令和7年度 食文化栄養学実習

奥嶋佐知子・神保夏美ゼミ■調理学研究室


米の魅力を伝える生米スイーツ

   私は幼いころから米が大好きだ。近年は、米粉を使用した商品や米粉パンや米粉ケーキ専門店なども数多くオープンし、人々の米粉の需要は高まっている。しかし、米を使用したスイーツというと、すでに製粉された米粉を使用したレシピが多く、生の米粒を使用したレシピは少ないため、生の米粒を使用してスイーツを作ることが出来ないのだろうかという疑問が生まれた。これらのことから、研究では、生の米粒を使用し、米本来の味や風味を感じることのできるスイーツのレシピを作成し、主食としての食べ方以外の米の美味しさや魅力を伝えることを目的として取り組んだ。
   奥嶋・神保ゼミでは、焼き菓子をメインに提供する学内カフェ「Café Céleste」(カフェセレスト)の運営を行った。プレ営業と本営業を各2回計4回行い、前期の営業では「まるでお煎餅?新感覚生米スイーツ」生米を使用した小さいマドレーヌをあんこホイップにディップして食べるプレートを提供した。プレ営業でお客様からいただいた意見を取り入れ、本営業ではあんこホイップの甘さを控え、注文後にリベイクして提供した。リベイクすることで、より外側のサクサクとした食感と内側のモチモチとした食感を楽しむことのできるプレートを完成させることができた。後期の営業では「夏の生米クレープ~キウイソースとヨーグルトクリーム~」生米を使用したクレープ生地にキウイのソースとヨーグルトを使用したクリームを付けて食べるプレートを提供した。喫食者アンケートでは、「卵の割合が多い」、「ヨーグルトクリームの甘さが強い」といった課題点が挙げられた。本営業ではプレ営業での課題点をふまえ、クレープ生地の卵の割合を減らし、ヨーグルトクリームの砂糖の割合を減らしたことで、米のモチモチとした食感と米の優しい甘さを感じることのできるプレートを完成させることができた。
   発表会では、計4回の営業内容、喫食者アンケートからの改善点、研究目的の達成などについて発表する。

四季のエディブルフラワー
四季のエディブルフラワーを使用したタルト提案

   エディブルフラワーとは、農薬を使わずに育てられた食用花を指します。私は幼い頃から花を使った紅茶やお菓子に親しみ、季節感や香りを楽しんできました。そこで、本研究ではエディブルフラワーの魅力を多くの人に伝えることを目的とし、四季をテーマにしたスイーツの試作と学内カフェでの提供に取り組みました。
   これまでのゼミ活動では、タルト生地の比較や花の食感・風味の調査を行い、食べやすさを意識して試行錯誤しました。エディブルフラワーは一般的に飾りとして使われることが多いですが、私は「見て楽しむだけではなく、美味しく食べてほしい」と考え、香りや酸味、食感を活かせるように組み合わせを工夫しました。奥嶋・神保ゼミでは「Café Céleste」という店名で学内カフェを運営し、各自がテーマに沿った焼き菓子を提案・提供しました。営業はプレ営業・本営業を合わせて全4回実施しました。第1回目は「春」をテーマに、バラといちごを組み合わせたタルト、第2回目は「初夏」としてバラ・なでしことさくらんぼを組み合わせたタルト、第3・4回目は「夏」としてベゴニア・ペンタス・ランタナのいずれかの花を使用し、レモンタルトと組み合わせて、さっぱりと仕上げました。試作や営業を重ねる中で、季節の花と果物を組み合わせる難しさ、人によって異なる「季節感」の捉え方、また気候変動による猛暑や大雨の影響で予定していた花が入手できないといった課題もありました。しかし、その都度工夫を重ねることで、四季を意識したスイーツづくりの奥深さやエディブルフラワーの新しい魅力を実感することができました。
   喫食者のアンケートでは、「花が食べやすかった」「香りがほんのりして良かった」といった声が多く寄せられ、食べやすさを意識した工夫が伝わったことが分かりました。一方で、季節の花や果物を使用しても、1回目の営業では「季節感があまり感じられなかった」という意見もありました。そのため、販促物で花の説明を加えたり、盛り付けの色合いや食材の組み合わせを工夫することで、2回目の以降の営業では「季節を感じられた」という声が増えていきました。このことから、花の旬を知らない人も多いため花の旬を伝え、盛り付けや使用食材を工夫することで、エディブルフラワーは季節を表現できる食材になると考えます。
   今後は、花の種類ごとの特徴をより深く理解し、香りや風味を活かしたデザートの開発に発展させていきたいと考えています。

