※「香友会通信No.46」(6月1日発行)の「卒業生の会」のページでは、紙面の関係で内容を要約していますが、報告の全文がこちらです。
若葉会では学園創立80周年記念事業として「香川芳子学術奨励賞」を創始し、検査技師課程卒業生で優れた研究や当該領域業務の発展に貢献をした方を表彰・奨励しています。「第11回香川芳子学術奨励賞」の表彰は2024年10月19日におこなわれ、受賞者の講演がありました。大学ホームページでも講演の様子がご覧になれます。
次回、皆様多くからのご応募をお待ちしております。(5月末締め切り)
*****「第11回香川芳子学術奨励賞」ご報告*****
●受賞者
谷田部和子氏
学部保健栄養学科平成4年卒業
埼玉県警察本部刑事部科学捜査研究所法医鑑定法医科(専門研究員)
●タイトル
科捜研に検査技術を活かして
●講演概要
ドラマや映画でお馴染みの『科捜研』でご活躍の谷田部さん、学生時代の思い出から就職に至った経緯をごくごく自然な流れだったように話されました。
『科捜研』のイメージは「現場でポンポンする人」ではないですか?と仰り、組織形態や人員構成や業務内部を正確に教えてくださいました。科捜研は犯罪現場での採取資料を科学的に分析し犯罪捜査を支える部署で、谷田部さんは埼玉県内で起こるものを一括する立場にあります。事件が発生すると聞き込みや犯人の特定へ捜査が進み、警察官により指紋や足跡など鑑定対象が採取されます。科捜研には各専門家が揃い、鑑識が進められます。法医鑑定室の法医科では体液とDNA型、硬組織や顔画像、白骨死体の鑑定などを行います。遺留資料が何か、誰のものかを明らかにするために、ヒト由来の対象、血液・血痕、唾液・唾液斑・タバコの付着、精液・精液斑・膣液との混在、皮膚・筋・爪・骨などの組織片や毛髪などで個人識別します。
次に、具体的な事件例を挙げてその解決プロセスをご紹介くださいました。一件目は、拉致後、河川敷に身体損傷がある溺死体の解剖から車内での殺害を示唆され、座席の鑑定。血痕は、色や形を見るそうで、滴下・飛沫・擦過の違い、付着量や付着部位によって距離や様子が推測可能とのこと。二件目は行方不明の捜索。職場同僚が犯人と判明し、自宅で解体。捜索にも立ち会い、リュックに尿様反応や米粒程度の肉片を発見。血型鑑定は解離試験や吸収試験実施。臨床検査では異常値や病気の有無やその程度、治療効果などの測定に対し、法医鑑定では体液に当たり前に存在するものを定性的に判定する点が違うと伺い、目から鱗でした。1994年に導入されたDNA型判定は、時短と感度がアップし、全国一律条件で実施され、これまで約3万件も処理され、災害地では大勢の特定に大きく貢献されているそうです。また、遺伝子多型の検査プロセスのお話もあり、学生達の興味はマックスだったことでしょう。
最後には袴田事件についての質問もあり、困難な事件だったと回答され、確実な手法で結果を出すことが重要だと強調されました。この講演により、日々の悲惨な事件を聞くたびに、解明にあたる谷田部さんの姿を思うことでしょう。卒業生が使命感をもって、社会に貢献されている姿は非常に眩しく、同時に誇り高いです。
本校の検査技師養成課程の歴史は50年、これまでに輩出した技師数は2000名です。栄養学を学ぶ重要性、栄養士資格をもった強みを存分に活かした女子栄養大学の伝統は、今後も受け継がれていきます。
香川明夫学長と谷田部和子氏
講演後全員で
報告:井越尚子(微生物学・臨床検査学研究室 学部昭和56年卒)