令和5年度 食文化栄養学実習

山下史郎ゼミ■フードマーケティング研究室


味覚表現のなぞ
─その味覚表現で味や食感が想像できますか?─

店頭で食品を見ると多様な味覚表現がされています。辛さレベル5、甘酸っぱい、など。とはいえ食品メーカーごとで、辛さレベルは異なるし、甘酸っぱいなどもどの程度なのか、実はよくわかりません。この混沌とした味覚表現の世界に疑問を抱きました。食べた後に後悔したくないという強い願望のもと、統一された味覚表現があれば、その商品を食べた経験がなくても、味や食感の想像が今以上にできるのではないかと考えました。この統一尺度の可能性を探るために、幾つかの食品企業にヒアリングを行っています。その結果を報告することと、今後の尺度づくりの具体的な計画についてお話しします。

食事に没入してみた
─心整える食事法 マインドフル・イーティング─

食事を集中して食べていますか?スマホやテレビや会話に気を取られて「ながら食べ」になっていませんか? 調べると、食事に意識を向けじっくり味わって食べる「マインドフル・イー ティング」(以下「ME」と表記)が提唱されていることがわかった。MEはダイエットと関係づけて語られることが多いが、食と向き合う新たな食体験として提案できないかと考えた。とくに身体だけでなく、心を満たすことに焦点を当てた食体験として「心のご自愛食」と名付けて提案しようと考えている。今回はMEの基盤であるマインドフルネスを体験して学んだことや、ご自愛という概念について発表する。

おいしさを求めない料理写真
─トイカメラで料理は変身する─

料理写真は料理の美味しさを視覚で伝えてくれます。繊細さ、色表現の正確さ、光などを正確に捉える、被写体の再現性の高さが必要です。しかし、トイカメラの被写体の再現性は高くありません。色が過激に表現されたり、質感の感じ方に変化が生まれたり、歪みやピンボケが生じたりします。目で見たものをそのままに撮れないことがトイカメラの魅力であり、楽しみ方であると考えます。私はこのトイカメラを通じて、美味しさ以外に価値のある料理写真を撮りたいと考えています。今回は料理写真に必要とされる光や色、トーンの持つ力、また印象派の絵画に焦点を当てて報告をします。

オノマトペ・メーカー
~新食感を共有できる言葉は作れるか~

皆さんは、ぬれせんべいの食感を言葉で上手く表現できますか。ゼミ生で意見を出し合ったところ、「もにもに」「しなしな」などが挙がりましたが、全員が納得するものはありませんでした。ほかにも麩菓子やゆで卵、しけっているものなど言葉でうまく表せない食感があることに気が付き、まだ普及していない「オノマトペ」を生み出すことを研究の柱にしようと考えました。オノマトペは日本語独自の表現方法で、使い方には個人差が大きいです。最終的には複数人で新しいオノマトペを楽しみながら生み出せるカードゲームやボ ードゲーム等を作成し、まだ見ぬオノマトペをつくることを目標としています。

ケーキ・ビルディング
─建築物としてのスイーツの可能性を考える─

名手が作るケーキは、スポンジやクリームの組み合わせの相性の良さや幾何学的な美しさが味わえる。その理由は、建築物を作るような構造の視点からつくられているからではないかと考えた。そこで“建築学(建築技術)”の手法を応用することで、ケーキの層の位置・形状・材質の特性を生かす、より高度に構造化されたケーキが作れるのではないかと仮説をもった。今回は、建築学の基礎となる構造や素材等について調べたことや、製菓材料の特性や香りの相性といった食品に関して調べたことを報告する。今後は、建築材料と製菓材料との対応関係を整理することで新しいケーキの作成に挑戦していく予定である。