ゆずの利用可能性を見つける洋生菓子

   私は、3年次に学園内留学の制度を利用し、香川調理製菓専門学校で製菓について1年間学んできた。講師に来ていただいたシェフの中にゆずを主役にしたケーキを作っている方がいた。そのケーキは、ゆずの形をしていて、ゆずのムースやコンフィで構成されており、食べた時においしさに感動して、自分でもゆずを使用したケーキを開発してみたいと考えた。そこで、本研究ではゆずを主役にした洋生菓子を作り、洋生菓子を通してゆずのお菓子作りへの可能性を見出すこととした。またゆずの爽やかな味を冬だけでなく、夏の暑い時期にも味わいたいと思い本研究でのキーワードを、「家庭で年間を通して食べることができる」とした。そのため、小売の製菓材料店で購入ができるゆず果汁とゆずピールを使い、再現性の高いレシピを考案することとした。
   奥嶋・神保ゼミでは「Café Céleste」という店名で学内カフェを運営してきた。各自のテーマに沿って、菓子の提案、カフェでの提供を行った。カフェ営業全5回行い、私はその内3回菓子の提供をした。タルトの土台となるクッキー生地とアーモンドクリームは、専門学校で得た知識をもとにゆずの果汁とピールを使用したものにアレンジをした。1回目の営業では、「ゆずの星屑タルト」を提供した。タルトの上にゆず果汁をたっぷりと使用したムースをのせ、上に崩したゆずゼリーを星屑に見立ててトッピングした。2、3回目の営業では、タルトの上にゆずのシューアイスをのせた、「ゆずのシューアイスタルト」を提供した。シューのカスタードクリームにゆず果汁を加え甘すぎずさっぱりとした味に仕上げた。夏の営業ではクリームを冷凍させてアイスとして提供したが、カスタードクリームとしても食べることができるレシピにした。
   本発表では、タルトのレシピ考察の取り組み、喫食者から頂いた評価、カフェ営業を通して得られた成果などについて発表する。今回、ゼミ活動を通して行ったレシピ開発は、私が今後取り組みたい商品提案や企画プロデュースに活かせると考える。    最後に、カフェ営業にお越しくださった皆様ありがとうございました。

癒しスイーツの提案

   私は、疲れている時や嫌なことがあった時にスイーツを食べることで癒され、幸福感を得ることが多くあります。この経験から、日々のストレスを和らげ、心を癒すようなスイーツを提供したいと考えました。そこで本研究の目的を、味・香り・食感・見た目を工夫し、食べた人がリラックスし、ほっとできるスイーツの提案を行うこととし、学内カフェに来てくださったお客様が、日々の疲れやストレスを少しでも忘れ、穏やかなひとときを感じられるスイーツの提案を行いました。
   奥嶋・神保ゼミでは「Café Céleste」という店名で学内カフェを運営し、各自がテーマに沿った菓子を提案・提供しました。営業は、プレ営業と本営業をそれぞれ2回ずつ、計4回実施しました。
   前半の営業では「カモミールのやすらぎパウンドケーキ フルーツティー付き」を提供しました。リラックス効果のあるカモミールを生地に使用し、華やかさを添えるためにエディブルフラワーをトッピングしました。生地は、製法や焼成温度・時間を調整することで、しっとりとふんわりした食感に仕上がるよう工夫しました。このやさしい食感がカモミールの風味と調和し、より穏やかな印象を与えることを目指しました。また、柑橘とベリーを用いた爽やかで甘酸っぱい香りのフルーツティーを合わせることで、より心身を落ち着けられる組み合わせを提案しました。すっきりとした後味がカモミールのやさしい風味を引き立て、全体として心地よいひとときを演出しました。
   後半の営業では「レモンラベンダーのパウンドケーキ」を提供しました。心を落ち着かせる効果のあるラベンダーを生地に用いました。しかし、ラベンダー単独では風味が強く食べにくかったため、レモンの皮をすりおろして加えることで爽やかさを取り入れ、バランスを整えました。加えて、レモンアイシングとオレンジピールをトッピングすることで爽やかさを強調し、ラベンダーをより親しみやすくしました。さらに、夏に合うさっぱりとしたアイスとエディブルフラワーを添え、季節感と華やかさを演出しました。
   本発表では、これまでの試作や営業を通して得られた課題点や改善点、喫食者アンケート結果と考察、癒し食材による効果について報告します。

