令和5年度 食文化栄養学実習

平野覚堂ゼミ■ビジュアル・コミュニケーション研究室


散歩道にあるそれ食べられるんじゃね

日頃道を歩いていると、道端には草があり虫がいる。このものたちも、もしかしたら食べられるかも しれない。しかし「なぜ人は食べ物として認識しないのだろうか」とふと考える。 現代の私たちは 多くの食べ物に囲まれ自由に選択することができる。しかし、だからこそ未知のものを選択する必要 がなく、固定概念を抱きやすい。そこで、雑草や昆虫など身近な食材を使用した料理を作成し、新たな美味しさを知る楽しさを表現したい。そして、この研究が今当たり前にある食べもの全てにおいて 視野を広げる機会になり、「新たな美味しさに出会うことは楽しい」と感じてもらえるようにしたい。

「香り」の重要性を認識するためのお店

「香り」は食事において料理のおいしさを感じる重要な要素である。しかし、残念ながらこの「香り」を十分に味わうことや感じることが出来ない人がいる。そこで、料理の味と「香り」を十分に感じてもらい、その重要さも理解してもらえるお店を作ることにした。 具体的には、料理の主となる食材の香りが際立つ料理とはどの様な物か、それはどの様にすればできあがるのか考察し試作してポップアップストアにてその達成度をみる。また、視覚による香りの感じ方や複数の香りによる感じ方についても考察し、これらの要素を参考にどの様な食空間で特定の香りを強く感じることが出来るかを検証してみる。

消費と選択
─レシートを次の購買に活かしたい─

食べものは食べてなくなる。包装も捨ててしまうのがほとんどだ。だから消費を見返すことが難しい。買ったことをどんなに後悔してもまた同じことを繰り返すだろう。味の好みなどによる当たり外れもある。それでも私は同じことを繰り返すのが嫌で見返しもしないのに、買うという選択の結果のレシートが捨てられない。半額だったり、わざわざコンビニでちょっと高く買ったり、たかが紙なのに生々しく感じる。それを戒めのように取っておいてしまう。何らかの形で作品にして向き合えば次に買い物をする時に頭に散らついて「自分が本当に欲しいものを選ぶこと」に繋げられるのではないかと考えた。

フィルムパフェ

映画が好きだ。映画を選び、座席を選び、ドリンクやポップコーンを購入して、上映時間を待つ。映画への期待を膨らませて開演を切望する時間は、一種の座興である。私は、作品を思うことで起こるこの体験と、映画自体に備わっているストーリー性を“パフェ”というツールを用いて再現する。パフェは美しい見た目や味の混ざりを構築的に作られたスイーツである。この構造から、パフェを上から下へと食べ進める流れと時間経過には、映画のストーリーとのアナロジーが見られる。この相似した構成を利用し、いくつかの映画のストーリーを、パフェを使って表現する。

美味しいの伝達革命
─五感を伝える食品概念イラスト─

自分が食べた食品を他人に共有したいとき、多くの人は写真を撮るであろう。しかし、その写真で食品の情報は他人にどのくらい伝わるだろうか。食品を味わうとき、私たちは五感を使うが、写真が伝えられることは視覚情報だけである。逆に、その他の感覚の情報は食べた本人しか分からない。そこで私は本来なら食べた本人しか知らない五感の情報を伝えたいと考えた。その手段として、私は食品の概念イラストを制作した。これは食品の持つ情報を写真より解像度の高い状態で相手に伝えることができる。本研究では、「美味しい」の情報をより伝える表現方法を模索して提案する。

「使い残し」をなくしたい

あなたは綺麗に料理をすることができていますか?私は幼いころから「残さずに食べること」を心がけてきた。それは、両親や学校で「食べ残し=もったいない」と教わってきたからだ。だが、料理をするときはどうだろうか。「もったいない」と思いながらも、習慣的に食材の皮や芯を過剰に切り落とすことがある。あれほど残さずに食べることを心がけていた自分の中に矛盾があると感じた。食べ物には限りがある。「飽食の時代」と呼ばれる今だからこそ、1つ1つの食材を丁寧に、大切にして料理をしたい。作品では食材の「使い残し」を可視化し、「もったいない」を減らすきっかけにしたいと考えている。

食事の未来予想図

私たちは「地域社会や食産業の発展を推進できる食の専門家」になるべく学びを続けています。その学びは「過去」あるいは「現在」と「少し先」であり、なぜか食産業が発展した「未来」について考えることが少ないです。近年、テクノロジーを用いて食糧危機などの課題解決に取り組む事例が増えています。これらは私たちの未来にほぼ確実に取り入れられるものであり、これからの食産業を担っていく者として、食の未来に向けた変革を見逃してはいけないのではないでしょうか。そこで、そのような変革を栄大生向けに発信し、食領域からの脱出を試みることを目的としたワークショップや展覧会を開きます。

