令和2年度 食文化栄養学実習

守屋亜記子ゼミ■食生活文化研究室


ジェンダーフリーの制服
カフェを例に考える


【実習背景・目的】あるニュース番組で、性別に囚われずに、制服を自由に組み合わせることができる「ジェンダーレス制服」をとり上げていた。学校では制服が多様化し始めているが、学校以外の制服はどうだろうか。あるチェーン系カフェでは制服に性差がなく、自分らしく働けるような取組みを行っているという。他のチェーン系カフェでも同様の取組みをしているのか気になり、このテーマを選んだ。実習を通し、カフェにおけるジェンダーフリーの制服が持つ意味や役割を明らかにする。最終的に調査で得た知見をもとに制服のこれからについて考察する。
【実習内容】中間報告では、X ジェンダー(男女のどちらかに限定しない性別の立場をとる人)の方へのインタビューについてまとめ、性的マイノリティの方々のなかには、アルバイト・仕事をする上で、制服に性差がないことを最も重視している人がいることがわかった。中間報告後、どんな制服を採用しているのかを知るため、チェーン系カフェでフィールドワークを行った。その結果、機能性やコンセプトを重視し、男女共通の制服や私服を採用している店舗があるとわかった。また、文献調査では日本におけるカフェの制服の変遷について調べ、文明開化とともに広がったカフェで接客する女性たち(女給)は、着物に白いエプロンという服装であったことがわかった。昭和になると、カフェが「女給のサービスを主とする店」と「コーヒーや軽食を主として提供する店」の二方向に分化した。後者のカフェの制服は、男性がベストにスラックス、女性がワンピースにエプロンという姿がみられるようになる。平成になるとシャツ・スラックス・エプロンという男女共通の性差がみられないスタイルが一般化している。本発表会では、実習を通して私自身が考えるジェンダーフリーの制服が持つ意味や役割とは何かに関して発表する。



和菓子におけるイチゴの存在価値
〜イチゴ大福を例に〜


【実習背景・目的】私がイチゴ大福を題材に研究しようと決めたのは、幼い頃の思い出があったからだ。家族旅行の帰り、皆で食べたイチゴ大福の美味しさに私は魅了された。本研究ではイチゴ大福を通し、イチゴが和菓子の素材となり得た理由、和菓子におけるイチゴの存在価値・イチゴを使用した和菓子のこれからについて考察することを目的とする。
【実習内容】中間報告では、文献調査を通し、イチゴ・和菓子・イチゴ大福の歴史をまとめた。イチゴは江戸時代にオランダから伝来し当初は観賞用、1919 年以降食用として広まった。1922 年に不二家でショートケーキが発売され、その後イチゴののったクリスマスケーキが定番になったことで、イチゴと洋菓子が結びついた形で一般に定着した。1985 年には東京の和菓子処大角玉屋でイチゴ大福が考案され、イチゴと和菓子の組み合わせが誕生した。これを邪道とする意見もあったが、この新奇性が評判になった。中間報告後、大角玉屋の社長に考案背景や使用するイチゴの条件について伺った。その結果、水分量が少なく固めで酸味が強く、円形で大きめのものが最適であるとわかった。またイチゴ農家にて栽培方法や品種改良の現状、和菓子屋に納めるイチゴの条件についてインタビューを行った。収穫されたイチゴは取引先の和菓子屋ごとに、店の条件に適した形、大きさ、色のものを納入していると判明した。さらに食べ手側がどう認識しているのか知る為、インタビュー及びアンケートを実施した。そして、和菓子屋及び消費者がもつイチゴ大福の捉え方について比較すると、両者ともに季節感を重視しているとわかった。本発表会では、フィールドワークで得られたデータを基に、和菓子におけるイチゴの存在価値について考察した結果を発表していく。



炭火でごはんをつくる
~七輪を使った生活~


【実習背景・目的】私は七輪や炭火を用いた調理が趣味である。しかし、この魅力を誰かに伝えるとなると「炭火で焼くから美味い」など、情緒的で漠然としか伝えられないことに気づいた。そこで、七輪や炭火を用いた調理の魅力を根拠を持ってしっかり伝えられるようになりたいと考えた。本研究の目的は、IHなどデジタルな調理が定着しつつある今、炭火というアナログな熱源や七輪といった道具で調理する知恵と技の可能性を見直すことである。
【実習内容】中間報告では、七輪や炭についての歴史や効果、日本の熱源史についてまとめた。七輪は江戸時代に普及し、現在は煮炊き物と焼き物それぞれにラッパ型、平形と向く形があり、炭は日本では約30万年前から調理などに用いており、炭火焼きは燻煙効果や赤外線効果がその美味しさを生み出していることがわかった。また、七輪生活やフィールドワークの学びから、黒炭と白炭という炭の種類の違いや、火起こしや火の始末の際の炭火の扱い方についてわかった。
 今回の報告では、中間報告後に行った七輪生活や稲城炭焼き倶楽部でのフィールドワーク、webサイトでの発信について発表する。七輪生活では、文献調査やガス火調理との比較を通して学んだ炭火や七輪の扱い方や調理のコツを活かし、トーストや白飯、味噌汁などを実際に七輪で調理し、最終的に1週間の七輪生活を行った。フィールドワークでは引き続き稲城炭焼き倶楽部で、実際に里山の中で炭焼きを体験し、竹炭や約300kgのシラカシの黒炭を作ることができた。また、これまでの活動をweb サイトで発信し、そのコミュニティでの交流を通して、趣味としての現在の七輪や炭火の使い方について考察する。最終的に七輪や炭火を用いた調理の魅力や、これらを用いて調理する知恵と技の可能性を追求し発信する。



