コロナ禍の中で~卒業生の職場では~

沼田 美里

東京農業大学第一高等学校・中等部(東京都世田谷区)
家庭科教諭
学部平成25年卒業


 高校の所属ですが高校生だけではなく、併設校の中等部でも家庭科の授業を担当しています。私は専任教諭のため、高校生を一緒に担当する非常勤教諭との打ち合わせも授業とは別におこなっています。また、中等部は技術家庭科ですので、技術科の教員との連携を大切にし、TT(ティームティーチング)では授業にも参加しています(中3は技術科0.5 単位、家庭科0.5 単位、合わせて1単位分なので年間の前半が家庭科で後半が技術科ですが、TTのためどちらの授業であっても技術科と家庭科の教員が授業にいます)。今年度は育児短時間勤務のため、担任は持たずに学年担任として週休日の担任の代理担任として朝や帰りのHRなどをおこなっています。校務分署の生徒会指導部は生徒会活動や学校行事を主に扱う部です。
 令和2年は3月2日から臨時休校となり生徒の登校は禁止になりましたが、教職員は成績処理や新年度準備で通常通りに出勤していました。しかし、4月の緊急事態宣言後は校内でしかおこなえない業務がある場合のみ、校長の許可を得ての出勤になりました。それ以外の仕事や公共交通機関を利用しないと出勤できない教員は在宅勤務となりました。4月はどの教科も課題配信をおこない、担任はzoom等を使用して生徒との個別面談やHR(始めは小グループごとや男女に分かれてなど)も実施していました。職員会議や学年会、教科会もzoomでおこないました。5月からはオンライン授業用に時間割が組まれ、国社数理英ではzoomやClassi等を使用した授業がおこなわれるようになりました。家庭科を含めた実技教科は課題配信が継続され、1週間ごとにウェブコミュニケーションツール(本校では「ウェブでお知らせ」を使用)の掲示板へ配信しました。5月末の緊急事態宣言解除後、教職員は通常通りの出勤となり、生徒も6月1・2週目は分散登校、3週目から短縮授業での一斉登校へとなり家庭科の授業もスタートしました。
 6月からの学校再開後はマスク+フェイスシールドもしくはマウスシールドを着用していましたが、2学期からはマスクのみに変更されました。例年、2学期は9月からの開始ですが今年度は8月下旬からになりました。年間行事は体育行事や合唱コンクールなどが中止に、中3や高2の修学旅行は延期に、宿泊研修は時期や内容が変更になりました。9月に予定していた学園祭は初のオンライン上での実施に変更しました。学年行事の芸能鑑賞教室は11月に実施できた学年もありましたが、3学期に実施予定だった学年は中止になりました(開始時期が早く、行事が少なくなったため、例年の2学期よりも授業回数は多くなりました)。家庭科ではグループワークができないため年間授業計画を見直して内容の変更をしました。調理実習や保育実習については中止にしました。そのため、織物の実習、インテリアコーディネート計画、立体のオリジナル住居製作、幼児向けの絵本作り、高齢期の視力・聴力体験などの個々で取り組める実習を増やしました。
 コロナ対策として、学校再開後から新しい方式として現在も継続されていることは以下の通りです。

  • 生徒、教職員は毎朝、検温等について健康観察アンケートに回答するようになりました。校内では全員マスクを着用しています(体育の授業時は除く)。
  • 授業時間は通常50 分ですが45 分の短縮授業、トイレが混み合わないように休み時間は15 分(通常は10分)が6月4週目から現在も継続されています。最終下校時刻が繰り上がりました(1月になり、部活動も中止となりさらに繰り上がりました)。
  • グループワークはおこなえませんが、(2学期から)距離をとって隣同士や90度の向きであれば短時間の話し合いがおこなえるようになりました。
  • 中等部は前を向いて話をせずに昼食をとるように指導しています。高校でも1月から中等部と同様に昼食の指導がおこなわれています。
  • 放課後は教員がホームルームクラスや共有スペースの消毒作業をおこなっています。
  • これまで職員会議のときには講義室へ教員全員が集まっていましたが、5月末の緊急事態宣言解除後からはzoomを使用して全員が集まることなくおこなわれるようになりました。
  • 始業式や終業式は体育館でおこなわず、教室のモニターに映して実施しています。

 コロナの影響により、通常の授業計画から大きく変更する必要がありました。それにより具体的に実施した授業内容は以下の通りとなります。

[中1]
郷土料理について調べることは例年も実施していましたが、今年度はパワーポイントでまとめと発表を2月におこないます。
[中2]
2学期後半に、環境の分野の内容で初めて手編みでアクリルたわしの製作をおこないました。
[中3]
保育分野で、食品ワッペンの製作までは例年おこなっていましたが、2学期にその食品を主人公とした絵本を製作し、一人ひとり読み聞かせの発表までおこないました。
[高校(本校では高2の1年間のみで、2時間連続の授業です)]
衣生活の分野で1学期に織物の実習を取り入れました。2学期には今まで扱ったことがない高齢者分野にも挑戦しました(予想していた以上に生徒が関心を持ち、考えて授業に参加していたので、来年度も高齢者分野を扱う予定です)。中・高で1つの調理室を使用しているため例年では調理実習で調理室はほとんど空いていません。今年度はどの学年も調理室を使用していないため、そのスペースを利用し、取り組むタイミングを計っていた立体のオリジナル住居製作授業をおこないました。完成した作品(A3サイズで、高さが7㎝程度)を全て調理室に保管することもできました。

 

 上記のように家庭科としては新しい取り組みにチャレンジができる期間でもありました。また、グループワークができない点は授業展開としては痛い部分ではありますが、ICTを活用するなど、学校自体がウィズ コロナに向けて対策を進めています。
 本校は2年前の新入生からタブレットを入学時に購入しており、高校生は今年度より授業等でデジタルデバイスが使用できるように環境を整えています。これらの活用できるものを上手に利用して、授業の方法を今後さらに工夫していく必要があると感じています。
 子どもたちの成長をサポートができ、新しいことの発見や気付きがたくさんある家庭科教諭の仕事はとても魅力的です。教職員も生徒もコロナ対策をしながらの学校生活に始めは戸惑いもありましたが、校内一丸となって問題を考え、新しい学校生活の方法を作り、解決するという経験ができました。学校ではコロナに限らず、生徒指導、進路指導など様々なことが毎日あります。リモートワークでの働き方ができる職業ではないですが、今後も栄養大学から多くの後輩が家庭科教諭として活躍してくれることを期待しています。