令和5年度 食文化栄養学実習

竹内由紀子ゼミ■食文化研究室


「ほっとする」古民家カフェの魅力とは

近年は様々なコンセプトのカフェがあり、人々はそれぞれにカフェを利用している。その中に、どこか懐かしく温かみが感じられる、古民家を再利用した「古民家カフェ」がある。古民家カフェは、ほっとする雰囲気の落ち着いた空間で、何時間でも居座ってしまいたいような心地良さがある。現在古民家は様々なものに活用されており、古民家を活用した地域振興なども行われている。中でも、古民家をカフェとして転用している例が多く見られる。近代化が進んだ今、なぜ古民家を利用しカフェが作られているのか。古き良きものが活用されている古民家カフェの魅力について検討し、伝えていきたい。

長野県の郷土食は日常食?
おやきから見た郷土食の伝統

私は幼少期からよく祖母と料理をしていた。そこでたくさんの地元、長野県の郷土食を作り、食べていた。隣近所との付き合いも多く、一緒に漬物を漬けたりすることもあった。私にとっては「普通」だったこの経験が、成長するに連れ珍しいことだと知った。そこで、おやきを例に、郷土食がどれだけ地域に根付いているのかを研究することにした。今回は、おやきがどこで販売されているか、郷土食はどこまで日常に浸透いるのか調査を行った。今後は商品間の比較と共に、アンケートやインタビューなどを行い、おやきのバリエーションについて調査する。また、何が求められているのかについても調査を行う。

八丁味噌!食べてみそ? 
八丁味噌の魅力と可能性

古くから日本の食文化と関係の深い発酵食品の一つである「味噌」。元々私は味噌が好きで興味があったが、今回研究テーマに取り上げたきっかけはあるYouTuberの動画だ。その動画で愛知県岡崎市の名産品である八丁味噌が紹介され「名古屋めし」等の料理以外にも使い道があるのでは?と考え、研究に取り組むことにした。しかし、近年八丁味噌はGI制度による名称使用問題が持ち上がっている。さて皆さんは「味噌」と聞いて思い浮かべる味噌は何味噌だろうか?昨今コロナ禍を経て発酵食品ブームが再注目される一方、若者の味噌離れが問題になっている。そんな若者にも味噌の魅力を伝えていきたい。

屋外で味わう!屋台の魅力

私は夏祭りや縁日の賑やかでどこか懐かしい雰囲気が好きである。また、屋台特有の屋外で買って食べるという普段の食事スタイルとは異なる特別な感じも魅力的に感じる。このように屋台に興味があったことから、ゼミ研究のテーマとし、研究を進めている。ここまで、屋台の歴史の確認と祭礼で調査を試みた。日本の屋台は江戸時代の享保年間に出現し、天明以降に盛んになったといわれている。江戸時代、屋台は今より日常的に人々の身近に存在するものであった。屋台の商品には、定番の伝統的なものだけでなく、新奇な海外由来の新しい食べものも入ってくる。中間発表会では祭礼の屋台について紹介する。

国産山羊チーズの今後の発展

チーズ専門店でアルバイトをした際に、山羊チーズに魅了された。ここ数年で国内にも山羊チーズ工房は開業し始めたが、未だ国産山羊チーズの生産数が少ないことを知った。なぜ生産量が少ないのか、国産と輸入とではどのような違いがあるのか。山羊チーズをより多くの人に知ってもらいたいと思い、テーマとした。国内山羊チーズの現状、今後の発展を考察し、PRにつなげたい。今回は、国内外のチーズ文化、チーズの生産過程、チーズ工房やチーズイベントでのフィールドワーク、アンケート調査を報告する。今後は、さらにチーズ工房訪問をするなど、より詳細なフィールドワークをする計画である。

日本の文化、食品サンプルの移り変わり

料理の模型「食品サンプル」は、日本人のほとんどが知っている身近な存在であり、私自身子供のころわくわくした記憶があったのでテーマにした。食品サンプルの歴史、役割などについて探究している。食品サンプルも、飲食店と同様にコロナウイルス感染拡大の影響を受けた。しかし調べてみると、飲食店での料理展示だけでなく、栄養指導、医療トレーニングのモデル、食品の品質管理など幅広く事業を拡げている時代の変化に対応したビジネスであった。食品サンプルは、約100年続く日本独自の文化だが、意外にも先行研究が少ない。業界の実態を整理しつつ、今後どのように変化していくかなど見いきたい。