日韓の学校給食の比較
保護者の関わり方を中心に


【実習背景・目的】私はインターネットニュースにおいて「2021年からソウル市内でオーガニック無償給食を提供する」という記事を読み、韓国の学校給食に興味を持った。韓国で予備調査を行ったところ、韓国の初等学校(日本の小学校にあたる)では保護者が食材の検収や配膳に関わっていることを知った。そこで、日本でも給食に保護者が関わるのか、保護者が関わることにより給食に具体的にどのような影響があるのか興味が湧き、日韓の学校給食の比較を行うことにした。本実習では、両国の給食に対する保護者の関わりの有無とその背景および保護者が関わることによる給食への影響について考察する。
【実習内容】中間報告では、文献調査を基に日韓の学校給食の歴史についてまとめた。そこから両国の学校給食は似た歴史を辿ってきたことが分かった。日韓の学校給食の発祥は1900年前後で、その目的は貧困児童の救済であった。その後、日本は第2次世界大戦、韓国は朝鮮戦争を経て、栄養失調児の救済を目的にユニセフの援助による脱脂粉乳やパンの給食を開始した。そして日本は1954年、韓国は1981年に学校給食法が定められ、学校給食が制度化された。中間報告後、日韓の学校給食の現状と保護者の関わり方について知るため、埼玉県東松山市の学校給食センター、新座市の中学校、韓国のソウル特別市の初等学校にそれぞれ勤務する栄養教諭および栄養士にインタビュー調査、アンケート調査を行った。また、両国の保護者にインタビュー調査を行った。その結果、日本では保護者が給食の食材の検収や配膳に関わることはないが、韓国では週に1回程度、保護者が主体となり食材の検収と配膳の衛生管理の状態を点検していることが明らかになった。今回の発表では、これまでの調査結果を基に、日韓の給食に対する保護者の関わり方や考え方を分析し、保護者が関わることにより給食にどのような影響があるのか考察する。



日韓の食文化比較
〜おにぎりを例に〜


【実習背景・目的】お弁当などの日常食として、日本人に馴染みのあるおにぎり。韓国に旅行した際、コンビニで全州ビビンバ味や牛肉コチュジャン味などの日本ではあまり売られていない辛そうなおにぎりに衝撃を受けた。この経験から、日本と韓国のおにぎりの違いは食文化の違いによるものなのかと考え、このテーマを選んだ。文献調査やフィールドワークを通して、日韓それぞれのおにぎりの歴史や特徴を比較する。そこから、おにぎりに反映されている両国の食文化の共通性・独自性を明らかにする。
【実習内容】中間報告では、文献調査やフィールドワークから、日本と韓国のおにぎりの定義や歴史、特徴についてまとめた。文献調査から、日本ではおにぎりは弥生時代から携帯食として存在し、現在でも手軽な大衆食として親しまれていると分かった。一方韓国では2001年にセブンイレブンの低価格かつ大々的なCM を使用した販売戦略により身近なものになった。フィールドワークから、日本では三角形、韓国では丸形のものが多く、具材においては、日本では魚介類が多く、韓国では肉類が多いという特徴がみられた。また、韓国では飯・ 具材ともに辛い味が多いという特徴もみられた。
 中間報告後は、日本人と韓国人を対象におにぎりに対する認識や嗜好についてアンケートを行い、両国におけるおにぎりの在りようや食の嗜好性を考察した。また、それぞれの特徴の違いを明らかにするため、文献調査を行った。その結果、日本の魚食文化と韓国の肉食文化の歴史がそれぞれの具材に影響しており、韓国人が辛い味を好むのはトウガラシ文化の歴史やその生理作用に関係があると分かった。今回の発表では、アンケートと文献調査で得られた結果をもとに、おにぎりに対する認識や嗜好について分析・考察する。そして、両国のおにぎりの比較を通して、日韓の食文化の共通点と違いについて明らかにする。