セイボリータルトを広める
Café Céleste

   奥嶋・神保ゼミでは、各自がそれぞれのテーマに沿ったタルト・パウンドケーキを提案し、学内カフェにて提供する活動を行ってきました。店名である「Céleste」はフランス語で「天空の」という意味があります。天空をイメージした店内で焼き菓子を提供しました。
   個人テーマはセイボリータルトと設定しました。タルトといえばデザートのイメージが多くあると思いますが、塩気のあるタルトという意味のセイボリータルトもあり、カフェやパーティといった様々なシーンで楽しむことができるタルトです。本研究ではセイボリータルトの認知度向上、美味しさを知ってもらうことでタルトの可能性を広げることを目的とし、お食事系のセイボリータルトの製作に取り組みました。
   まず、セイボリータルトの認知度を調査するために本学の食文化栄養学科の1、4年生を対象にアンケート調査を実施しました。
   学内カフェ営業では全3回、2種類のセイボリータルトを提供しました。1回目のメニューは「ゴロッと具材のたまごサラダタルト」です。さっぱりとした味わいでペロリと食べることのできるタルトに仕上げることができました。2回目には「ゴロッとチキンの照り焼きタルト」を提供しました。満足感のある具材の大きさや味付けになるよう工夫しました。3回目はオープンキャンパス開催日に1回目と同様の「ゴロッと具材のたまごサラダタルト」を高校生に向けて提供しました。1、2回目と異なる年代にアンケートを実施することができ、貴重な意見を得ることができました。2種類どちらのタルトについても「初めて食べたが美味しい」という意見を多数もらうことができ、認知度向上や美味しさを知ってもらうという目的達成に近づくことができたと考えます。
   本発表会ではこれまでの試作や学内で行った認知度調査、カフェ営業を通じて得られたアンケートの結果と考察、レシピ考案の取り組みについて発表します。

野菜のタルト
Café Céleste

   みなさんは毎日、野菜をどのくらい食べていますか?厚生労働省が定める1日の野菜摂取目標量は350gとされていますが、実際には多くの日本人がこの目標量に達しておらず、約100gが不足していることが現状です。そこで本研究では、その不足分の約半分にあたる50g程度の野菜を補いながら、スイーツとして楽しむことができる「野菜のタルト」を提案しました。
   奥嶋・神保ゼミでは、パウンドケーキとタルトを提供する学内カフェ『Café Céleste』の営業を行ってきました。Célesteにはフランス語で「天空」という意味があります。カフェの内装には、雲や花を設置し、自然を感じられる空間で、お客様がゆったりと過ごせる雰囲気を演出しました。
   学内カフェでは計3回、2種類の野菜のタルトを提供しました。1回目の提供では、カフェ営業月である6月から旬を迎える赤パプリカを使用した「野菜を甘くおいしく食べるパプリカのムースタルト」を考案しました。試作を通して、タルト全体の味のバランスや赤パプリカの赤色を活かすことにこだわりました。その中で、パプリカ特有の青臭さが残ってしまうことが課題点として挙げられたため、加熱方法を電子レンジからオーブンに変更し、加熱後に皮をむくことで、青臭さを抑え、甘さを引き出すことができました。さらに、パプリカのコンポートをトッピングして甘いタルトに仕上げました。
   2回目の提供では、夏から旬を迎えるナスを使用した「野菜を甘くおいしく食べるナスのチーズタルト」を考案しました。ナスはスイーツにするには水分量が多く、形が崩れやすいので、電子レンジ加熱したナスの皮をむき、ミキサーでペースト状にしてからチーズタルトに使用しました。さらに、キャラメリゼしたナスをトッピングすることで、見た目のナス感をプラスしました。
   本発表会では、これまでの試作の過程で工夫した点やカフェ営業を通してお客様から頂いたアンケート結果をもとに、研究目的である「野菜をスイーツとして楽しみながら不足分を補うこと」が達成できたのか、また、今後の展望について考察したことを発表します。

ちょっぴり大人な洋酒パウンドケーキ
Café Céleste

   私は、洋酒を使ったお菓子の風味と特別感が好きである。中でも特にラム酒入りの焼き菓子が好きで、洋酒の風味をさらに活かせる焼き菓子は作れないか、そしてその魅力をたくさんの人に知ってもらう方法はないかと考え、研究の目的とした。
   奥嶋・神保ゼミでは「Café Céleste」(カフェセレスト)という店名で学内カフェを開き、各自のテーマに沿って全4回の営業を行った。前半の営業では「プレーン&ラム酒の食べ比べパウンドケーキ」を提供した。試作では、ラム酒の風味をより感じられるよう、粉の種類や配合、ラム酒の打ち方などを比較・検討した。そしてプレーンとの食べ比べにすることで違いを分かりやすくすると同時に最後まで楽しめるプレートを目指した。後半の営業では「洋酒を楽しむパウンドケーキ(ラム&キュラソー)」「オレンジパウンドケーキ~バニラアイス添え~」を提供した。後半はパウンドケーキの中にラムレーズンやオレンジピールを入れ具材からも洋酒を感じられるようにした。基本配合から粉の種類を変更し生地を軽くしたために、具材が沈んでしまうなどの新たな課題も浮上したが試行錯誤して完成させた。8月に最後の営業で提供したオレンジパウンドケーキは、爽やかさとオレンジリキュールの風味を活かした夏らしいプレートを提供することができた。
   お客様からいただいたアンケート結果から、洋酒の香りがよく、食感や中に入れた具材との相性も良かったことが分かり、洋酒の風味を活かしたパウンドケーキを作るという目的は概ね達成できたと考えられる。また、「洋酒入りのお菓子をまた食べたいと思う」という回答が多かったことや「今まで洋酒の味をあまり知らなかったが、美味しく食べられた」といった感想もあり、学内カフェでの提供を通して、洋酒入り焼き菓子の魅力を伝えることができたのではないかと考える。
   本発表会では、これまでの試作や営業を通しての課題や改善点、喫食者アンケートの結果と考察について発表する。

