令和2年度 食文化栄養学実習

宮内正ゼミ■文化学研究室


15分の世界
時代体験を共有する


 NHKの連続テレビ小説、見たことありますか?
 月曜日から土曜日の朝15分で展開される世界は、1961年から現在まで59年続き、現在放映されている『エール』で102作目です。その間、時代は昭和から平成、令和へと変わり今もなお愛され続ける連続テレビ小説(通称:朝ドラ)にはどのような魅力があり、視聴され続けているのでしょうか。視聴率が高い理由は朝ドラを視聴している8割が50歳以上で高齢化の現代では視聴率が取りやすいのでしょうか。その年配の方にNHKを見る習慣がついていて朝ドラもその一つなのかもしれません。ですが、私は視聴していて理由はそれだけではなく物語の構成や15分間の世界に視聴者が引き込まれているからだと考えます。
 中間報告では、作品ごとの舞台になっている時代をまとめました。朝ドラは作品ごとに時代背景が異なり前作と今作で全く違う世界を映し出している点が一つの特徴でもあります。その中でも朝ドラの舞台となりやすいのは第二次世界大戦の前後です。戦前の生活から日本が戦争一色になり生活が変化していく。しかし、日本は戦争に敗れます。そのため登場人物らは家族を失ったり、生活が不自由であったりと多くの困難と立ち向かいながら奮闘し、自分らしさを見つけていく姿がよく描かれています。
 また、朝ドラは放送時間が週合計90分、1作品の合計時間が約38時間と他の映像作品と比べると長いのも特徴です。半期に渡る長い放送期間では、登場人物も多く物語の世界は何年も先の展開まで描きます。今回の発表では、朝ドラが他のテレビドラマと違い、週六日間15分ずつだから描ける世界はなにか、どのような世界を視聴者に見せているか考察していきます。



食事シーンで見せる表情
言葉を使わなくても伝わる美味しさ


 ご飯を食べる時に大口を開けて美味しそうに頬張る人がいると、見ている私も幸せになります。そんな経験はありませんか?もしそれが一人で食事をしている人だったら、と考えますが、実際そんな人は見たことがありません。美味しそうに頬張る人の先には同じく食事をしている相手がいます。一人の時に笑顔で「美味しい」と言葉にしたら周りのお客さんは驚きますが、店員さんは驚きつつも嬉しいと思います。顔に出やすい私は、そんな世界が愉快で楽しいのではないかとも思ってしまいます。
 きっと多くの人は、一人よりも相手がいる時の食事回数の方が多いはずです。それでも、見せる表情は全て同じではありません。表情は自然に出るものですが、気が付かないうちに人と場所によって左右されるものなのです。前回は一人での食事と複数人での食事を比較し、相手がいる場合は「誰と」が表情と関係しているとわかりました。美味しそうに食べる人の特徴として、作っていない自然な笑顔、が大きいのに食べ方が綺麗という特徴があります。それは、料理が美味しいことは前提として、食べた時に顔に出せるくらい親しい間柄の人が目の前にいるからです。
 なぜ表情や表現こんなにも多種多様なのか、この疑問を持ち始めてから飲食店に行くと、人を観察してしまいます。美味しそうに見えて思っていた味と違うこともあります。それが高級レストランで大切な人との食事だったら、美味しいと言うと思います。逆に、ファミリーレストランで友達と食事をしている時は顔にも言葉にも出ます。おもしろいです。アニメやドラマの世界を見てみても、設定はありますが相手や話している内容によって表情に違いが出ます。今回は、対人関係、場所、性格の三点に注目し、その時その場にいる人にどのような影響があるかを具体的に考察します。