私が受け継ぐ家の味

このテーマは私だからこそ美味しいと感じる家の味を、この先も食べていくにはどうしたら良いのだろうか?という疑問をきっかけにした「家庭料理の受け継ぎ方」を模索するものです。私にとって親の作る料理は特別に美味しいと感じる料理です。親の作る料理、つまり家庭料理は、どの家庭にも共通する料理名や作り方があるにもかかわらず、各家庭に存在する固有の料理に見えます。家族というコミュニティ内で食べられるため、その中でのみ共有・理解できる料理が家庭料理です。そうした最も身近で最も貴重な料理ともいえる家庭料理の概念の見直しから、実際に受け継いでいくための方法を実践していきます。

農家が作った芸術作品
─規格外野菜と廃棄される野菜の活用─

生産から流通の過程で出る規格外野菜や廃棄野菜を、消費者が直接目にする機会は少なく、小売店での綺麗に揃った野菜が当たり前に思えてしまう。私の祖父母は農家を営んでいるため、丁寧に作業する姿をよく見ていた。私は、規格に沿った野菜と変わりなく、大切に時間をかけて育てた野菜が出荷されずに、廃棄されたり価格が下げられて販売されていることに違和感を抱いていた。そこで、規格に沿った野菜だけでなく、規格外野菜や廃棄される野菜にも目を向けるきっかけを作りたいと考えた。実際に体験をした農家の作業や背景について伝え、規格外野菜や廃棄されてしまう野菜の活用方法を提案する。

Authentic Sweetsの再構築

私たちが普段目にするスイーツには、それぞれに歴史があり、文化が反映され、様々な要因を経て現在のカタチへと変化してきました。しかし、私たちが想像するスイーツの当たり前は、果たして本当に完成系なのでしょうか。そのスイーツのあるべき姿、或いは、そのスイーツ自体が本来なりたがっている形は、もしかしたらもっと他にあるのかもしれない、今ある固定概念をここらで一旦ぶっ壊し、スイーツの新しいカタチを模索し、創造したいと考えました。過去の歴史や文化から、そのスイーツを構成する要因と根源を見つけ、研ぎ澄まされた新しいショートケーキのカタチを作ります。

今日見たいうんこ

私たちは毎日排便活動を行っている。その行為は習慣化されたものであり誰も気に留めない。以前自分自身のうんこに、いつか食べたブナシメジがその形態を残したままに現れたことがある。流す前に何となく目に留まったブナシメジに私は驚き、わくわく感を抱いた。習慣化された排便行動に、人々は自分のうんこに目を向けることもなく、それを毎日流してしまう。しかし、うんこには楽しいものがたくさん隠されていると私は思う。そこで、本研究ではカードゲームを用いて、日常に隠されたうんこの魅力に気づき、うんこにわくわく感を抱いてもらうことを狙いとした。

新★解体新書
─オペラの解剖を通して─

〇〇のケーキと書かれた札をみては、どんな味がするのだろうかという期待や興味と共に購入する。しかし食べてみると〇〇が分からなかったりすることもある。期待と違った感覚にもやもやする。複雑になり過ぎたケーキを解剖したくなる。それは一体どの材料をどのくらい入れてどのように作られているのだろう。層が多ければ多い程美味しいケーキと言えるのだろうか。美味しいとは一体何なんだろうか。解剖することはそのモノ自身を壊してしまうことになるのだろうか。ありのままでない形のケーキに何か意味を持たせることはできるのだろうか。オペラの解剖を通して考える。

食材にもっと感謝をしよう!
─食品ロスを減らすための取り組み─

消費者の食材に対しての意識が変わることで、食品ロスが減るのではないか、という考えからこの研究は始まった。今では、コンビニやスーパーマーケットなどで簡単に食材が手に入る時代である。簡単に手に入るからこそ、逆に感謝の気持ちが薄れていると感じた。そのような人が感謝について考えるきっかけをつくることが本研究の目的である。例えば今回は、生きていた形がわかりやすい魚介類を中心に、捌くところから調理までその個体自体の表情や形をよく観察し、生前の様子や姿を想像することで食材への感謝とした。食材に興味をもつと、見方が変わるかもしれない。あなたも食材に感謝をしてみませんか?

私は何を選び食べるのか
─あるべき1つの選択肢、アニマルウェルフェア─

ヨーロッパを中心に世界で広がっている「アニマルウェルフェア」という考え方がある。これは人間が動物を利用することを前提として、その動物がストレスや苦痛等を感じることなく快適に生活できるように最大限配慮するという考え方である。本研究の目的は、私自身が何らかの動物性食品を購入する際に、アニマルウェルフェアに配慮した商品を一つの選択肢として加えることである。その商品を必ず購入できなくとも、選択肢の1つとして頭にぱっと思い浮かぶようにしたい。今回は、これまでの調査をもとにアニマルウェルフェアの概要とそれに対する私の考えを発表し、農園への取材を動画で紹介する。