令和7年度 食文化栄養学実習

藤倉純子ゼミ■健康情報科学研究室


それ、料理嫌いにやらせて下さい!
四群点数法を利用した献立提案HP・食育ゲーム作成

   私は料理をすることが好きではない。その一番の理由は毎日の献立考案が億劫だからだ。しかし外食ばかりでは健康を損なうばかりか、家計の逼迫も懸念される。そこで私は、健康への近道である四群点数法を利用した「スマートフォン向け献立提案ホームページ」を作成し、料理嫌いを克服しようと考えた。さらに当実習での成果物が家族や友人等にとっての健康増進の一助となり、共に健康寿命を延ばすツールとする目標も掲げている。そのため献立提案の他に、四群点数法を学習できる食育ゲームも作成することとした。対象は10~30代の男女、ゲームに慣れ親しんでいる世代や料理嫌いの人、自炊はするが頻度が高くない人、大人や中高生への食育、そして料理嫌いの克服を目的とする。
   食育ゲームに関する文献や人気献立アプリ、検索エンジンを利用した先行研究の調査をし、四群点数法学習ゲームを『Scratch』 にて、(1)食品の群別仕分けゲーム、(2)料理の食材当てゲーム、(3)1日分の献立(主菜・副菜・汁物等)作成・評価・プレイヤーの食事摂取基準と比較するゲームを作成した。またその有用性を確かめるため10月にはJ大学1年生にゲームを実施してもらい、高大連携校の高校2年生には、ゲームを利用した食育授業を行った。ゲーム実施前後のアンケートは、第2群の分類や、主菜の食品を選択させる設問をクイズ形式で設けた。分類の選択肢は、チーズ・卵・魚・豆腐・きのこ・わかめ・米・砂糖で、魚と豆腐の両方を選択すると正解、主菜選択では、からあげ・食パン・ポテトサラダ・味噌汁・りんごで、からあげが正解である。大学生は授業で四群点数法を学んでいるためか、ゲーム実施後は分類が正答率57%と、20%の上昇、そして主菜選択は正答率63%と、12%上昇したためゲームによる復習で上昇したと考えられる。しかし高校生の正答率は分類が13%、主菜が52%であるものの、正答数がほぼ同数のため、前知識が無い状態かつゲームの実施時間が短い場合はすぐに効果が出ないとわかった。またゲームの評価では「四群点数法が理解しやすく、程よい難しさで楽しく学べた」とあったが、ゲームの進めづらさや反応の悪さ等、操作性に難があるという意見もあった。
   献立提案ホームページは『WordPress』と『SWELL』にて作成し、食育ゲームはホームページからアクセスできるようにした。使用する食材や「カルシウム多め」といった方向性を指定できる他、1週間分の献立を一気に決め、買い足す必要のある食材をリストアップする等、利便性を追究した。