お茶を楽しむタルト
ルイボスティー・ジャスミンティーとのペアリング

   私にとって身近なお茶のルイボスティーとジャスミンティー。近年はペットボトルでも見かけるようになり、身近なお茶になりつつあり、飲んだことがある人もいるのではないでしょうか。皆さんは普段の食事の中でどのくらいペアリングを意識しますか?食べ物におけるペアリングとは、別々に食べたり飲んだりしても美味しいものが組み合わさることで、互いの味わいを引き立てあい、相乗効果を生み出す組み合わせのことです。コーヒーやワインなどは有名ですが、ルイボスティーやジャスミンティーとスイーツのペアリングは珍しいのではと思い、メニューを考案し、ルイボスティーとジャスミンティーの魅力を広めたいと考えました。ペアリングメニューを考案するにあたり、様々な菓子の中でも難易度の高いタルト作りの技術向上の点と生地やフィリングの種類の豊富さの点から、タルトを選択しました。
   奥嶋・神保ゼミでは、各自がテーマに沿った菓子を提案し、学内カフェで提供しています。今年の店名は「Café Céleste」です。フランス語で天空のカフェという意味で雲や花などを飾り、自然をイメージした落ち着いた空間作りを行いました。
営業は計4回実施し、1、2回目の営業ではルイボスティー、3、4回目はジャスミンティーとのペアリングに取り組みました。1回目の営業ではペアリングの原則の「食材の類似性と産地を合わせる」という観点からグレープフルーツとネーブルオレンジを使用しました。どちらもルイボスと同じ南アフリカ共和国原産です。グレープフルーツとルイボスのさっぱりした味わいがお互いを引き立てあうタルトが完成しました。2回目はネーブルオレンジのみを使用し、ネーブルオレンジの甘さとルイボスの独特な酸味がマッチするオレンジたっぷりのタルトを作りました。3、4回目のジャスミンティーとのペアリングでは、ペアリングの原則の「味のコントラスト」の観点から白桃を、「食材の類似性」の観点から抹茶を使用しました。
   本発表では、2回目の営業以降の試作・提供の様子、喫食アンケート結果について発表いたします。

甘味と塩味を堪能できる新感覚プレートの提案

   私は自身の食行動を振り返った際に、甘いものの後にしょっぱいものや、その逆も食べたくなる味覚の欲求に興味を持ちました。そこで、甘味と塩味をそれぞれ主とした二種類のスイーツをワンプレートで提供すれば、「甘い」「しょっぱい」、組み合わせて「甘じょっぱい」を交互に味わえて味覚の欲求を満たせるのではないかと考え、甘味と塩味を堪能できる新感覚プレートの提案を研究テーマとして取り組みました。
   奥嶋・神保ゼミでは『Café Céleste』という店名で学内カフェの運営を行っています。計4回の営業を行い、前半の5、6月の営業では「甘味のバナナタルトと塩味のピーナッツムース」を提供しました。バナナタルトは、ホイップクリームとカスタードクリームの二層のクリームに果物の中でも甘味が強いバナナをトッピング、上からキャラメルソースをかけることでより甘さを感じられる一品に仕上げました。ピーナッツムースは、なめらかなピーナッツムースの上に濃厚なピーナッツペーストとピーナッツをトッピングし、異なる食感でピーナッツの魅力を楽しめるように工夫しました。後半の7、8月の営業では「甘味のメープルホワイトチョコタルトと塩味のベーコンチーズケーキ」を提供しました。メープルホワイトチョコタルトは、ホワイトガナッシュの上にホイップクリーム、メープルバターをトッピングすることで、口溶けが良く、しっかりとした甘さを感じられるように工夫しました。ベーコンチーズケーキは、チーズケーキにベーコンを加えて焼き上げ、濃厚でベーコンの塩味がアクセントとなる一品に仕上げました。試作を行う中で、特に塩味スイーツの塩味が強すぎてしまうことに課題がありましたが、お客様の評価を基に塩分の割合や提供する量の調節を行い、単品でも美味しく食べていただけるように改善していきました。
   本発表では、これまでの試作や営業を踏まえて学んだことや工夫したこと、お客様からいただいた評価をまとめ、そこから得られた気づきや自身の考えを発表します。