。
取材・報告/香友会広報部