異装へのあこがれ
それぞれにとっての異装と理想


 人は時に異装をする。その異装という行動には様々な意味や感情があらわれる。前回は、人は異装に興味を持つが、実際に行動に移すか、という問いに対して、自身に対する自己評価が非常に影響している、ということが分かった。どの年代も「異装に興味がある」と答えた人の割合が多かったのに、「実際にしてみたいか」という質問に対しては、若い人のほうがYesと答え、年齢が高くなるにしたがってNoと答える割合が増えた、ということから、それは明らかだ。
 そして、このときの調査対象はすべて、普段から仕事などで異装はしない、という、いわゆる一般の人々であった。 しかし、異装することを「職業」とする人々も多く存在する。彼ら/彼女らはどうであろうか。そして、普段から異装をすることをどう思い、何を感じているのか。
 そこで、特殊モデルとして自ら異装をし、幅広い媒体に出演し活動している「七菜乃」さんに、直接インタビューをしてお話を伺ってきた。彼女曰く、「毎日がコスプレ、異装である。そもそも自分をこうだ、という枠にあてはめてはいない。異装をし、様々な自分や姿へと変わる概念は、当たり前に存在するものである。そして、異装をすると気分は変わる。異装は、仕事の延長線上にある結果であり、自身にとっての日常であり、特別派手かというとそうでもなく、とても身近にあるもの」だそうだ。
 すなわち、異装に対する考えは、一般の人と異装を職業とする者とで、大きく違っている。とくに決定的な違いは、異装が「身近」なものであるか否か、という点だろう。ただ、異装によって気分が変わる、という調査結果もしっかりと出ている。自己理想の実現、気分の転換に、異装は大きく貢献するに違いない。私もこの人生に、異装を取り入れて彩りを与えていきたいと思う。



食べ歩きの魅力
「食」「街並み」「賑わい」の視点から


 皆さんは、「食べ歩き」と聞いてどのような場所や食べ物を思い浮かべますか?そして、それらのどこに魅力を感じていますか?
 現代は、知らない土地や食べ物の情報を簡単に手に入れることができ、私たちはSNSで見かけたお洒落な街並みやレトロな雰囲気の商店街、可愛らしいケーキ、団子やいちご飴など、鮮やかな写真を見て魅力を感じ、行ってみたい場所や食べてみたい物、お店をピックアップしているように感じます。
 食べ歩きには、その土地の名産や有名なものを味わえる、出来立てを味わえる、少しずつたくさんの物を楽しめるなど「食」としての魅力だけでなく、美しい建造物や昔ながらの街並み、家屋、商店街の暖かさなど、普段の生活ではあまり触れることのない「雰囲気」や「賑わい」という魅力があると考えます。また、商店街や食べ歩きのメインストリートと呼ばれるところには、老舗だけでなくトレンドを取り入れた新しいお店や、地域によって販売している商品が異なるチェーン店など多種多様なお店が軒を連ねている「街並み」も魅力の一つと言えるのではないでしょうか。
 前回は、現代の食べ歩きについて「日常の食べ歩き」( コンビニなど生活の一部して捉えるもの) と「非日常の食べ歩き」( 旅行先やイベントなど限定的に行われるもの) の二つにわけて事例と求められる商品などを紹介しました。さらに、食べ歩きが原因で起こっている地域の問題についても取り上げました。
 今回は、食べ歩きの魅力について「食」、「街並み」、「賑わい」の視点から調査をし、その結果と考えをまとめ、近郊にある人気の食べ歩きスポットや周辺の現状なども紹介していきたいと思います。食べ歩きの魅力について少しでも皆さんの関心と共感を得られたら嬉しいです。