猫舌ってなに?
食べものと温度の関係

私は猫舌だ。猫舌とは、熱いものの飲食を苦手とすることだ。小学校生時にスープで舌を火傷して以来、熱いものを避けるようになった。猫に舌と書くが、猫に限ったことではなく、人間以外は皆、猫舌である。なぜ猫舌の人と猫舌でない人がいるのか。この問いに答えが定まっていないことに興味が湧き、これをテーマにした。これまで、猫舌は江戸時代から存在し、韓国には言葉がないことや、反対語にゴリラ舌・マグマ舌があるすること、猫舌は好き嫌いに近いことが確認できた。そして、なぜ日本人はアツアツを好むのか、と新たな疑問も生まれた。当たり前すぎて見えなかった部分を追究する。

食養生を考える

健康について考えるとき、現代でも多くの人に愛読されている『養生訓』がある。出版された江戸時代の健康面に目を向けると、平均寿命は乳幼児の死亡を含めると40歳前後、含めないと60歳程度であるといわれている。そのような中で、著者である儒学者の貝原益軒は85歳と長寿であった。私は、生命を養い、健康の維持・増進をはかる養生の考え方に興味をもち、また現代においてもなお、生きていく上で糧となる学びが多いように感じたため、研究テーマとした。今回は、食養生を考える上で関連の深い事柄や、繋がりのある中医学の特徴をまとめた。また同時に、現代栄養学との対比についても考察したい。

非常時に「食」がもたらす安心感

近年、南海トラフ地震や首都直下地震の発生が危惧されている。私は東日本大震災の際に両親が帰宅困難となり、子どもだけで過ごす時間に大きな不安を感じた。このような災害時の不安という課題に対し、安心を与えてくれる食からのアプローチを考えたいと思い、これをテーマとした。非常食の歴史は救荒食や兵糧、保存食など、非常時の食として形や用途を変えて人々を救ってきた。現代ではフェーズフリーが広がっており、従来の非常用の食とは違い、日常のものを非常時にも活用することが進められている。今後はこの考え方を中心として、被災時を想定した食の備えや活用方法を考えていく。

昆虫食のこれから

皆さんは、昆虫食が昔からありふれた食べものだと知っているだろうか?昆虫食は、2013年にFAO(国際連合食糧農業機関)が発表した報告書によって、世界から食糧危機の救世主として注目されている。その一方で、日本では賛否様々な意見が飛び交っている。私が昆虫食に興味を持った理由は、私自身が「昆虫は食べないもの」として考えていたからだ。大学の講義で触れ、好奇心が掻き立てられ、現在ある昆虫食と今後活用が期待される昆虫食を知りたいと考えるようになった。そこで、昆虫食をテーマとして、世界の食文化や食糧危機ついて追究し、これからの昆虫食の形を新しい視点で提案したいと考えている。

食でつながる高齢者コミュニティ

一人暮らしをしている祖父が親族の集まりで楽しそうに食事をする姿が印象的だった。祖父は、近くに住む家族や近所のサポートがあるのでなんとか生活が成り立っているのだと言う。私はそんな祖父への気がかりがこの研究の出発点だった。高齢化が進む日本では、高齢者の単独世帯が増加している。孤立を防ぐために様々な取り組みが行われる中で、地域の交流の場としての役割を持つコミュニティカフェの活動に興味を持った。そこで高齢者の居場所として、コミュニティカフェにおける食の役割について考察したい。今回はフィールドワークなどを通して学んだことに基づいて発表する。

暮らしの中の天然素材と台所道具

私は、同居する祖父母の生活の知恵や物を大切に使う丁寧な暮らしが身近にあり、資源を大切にすることについて関心がある。また、2015年に国連でSDGsが採択されたように、近年「持続可能」という視点を重視する傾向がある。そこで、忙しい現代人でも無理なく環境問題に取り組める研究をしたいと思った。具体的には、毎日欠かさずに摂る食事、その準備に必要な「台所道具」、これと最近注目されつつある、環境を傷つけることなく資源の循環に貢献する「天然素材」を組み合わせること で、日常の一場面として無理なく継続できる取り組みを提案したい。天然素材と台所道具の魅力を伝 えたい。