郷土料理を効率よく伝承しよう!
加賀料理を未来に残すためのYouTube動画制作

   私は祖母から「郷土料理を旅館で出していたが、次の世代に伝承出来なかった」と聞き、料理を効率よく伝える方法を考え、動画による情報発信をすることにした。
   文献調査では、石川県の気候や文化、郷土料理を調べた。石川県の郷土料理に良く使われている昆布やにしんは北前船の影響が強く出ていること、浄土真宗を信仰していた背景から精進料理の一種である報恩講料理の影響や、前田藩の厨房を担当していた舟木伝内による食事や、なすのオランダ煮などの明治以降から発展した料理など多種多様であることがわかった。フィールドワークでは加賀を訪問し、祖母の同僚の方のインタビューで当時の旅館の様子や厨房で大変だったこと等伺い、旅館で提供したレシピを頂いた。割烹料理屋で、郷土料理について板前に伺った。「郷土料理」を定義することは難しく、多少材料が異なっていても家庭の味として親しまれている料理も郷土料理の一つになることを理解した。酒蔵の見学では杜氏に日本酒と現在の業界について学んだ。
   SNSの動画制作にあたり、料理系YouTuberのGenの炊事場さんや石川県出身のタレントのビヨン酢さんから主に動画や番組の制作の現状について伺い、また、既存の料理動画のサムネイルを参考にし、YouTubeで「郷伝ch」を作成した。「郷土料理を食卓に一品」をコンセプトとした。石川県出身の30代〜40代女性をターゲットにし、レシピや豆知識、日本酒とのペアリングを知ることが出来る動画を作った。
   編集はCanvaを使用し、BGMは石川県の魅力を伝えるために民謡の山中節を使った。2分弱の動画で、自己紹介、レシピ編(治部煮、きしず、納豆汁)と豆知識編各3本、番外編で初心者向け飾り切りの計9本の動画を投稿した。
   動画の評価を得るためにJ大1年生(n=69)にアンケートを行った。材料の記載を入れた方が良い、動画のテンポを早くしてほしいなど様々な意見を頂いた。動画アナリティクス(10月14日現在)では視聴者層は男性44%女性55%、年齢は25〜34歳が一番多い。視聴回数は多いもので「納豆汁」のレシピ編が1600回再生であった。
   アンケート結果(n=84)から61%と半数以上が、動画が見やすい・分かりやすいと回答した。郷土料理を実際に作ろうと思ったかは53%、郷土料理や石川県・郷土料理に興味を持つ人は77%だった。動画の改善点はありながらも郷土料理に興味を持った事が伺えた。今後も動画を改善、伝承するための工夫を凝らし、情報発信をしていきたい。

愛犬が喜ぶ健康レシピの作成

   いつも同じドッグフードを食べている様子を見て12歳の愛犬が喜ぶごはんを作れないかと考えた。きっかけは健康診断で肥満と診断されたこと、脾臓ノウ胞があり経過を見ていること、一時期、理想体重が6.5kgのところ、9kgもあったこと、高齢になって進行性網膜萎縮症になり、いろいろな所にぶつかるようになったことである。犬の食事にはAFFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準を満たした総合栄養食がある。日本ではペットフードや犬のおやつは、食品衛生法の対象ではないため、法的には食品として扱われておらず、人間が食べる対象ではないため、安全基準は最低限にとどまっている。喜ぶだけではなくて、安全安心なごはんを食べて健康に長生きしてほしいと考えた。
   そこで、自己流でレシピを考えていたが、正確な犬の健康維持に不可欠な食事と栄養管理の知識を学ぶ資格「犬の管理栄養士(全日本動物専門教育協会(SAE)認定)」を取得し、手作りレシピを作ることにした。禁忌食材に気を付けながら、たんぱく質源では、鶏肉、豚肉、鮭、鮪、豆腐、納豆等を中心に野菜(ブロッコリー、にんじん、キャベツ、トマト等)、出汁は、かつお節、昆布を使用し原則冷蔵庫の中にある食材でレシピを考案した。また、手作り食メーカーのレトルトフードや犬の食事を提供しているカフェやペットと泊まれるホテルを複数訪問し、メニューを実際に試食した。盛り付けの美しさ、食材の利用方法も参考にした。「愛犬が喜ぶ」とは、食いつきの良さや汁物は美味しくても時間がかかるので秒数では表現できないが、食べ残したものが無い様子と定義した。手作り食の食いつきは、いつも食べているドッグフードと比べとても良かった。一方、オートミールを使ったメニューは、口に合わないもの、体調に合わないものとして、お腹を壊すという症状が起こった。手作り食をはじめてから、台所で作っている音で自分の食事を作っているのが分かって起きてくるようになった。元々、外ではあまり歩かなかったため、室内での遊びを1日平均1.5時間取り入れて身体を動かすようにした。手作り食と運動の結果 7.2kgまで体重を落とすことができた。
   この実習を通じて、食べる楽しみは犬も同じ、栄養の偏りがないように1日2食のうち1食を手作り食とし、健康で長生きのために手作りごはんを継続して提供していくことが重要であることがわかった。作成したレシピを料理サイトに公開し、今後も他の愛犬家にも情報提供していきたい。