行事食の新しい顔
「買うもの」から「提供するもの」へ


 日本には古くから伝わる行事食が数多くあります。お節料理や七草粥など、そのどれもが地域の伝統的な食文化に根差しています。しかし、その行事食がいまやこれまでにはない様々な「新しい顔」をもつようになっています。中間報告では、「作るもの」から「買うもの」への変化を取り上げました。今回は、「買うもの」としての行事食のいくつかのパターン、さらには「提供するもの」としての行事食について考えます。たとえば1月15日の小正月に家族の健康を願って食べる「小豆粥(あずきがゆ)」という行事食は、名前そのものは知られていても、実際に食べられているかどうかはそれぞれの地域によって大きな差があるようです。行事食とは本来、こうした地域的な違いがあるものです。ところが、最近とかく話題になる「恵方巻」はこれとはずいぶん異なります。1980年代から1990年代にかけて、コンビニやスーパーなどの業界を中心とした販売促進キャンペーンによって、当初はおもに大阪で見られた食習慣が、一気に全国へと普及したのです。こうした全国への広がり方は、もともと欧米の行事であったクリスマス、ハロウィーン、バレンタインなどが、その食習慣とともに、日本に輸入され、核家族の年中行事として、あるいは、カップルや若者のイベントとして、都市部の中間層から全国各地へと広がっていったその広がり方とよく似ています。「買うもの」としての行事食のひとつのあり方といえるでしょう。家族の健康を願って「作る行事食」から、季節を感じるために「買う行事食」へと変化し、さらには高齢者施設などで、昔の思い出を懐かしむために「提供される行事食」というあり方にも注目したい。このように、行事食は、時代や社会状況の変化に応じて、その役割や意味が変化しつつあることがわかりました。



つい買ってしまう


 アルバイト先で売り上げが好調であったり、今日はやけに売れるなという商品があったりしませんか。例えば平日なのにお客さんが集中して来店したり、寒くなるとよく売れる商品があったりなどです。このようなレジや接客のアルバイトの経験から、お店の広告や売値によって商品の売り方や売れ方に変化があること、どういうマーケティングをするかによって売れ方が変わることに興味を持ちました。その中でも事前に購入すると決めてはいないが、つい買ってしまう商品に興味を持ちました。例えば、20%オフやもう一つ買うと半額になると言われると、つい足をとめてしまうショッピング。魅力的な広告・宣伝に引かれて、お財布と相談しながらも、つい買ってしまうモノについてです。これは、スーパーなどの小売店やファミレスなどの外食業、通信販売、インターネットなどに見られる「魅力に引かれる」売り出し方です。
 では、日常に溢れる食はどう選んでいるのでしょうか。同じような商品や料理をどのような視点から選んでいるのでしょうか。興味深いのは、消費者個人の価格の価値観やお金の使い方によって「つい」の意味が異なることです。価格が安いからつい買ってしまうのか、価格を忘れつい買ってしまうのか、必要ではない予定外のものをつい買ってしまうのか。所得や性格や気分により「つい買ってしまう」理由は意外なほど様々です。また、買い物場面でのお店の雰囲気や接客、ブランドイメージによって行動が変わると思います。購入をしなければならないような雰囲気や接客の仕方・され方や、ブランドイメージ( ブランディング) などにより購入行動が変化すると考えます。
 以上の観点から、食×マーケティング×消費者( 買い手) ×生産者・販売者( 売り手) の関係を深掘りしていきます。



素早く仲良くなれる方法


 初対面の人や友人と素早く仲良くなれる方法。それは、一緒にご飯を食べることです!一緒に食べることで、相手のありのままが見えやすく打ち解ける時間が短時間で済むからです。なぜ食事という行動で親しくなることができるのか。その謎を今回の発表で解明していきたいと思っています。
 なぜ、このテーマに興味をもったのか。理由は、自分の中での経験があるからです。
 昨年とある実習の授業にあった学外実習の中で、調べた国のレストランに行き本場の味を知るというモノがありました。実習の一緒に行った人とは最低限の会話しかしなく、お互いには見えない壁がありました。しかし、一緒に食事をしたとき相手との会話が弾み、壁が無くなり色んな話を聴くことができたり、自分から話せるようになっていきました。ここで食事というものには人との距離を縮める何かがあるなと気になり調べ始めました。
 そこで前期では、誰かとの食事するうえで大切のことは一体なにかを調べました。結果分かったことは、マナーや行儀などの社会に必要なルールの上で食事という行為がなりたっていること、人間関係によって変化する食事シーンの捉え方です。この2つがあることによって、「食事」という行為で親しくなるための準備が完了します。
 後期ではなぜ早く親しくなれるのかについてCMを使いタイプ別に分けます。またそこから見える人間関係はどのようなものか、何を描こうとしているのかをまとめていき、そこから親しくなっていくポイントの共通点を探っていきます。また、そこから見えてきた食事で親しくなれる方法を発表していきます。更に、「食事」という行為はいつから始まり現在までに至るのかについてもお話しできればと思っています。



やっぱケーキしか勝たん?!


