令和2年度 食文化栄養学実習

宮澤紀子ゼミ■食品化学研究室


私はレモン博士!
添え物ではないレモンが主役のメニュー開発


 揚げ物などの料理の添え物やレモン風味のお菓子として多く使用されているレモン。レモンブームが巻き起こる中、主役にした料理はまだ少ない。皮まで食べることができる国産レモンもあるが、それを活かした料理は少ない。こうした現状を知り、国産レモンの特徴を活かしたレシピの開発とその普及活動の一環として立川レモンプロジェクトへの参加を決めた。
 まずは2019年に香りの強いグリーンレモンを使用し、レモンパスタとレモンのみぞれ鍋を試作した。続いて、イエローレモンで保存性の高い塩レモンを作り、塩レモンペペロンチーノと塩レモン八宝菜を試作した。塩レモンのレシピは、どちらも酸味と塩味のバランスが良く、油っぽさを抑えた料理に出来た。塩レモンは瓶に詰めて保存することで1 ヶ月は保存できるので、非常に便利だ。レモンブームにより市場にレモン料理が増えたことから、どのように生かして提供しているのか市場調査を行った。1 番多いものはレモンをソースやタレにして食材と組み合わせる料理であった。次いで、飾り切りや輪切りにしたレモンを添えて映える料理にしたり、鍋やうどん、スープにのせることが多い。更に、商品化されているものを調べるうちに、レモンのふりかけに興味を持った。ふりかけはレモンの皮ごと使用できるので、国産レモンを生かした商品だ。そこで、レモンをふりかけを使用した料理を試作し考案した。
 市場で出回っているレモンの料理を知ることで新しいメニューを考案する幅が広がった。2020年、10月に入りふたたび市場にグリーンレモンが流通し始めた。グリーンレモンは一年のうちで限られた時期にしか生産されない貴重なレモンで、香りが強いのが特徴だ。そこで主に皮ごと食べることが出来、グリーンレモンの香りを生かした料理を試作し、普段料理をしない人に対してわかりやすいレシピを紹介した。



トマトのトリコ
トマト好きがお送りするトマト提案


 「好きな食べ物はなんですか?」この定番の質問、私は即答で「トマト」と答える。可愛らしい丸いフォルム、鮮やかな赤色、甘酸っぱくて瑞々しくて。好きなところをあげ出したらキリがない。トマトなら無限に食べていられると思うくらいだ。そこで、トマトの魅力を自らの実践的な体験を通して探索し、魅力をより多くの人に知ってもらうことを目的とし、魅力の探求とレシピ提案を行った。生で食べてみたり、コトコト煮込んだり、多くの食べ方があるからこそ、その中でより魅力を引き出せるものを探した。さらに、料理を作るだけでなく、トマトのプランター栽培にも挑戦した。苗植えから収穫まで行い、栽培のやりがいを感じた。特に、大雨や台風など、天候による苗の変化に対応していくのが難しかった。この経験を通し、自分で野菜を育てる喜びと楽しさをレシピにプラスすることができた。嗜好性の品種による違いや調理法による変化は、官能評価を用いて科学的に検証した情報を提示した。レシピは、トマトの品種ごとに特徴を活かすことができる料理の試作から始めて、トマトソースといった定番のレシピからトマトの味噌汁やトマトのマフィンなどといった変わったトマト料理の提案に至った。トマトひとつにしても、品種によって甘味や旨味が格段に違うこと、煮崩れがしにくいなど調理の面でも特徴が出てくること、生で食べるのと火を通して食べるのでは甘味の特徴が大きく違うことなどがわかった。特徴をつかみながらより美味しいレシピが提案できるよう試行錯誤を重ねた成果は、1 冊のレシピ集にまとめた。
 私はこの研究を通して、大好きだったトマトにさらにトリコになった。人間に欠かせない『食べること』だからこそ自分の好きなものをよりおいしく調理して食べてみてはいかがだろうか。日々の中の小さな幸福をぜひ見出してみてほしい。



きのこ塩を製作しよう
きのこ塩が伝える素材のおいしさ


 私は、調味料が好きで、密かに自分で作ってみたいと考えていた。そこで、テーマは、調味料を製作することに決めた。調味料といっても種類は様々である。私は幅広い料理で利用しやすく、且つ何度も繰り返し試作ができる塩に決め、きのこを好きになってもらえるような「きのこ塩」を製作した。さらに、製作したきのこ塩にあうきのこのオリジナルレシピも考えた。きのこと塩の選定を別々に行い、その結果をふまえてきのこと塩を調合して組み合わせを検討した。きのこの選定では、調合する際の状態や嗜好性を比較するために、天日乾燥は生の状態と茹でた状態から行った。生の状態から天日干ししたものでは、硬さや、旨味が良いのに対し、茹でたものでは硬く、旨味が失われていることが実験で分かった。天日乾燥では、生の状態からのきのこを使用することに決めた。次に、天日乾燥と凍結乾燥の比較を行った。天日乾燥に比べて、凍結乾燥の方が、口当たり、味、香りにおいて優れていた。そこで、凍結乾燥したきのこで製作していくことに決めた。塩の選定では、市場調査を行ったうえで、海水塩、岩塩、湖塩を約30種類入手し、状態や嗜好性を比較検討して決めた。
 きのこが使われている惣菜や料理について市場調査を行った。市場調査をしていくうちに、和食でよく使われるきのこ(ブナシメジ、マイタケ、シイタケ、エノキタケ)、洋食でよく使われるきのこ(エリンギ、マッシュルーム、ブナシメジ)があることがわかった。レシピを作る際、和と洋で提案した方が面白いのではないかと考えた。一方、料理に使うことを考えると旨味が重要になってくる。そこで、旨味を活かして、和食にはシイタケ(生と乾)を用い、洋食には、料理と相性抜群であるマッシュルームを使い、製作したきのこ塩を使ったオリジナルレシピを考察した。