 私は、ケーキ屋でアルバイトをしています。そこで日本由来の行事やイベントごとにケーキを食べることに疑問を抱きました。どうして和菓子と行事の結び付きが弱くなってしまい、洋菓子がその場を独占するようなことになってしまったのか。理由を知るために、各行事の起源や、その行事ごとの和菓子を調べました。そして、知ってはいましたが、各行事にちなんだお菓子が食べられることが改めてわかりました。しかし、これを調べても理由は見つけられませんでした。
 自分なりに理由を考えると、企業が関連付けて洋菓子を売り出しているからだと考えました。しかし、それは和菓子も同じこと、というよりは和菓子が本家であって、価格帯も専門店からスーパーなど手に入りやすいところから高価なものまであります。この差は何だろうと思い、世間の好みが関係しているのかを調べました。すると、年代によるけれど洋菓子派の方が和菓子派よりも好きな人が少し多いことが中間報告まででわかりました。
 後期からは、中間報告を踏まえて、いつ頃から和菓子は祝いの席で食べられなくなっていったのかという疑問があったので、それを調べていこうと考えています。そして、日本(和菓子)が西洋文化(洋菓子)に侵食されていると考えると、日本以外の国では日本と同じように伝統的なお祝いもケーキなどの洋菓子を食べるのか。それとも、伝統的な行事ではその国のお菓子を用意するのかを調べる。日本以外の洋菓子メーカーの売り出し方の違いを調べ、比較して日本はこれからどうなっていくのか、和菓子は贈答品や高級品、もしくは、スーパーマーケットで売られるスナック菓子のような存在になってしまうのか。和菓子のあり方について考えていきたい。



食べよう日本のおいしい魚


 好きな魚料理は、と聞かれてすぐに答えられるだろうか。そもそも魚料理とはどういう料理、と聞かれてすぐにイメージが浮かばない人も多い。わたしたち若者にとって最も身近な魚料理はなんだろうか。
 実家で出される魚料理といえば『鮭』が多い。鮭の塩焼きや西京焼き、または鮭のムニエルなど、おもに鮭の切り身を使用した料理だ。母が家で魚を捌いているところは目にしたことがない。そもそも魚をまるまる一匹買ってきたところを見たこともない。鮭に限らず、切り身を買ってきて調理する家庭も少なくないのではないだろうか。近年我が国では、若年層を中心に急速な『魚離れ』が進んでいるようだ。かつて日本は、魚が豊かに採れたことから、日本文化と魚食は深く結びついている。例えば、お正月のおせち料理に欠かせない田作りは小魚を煮詰めたものであり、また結婚式など、おめでたいときには尾頭付きの鯛を供するなど、日本人の文化に魚料理は欠かせない。また、寿司は子供からお年寄りまで幅広い年齢層に人気である。しかし、現実には、若者は魚料理から離れてしまっているという調査結果が出ている。なぜか。その答えとして、現代の日本人は常に仕事や家事・育児などに忙しいことこそが、日本人の魚離れに繋がっている大きな原因ではないかと考えた。
 最近は、時短料理がブームである。いかに調理時間を短くしつつ美味しい料理を作るかが重要だ。ところが、魚料理は、丸々一匹買ってきて調理するとなると、どうしても手間がかかってしまう。ならば、切り身や刺身などをうまく使えば、家庭で魚を食べる機会を増やすことができるのではないか。
 今回の発表では『忙しい現代人の生活』という視点から、家庭で魚料理を食べなくなってしまった原因を掘り下げていこうと考えている。