低エネルギークッキー


 「ダイエット中だけど甘いお菓子が食べたい」「健康に気を付けながら美容に効果のあるお菓子が食べたい」と思う方は多いと思います。ダイエット中の人にも美味しいお菓子を食べてほしいと思い、自宅で手軽に作ることはできないかと考え、低エネルギーのお菓子の開発を行うことにしました。
 そこで、誰でも簡単に作ることができ、材料も少ないクッキーを作ることに決めました。初めに、市販のクッキーのエネルギーを調べ、市販のクッキーよりもエネルギーを約50%低く抑えたクッキーの開発を行うことにしました。コンビニなどで購入できる市販クッキーについて調査したところ、エネルギーは一枚12g 当たり61kcal だったため、一枚12g当たり約30kcalのクッキーを開発することにしました。
 次に、エネルギーを低く抑えるための原料を検討しました。まずは小麦粉の代わりになる食品を探しました。「生おから」「おからパウダー」「大豆パウダー」「全粒粉」について調べ、それらを小麦の代替えとして試作をしました。その結果、「全粒粉」と「大豆パウダー」がクッキーに適していたため、その2 つを使用して試作をしました。また、小麦粉の代替以外にもエネルギーを低く抑える方法はないかを調べるために、バターの代替としてサラダ油やココナッツオイル、砂糖の代替としてハチミツ・パルスイート・ラカントS、卵の代替として牛乳や豆乳を使用して何度も試作を行いました。
 自分でお菓子作りをあまりしない人もいます。お菓子作りが苦手な人でも簡単に作れるようなレシピにしました。材料もスーパーやコンビニなどで購入することができるものに限定して作りました。お菓子作りが好きな人だけでなく、ダイエット中の人やお菓子作りが苦手な人にも興味を持ってもらえるように提案します。



みかんマップ
あなたの好きなみかんに出会える場所


 最近は寒さが増して温州みかんが出回る季節になってきましたね。皆さんはどのようなみかんが好きですか?みかんはこれと決めているこだわりのある方がいるかもしれません。冬になるとコタツのお供によく食べすぎて指がみかん色になったりしてしまう温州みかんですが生産地ごとに名前が付いていることはご存知でしょうか。例えば、愛媛の真穴みかんというみかんがありますが、これは品種の名前ではなく産地名で、選果場でそれぞれの規格基準にそって選ばれたものだけが真穴みかんとして私たちの手元にやってきます。私はもともとはみかんは冬になるとよく食べる美味しい果物くらいの認識しかしていませんでした。しかし、みかんについて調べてみるといろいろな名前が付いていることを知り、どのような違いがあるのか気になるようになりました。こだわりがある方はみかんの紹介として、まだ好みのみかんが見つかっていない方には皆さんが好みのみかんに出会えるお手伝いができるような冊子作りに取り組みました。冊子はスーパーとお惣菜屋さんでアルバイトし、実家暮らしの埼玉県在住、みかんと塩辛が大好きでチョコレートが苦手、最近ボードゲームにはまっている女子大生の目線でまとめました。また、スーパーではみかんがいつ頃からいくつくらい出始めるのか、そのころの甘さ、大きさ。大きさに対する中身の割合などを独自に調べました。みかんを選ぶ際に参考にしてもらいたいと考えて、実際に測定した具体的な数値を掲載し、見てくれた皆さんにわかりやすく仕上げました。さらに、みかんを使った商品紹介を掲載することで「気になったみかんをその季節出なくても味わうことができ、より好きなみかんに出会う機会が増える」そんな風に使ってもらおうと考えています。皆さんも自分の好きなみかんに出会って見ませんか? 



おうちで日本茶を


 地味で特別感がなく、面倒なため、人に淹れてもらえれば飲む日本茶。新しい利用方法で、カフェで飲むコーヒーや紅茶と同じくらいオシャレかつ高級感あるものにしたいと考えました。ターゲットは日本茶の購入が少ない20~30代にしました。おうちや外出先で飲んでもらうためにオシャレに飲める日本茶と日本茶をおいしく食べられるお弁当を提案しました。先ずは日本茶に関する情報の収集を行いました。国内での生産量や消費量、流通量を調べ、日本茶は本当に好まれていないのか、利用されていないのか、現在行われている日本茶普及活動として何があるのかを調べました。また、スーパーで手軽に購入でき、日本茶の産地毎にお茶の異なった味の特徴から使用する日本茶を選択し、メニュー提案をしました。さらに、オシャレに飲める日本茶アレンジドリンクを考案する際の条件や日本茶を使ったお弁当を提案するヒントとして、茶葉で料理や菓子に使われているのをよく目にする紅茶の料理や既にある日本茶の料理を検索しました。調査の中からお茶の葉を細かくし食材につける料理を見つけました。日本茶を余すことなく食べる、使用することができるという利点から、様々な食材で試し、オリジナルレシピを作りました。そして、自分でおかずやご飯を組み合わせることでオリジナルの日本茶弁当を完成させることができるようにしました。アレンジドリンクは、お茶を入れてそのまま飲むだけでなく、ひと手間加えることで地味で特別感がない日本茶を少しだけオシャレな飲み物にしました。
 日本茶もコーヒーや紅茶のようにアレンジし楽しめることが分かりました。もっと多くの人が日本茶に興味を持ち、アレンジした料理ができたら良いと考えます。そして、一人でも多くの方が日本茶に魅力を感じおうちでもお茶を淹れる機会が増えていくことを願い、私も毎日日本茶を飲み続けます。